究極のミニを目指して造られた「CCT No.1」の過激なパフォーマンスを試す!

サフォークの森を抜ける曲がりくねったBロードを走りながら、ふと自分の顔が笑顔でいっぱいになっていることに気づいた。エンジンは絶叫し、ギアは悲鳴を上げる。ステアリングホイールは手応えが強く、軽く触れただけで自然にコーナーを曲がる。まるで常にドリフトしているようだが、タイヤからは一切のスキール音が聞こえない。これぞミニ。だが、そのすべての感覚が限界まで高められている。

【画像】Crafted Classicsが手掛けた「究極のミニ」(写真5点)

この車は「CCT No.1」。ミニの専門家であるクリストファー・ハミルトンが2016年にSwiftuneを退社後に設立したチューニングショップ「Crafted Classics」による一台だ。ハミルトンはこう語る。

「自分にとって完璧なミニを作りつつ、ビジネスの”ショーケース”としても仕上げました」

彼はエンジンのリビルドやチューニング、世界中への供給で名を馳せており、エンジンから始めるのは当然だったと言えよう。 搭載されているのは、スチールキャップ仕様に改造されたA+エンジン以前のブロックで、ボアは73.5mmに拡大。1071ccのショートストロークスチール製アロークランクシャフト、スチール製アローロッド、鍛造オメガピストンが組み合わせられている。

「フル鍛造で、ボルト類はすべてARP製。だから壊れないんです」とハミルトンは笑う。

排気量は1160cc。ポート研磨されたシリンダーヘッドには、1.3インチ鍛造ロッカーアセンブリー、Piper 285カムシャフト、軽量ベアニアタイミングギアが搭載されている。鋼製のインレットマニホールドには競技用仕様のSU H4キャブレターが取り付けられ、X-liteフライホイール、レース用スターターモーター、オルタネーターを装備。点火はDTAエンジン管理システムで、ディストリビューターは不要。 「馬力はほぼ100bhpで、9000rpm近くまで回ります。ローンチコントロールとフルスロットルでのシフトチェンジも可能です」とのこと。

駆動系は4速シンクロのクローズレシオストレートカットギアを備えたトランスミッションで、ヘリカルATBデフとストレートカットドロップギアを通じて動力を伝達。サスペンションはハイドロラスティックを改造し車高を低めに設定。フロントはMED製調整可能アームとローズジョイント付きタイロッド、ビルシュタイン製ショックアブソーバーを装備。リアにはKAD製のトー・キャンバー調整ブラケットを採用。ブレーキは7.5インチのクーパーS仕様のスリット入りディスクにMintexパッドを組み合わせている。ホイールはローズペタルデザインで、カスタムCCTセンターキャップとヨコハマ008タイヤを装着する。

製作はロックダウン期間中に始まり、当初は販売目的だったが、希少な「アーモンドグリーン(Heritage認定)」とブラックルーフに再塗装し、パネルに4000ポンドを費やしたことで計画が変わった。内装は、運転席にレプリカのリクライナーシートを配置し、高級感あるMOMO Prototipoステアリングホイール(CCTロゴ入り)を装備。クラシックなデザインの時計パックにはSmiths製タコメーターと油温・油圧計が備わる。

再びサフォークの森のロードに戻ると、この車は7000rpmを超えても制御可能で、狂気じみたパフォーマンスを発揮する。それでも低速ではトルクがしっかりあり、日常走行も快適だ。クリストファーはこう語る。「私たちはドライバー志向の車を目指しています。激しいドライブにも耐えつつ、近所への買い物にも使える車です」。CCT No.1の再現には約7万ポンド(約1,300万円)が必要だが、No.2は少し”穏やかな”仕様で製作中。No.4とNo.5が続き、No.6はオーナーの希望次第でどれだけでも「クレイジー」にできるとのことだ。

文:Glen Waddington