ドジャース・大谷翔平(写真=GettyImages)

◆ データで振り返る!メジャー日本人選手の2024年

▼ 第9回・大谷翔平

 2017年オフにポスティングシステムでアメリカに渡った大谷翔平。昨季まで6年にわたって所属したエンゼルスでは、ポストシーズンに進出するどころかシーズン勝ち越しすら一度も経験できなかった。

 大谷は“ヒリヒリする9月”を求め、昨季オフにエンゼルスと同じロサンゼルスに本拠地を置くドジャースへの移籍を決断。10年総額7億ドル(当時のレートで約1040億円)のメガ契約でメジャー屈指の強豪チームに加入した。

 昨年秋に受けたトミー・ジョン手術の影響で移籍初年度は打者一本。“リハビリ中の投手”として臨んだ1年は、まさに記録にも記憶にも残るシーズンとなった。

 シーズン序盤は“移籍第1号”がなかなか出なかったが打撃は好調。4月下旬に打率を3割7分台に乗せ、一時は両リーグを通じて首位打者に君臨した。その後は徐々に打率を下げたが、6月には月間12本塁打をマークするなどチームを牽引。開幕当初は2番を打っていたが、ムーキー・ベッツの負傷離脱で1番に定着し、大記録達成へと突き進むこととなる。

 大谷が本当の意味で本領を発揮したのは8月に入ってから。本塁打と盗塁を文字通り量産し、8月下旬に「40-40」をスピード達成すると、「50-50」も通過点とし、最終的に「54-59」までその数字を伸ばした。

 シーズン最終盤まで三冠王の可能性もあったが、結局、本塁打王と打点王の2冠を獲得。打率は僅差の2位に終わった。

 8~9月に打棒を爆発させたことで、10月も無双の活躍を期待された大谷だったが、やや力みもあったかポストシーズンではやや精彩を欠いてしまう。ヤンキースとのワールドシリーズでは左肩を負傷するなど、ポストシーズンは合計16試合で打率.230、3本塁打。2度の盗塁企図も失敗に終わったが、1番打者として高い出塁率をマークし、チームの世界一に貢献した。

 そんな大谷が今季最も打棒を爆発させたのがデーゲームだった。ナイトゲームの打率.293、OPS.962に対して、明るい時間帯の試合では打率.357、OPS1.244。温暖で乾燥したロサンゼルスの気候を最大限に生かしていたことが分かる。

 また打率も自己ベストを更新する.310をマークしたが、これは“オフスピードピッチ”に分類される球種(スプリット、フォーク、チェンジアップ、スクリューボール)にうまく対応できていたことが大きい。

 エンゼルス時代の2023年は4つの球種に対して打率.267、5本塁打だった大谷だが、今季は.366、10本塁打と大幅に改善。特にスプリットに対しては、前年の.222から.441へ打率をほぼ2倍に引き上げていた。

 また、シーズン序盤はチャンスでの勝負弱さが盛んに指摘されたが、5月以降はそれも克服。9月に入ってからは、得点圏の場面で26打数15安打(打率.577)の大当たりだった。

 念願のチャンピオンリングを手にし、来季は再び二刀流で臨む大谷。来季はいったいどんな活躍で我々を驚かせてくれるのか。

文=八木遊(やぎ・ゆう)