CFD(差金決済取引)を知っていますか? CFDは多様な資産に気軽に投資できる点が魅力的な金融商品ですが、初心者には耳慣れないワードかもしれません。

そこで、CFDの基本の仕組みからCFDにかかる税金まで、CFDが気になる人にもわかりやすく解説します。さらに、CFD取引の注意点やリスク管理の方法についてもお伝えしますので、CFD取引に興味を持った方は参考にしてみてください。

CFDとは? 基本の仕組み

CFDとは、「Contract for Difference(差金決済取引)」の略語で、金融商品の価格変動を利用して利益を得ることを目的とした取引の一種です。値動きの対象である現物の受け渡しは行わず、取引開始時と終了時の価格差によって生じた損益のみを受け渡す仕組みの取引です。

一般的な現物取引は、現物を購入するために対価を支払い、その後の値動きによって、買った価格と売った価格の差額が利益になったり損失になったりしますが、そのまま現物を保有し続けることもできます。

一方、CFDは、現物を保有せずに差額だけをやり取りする取引のため、将来、反対売買をし、決済することを前提としています。現物を保有しない取引であるため、売りから取引を始めることも可能です。価格が下落したタイミングで買い戻しをすれば利益が得られるため、下降相場でも利益を狙えます。

CFDは、現物を保有しない代わりに、取引開始時に担保として、取引金額に応じた証拠金を差し入れて取引を行うのが特徴です。これによってレバレッジをかけた取引も行えます。

「証拠金」「レバレッジ」と聞くと、「FX」を思い浮かべる人も多いでしょう。「FX」もCFD(差金決済取引)の一つです。FXは投資対象が世界の通貨であり、取引の仕組みは同じです。

CFDで投資できるもの

CFDは、個別株式や株価指数、商品、債券など、国内外の様々な銘柄に投資できます。

・株価指数CFD:日経平均株価、NYダウ平均株価、S&P500、ナスダック100など
・株式CFD:アップル、アマゾン、マイクロソフトなど
・商品CFD:金、銀、プラチナ、原油、大豆など
・バラエティCFD:米国VI、金ブル2倍ETF、米国リートETFなど

CFDでよく使われる基本用語を理解しよう

CFD取引でよく使われる用語を解説します。CFD取引に限らず、投資全般において使われる言葉でもあるので、ここでしっかり理解しておきましょう。

1.コモディティ

コモディティとは、一般的に「商品」を指す言葉ですが、CFD取引の中では、原油や天然ガスなどのエネルギー、金やプラチナなどの貴金属、大豆やトウモロコシなどの農産物といった商品先物市場で取引されている商品を指します。コモディティ投資は実際に取引される実物商品の価値に基づきますが、CFD取引では、その価格変動を利用して利益を狙います。コモディティ市場は、景気動向や地政学的リスクに影響を受けやすいため、価格が大きく動きやすいという特徴があります。

2. 証拠金

証拠金とは、CFD取引を行う際に、取引業者に預ける担保金のことです。CFD取引では、レバレッジを利用した大きな取引が可能なため、取引に必要な一部の金額を証拠金として、差し入れる必要があります。証拠金の割合は、取引業者や取引銘柄ごとに異なりますが、取引金額の10%であれば、10万円を口座に預けることで100万円の取引が可能となります。証拠金は損失が出た場合に、損失を補填する役割を果たしますが、損失が膨らんで一定の証拠金維持率を下回った場合は、ロスカット(強制決済)が行われます。

3. レバレッジ

レバレッジとは、少額の資金で大きな額の取引を可能にする仕組みです。「てこ」の原理になぞらえてこのように呼ばれます。レバレッジが10倍の場合、証拠金の10倍の取引が行えるので、効率よく利益を狙えますが、一方で損失も10倍に拡大するため、リスクの高い取引となります。

4. スプレッド

スプレッドとは、CFD取引における「売値」と「買値」の差のことです。スプレッドは手数料として取引業者の収益の一部になります。スプレッドが狭い(小さい)とコストが低く、スプレッドが広い(大きい)とコストが高くなります。CFD取引のコストには、売買する際にかかる取引手数料もありますが、取引手数料がかからないCFD業者も多く、その場合でも、スプレッドによるコストはかかります。

5. ロールオーバー

ロールオーバーとは、CFD取引で、ポジション(未決済のまま残っている約定)を翌営業日に持ち越すことをいいます。ロールオーバーをすると金利調整額というコストが発生します。取引業者によっては、「オーバーナイト金利」とも呼びます。買いポジションを保有して、翌営業日に持ち越すと金利の支払いが発生し、売りポジションを保有して持ち越すと金利を受け取れる場合がありますが、総じて長期間ポジションを持ち続けるとコストがかかると思っておいた方がいいでしょう。

6.ロスカット

ロスカットとは、CFD取引において、損失が一定の水準を超えたときに、ポジションを自動的に決済して、損失をこれ以上大きくしないように防ぐ仕組みのことです。証券会社によって設けられた一定の証拠金維持率を下回った場合にロスカットが実行されます。ロスカットは投資家を守る重要な仕組みですが、予期せぬ決済が頻繁に発動してしまうと資金を大きく失う可能性があるため、余裕のある証拠金を用意して、証拠金維持率を高く保つようにするといいでしょう。

CFDにかかる税金の仕組みをわかりやすく解説

CFD取引によって得られた利益は、「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象となります。申告分離課税とは、他の所得と合算せずに、分離して税額を計算する課税方法です。

税率は一律20.315%です。内訳は所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%となります。

税金はいつ発生する?

CFD取引では利益が確定するたびに課税されるわけではありません。年間の損益を計算して、確定申告をすることによって税金を支払います。CFD取引には、証券会社が損益の計算や確定申告をしてくれる制度である「特定口座」がありません。そのため、自分で確定申告をする必要があります。

確定申告が必要なケースとは?

確定申告が必要なケースをみてみましょう。

<給与所得者>

・給与所得とは別でCFDによる所得が年間20万円を超える場合
・給与所得とCFDによる所得の合計が年間20万円を超える場合※
※条件によっては確定申告が不要な場合があります。

<主婦や学生など扶養に入っている人>

・CFDを含めた所得が年間48万円を超える場合

なお、自営業者や給与収入が2,000万円以上の人はCFDの所得の有無にかかわらず、確定申告が必要です。

CFDの損益の計算方法とは

1年間で得た「売買益」と取引で得られた「配当、金利、調整金」が課税対象となります。これらの利益から必要経費を引いた所得に課税されます。必要経費には、取引で発生する手数料のほか、取引に関連する通信費、書籍代なども含まれます。

また、CFD取引で生じた損益は、同じ「先物取引に係る雑所得等」に分類される取引と損益通算することができます。さらに、損益通算しても引ききれない損失がある場合は、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年にわたり「先物取引に係る雑所得等」の金額から繰越控除できます。

一般的な会社員の場合、CFDの利益が20万円以下であれば、確定申告は必要ありませんが、損失が出た場合は、確定申告をすることによって、節税できるケースがあることを覚えておくといいでしょう。

CFD取引の注意点とリスク管理術

CFD取引は、多様な金融商品に効率よく投資ができる魅力的な取引手法ですが、適切なリスク管理を行わないと大きな損失を招く恐れがあります。ここでは、「初心者が陥りやすいミス」と「リスク管理の方法」をお伝えします。

初心者が陥りやすいミス

1.レバレッジをかけ過ぎる

少ない資金で大きな取引ができるレバレッジは魅力的ですが、レバレッジをかけ過ぎると、わずかな値動きで大きな損失を被る恐れがあります。初心者は低レバレッジで取引を始めましょう。

2.損切りを怠る

損失が出ても、相場の回復を期待して損切りせずに放置すると、損失がさらに拡大することがあります。適切な損切りラインを設定しておくことが大切です。

3.過剰な取引をする

短期間で利益を上げようと、頻繁に取引を行うと、手数料やスプレッドが積み重なり、利益を削ることがあります。また、パフォーマンスや感情面にも影響を与えるため、適度な取引を心がけましょう。

リスク管理の方法

1.適切なレバレッジを設定する

初心者はレバレッジを2~3倍程度に設定してリスクを抑えましょう。また、必要となる証拠金ギリギリで取引をすると、少しの値動きでロスカットされる恐れがあるので、余裕のある証拠金を口座に用意しておくといいでしょう。

2.損切り注文(ストップロス)を活用する

損失の拡大を防ぐために損切りラインを設定しておきましょう。具体的には逆指値注文を設定しておくことで損失を一定範囲にとどめることができます。

3.リスク分散をする

「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言があるように、複数の商品に分散投資を行うことでリスクを軽減させることができます。異なる値動きの銘柄に投資すれば、特定の銘柄が値下がりした時に、他の銘柄の値上がりでカバーできる可能性があります。

4.市場の動向を把握する

CFD取引では、目先の値動きだけにとらわれず、投資の対象となる市場の特性や動向にも注目しましょう。市場の状況を理解することで、銘柄に影響を与える要因を予測しやすくなり、リスクを減らすことにつながります。

CFD 取引は大きな利益を得られるチャンスがある一方で、リスク管理を怠ると大きな損失を被る可能性がある取引です。CFDの仕組みを正しく理解して、適切なリスク管理を行うことが重要です。堅実な取引を心がけましょう。