近年ますます重要性が増しているフードバンク。NTT東日本 千葉支店は、フードドライブとして持ち寄った食料品を寄贈する取り組みとともに、社員で構成する“仕分け隊“をフードバンクちばへ派遣し整理・梱包作業をサポートする活動を続けている。
持続的なフードバンクへの協力を行うNTT東日本
まだ食べられるのに捨てられてしまう食料品や、食品企業の製造工程で発生する規格外製品などを引き取り、福祉施設などに無償で提供する「フードバンク」活動。
年々活動が活発化しており、全国フードバンク推進協議会によると2024年5月時点で272団体まで拡大している。食品ロスの削減とともに、貧困問題の支援や環境負荷の低減を実現するこの活動は、貧困世帯や、被災者の支援としていまや欠かせないものとなっている。 NTT東日本は、備蓄している非常用災害食料品を各地のフードバンクに定期的に寄贈するという活動を行っている。近年、社会情勢が大きく変化し、とくに家庭における経済状態の悪化は日々の食べ物に困る状況を招いており、子どもたちをはじめとした家族の生活に厳しい影響を与えて続けているからだ。
NTT東日本は、パーパスのなかでSDGs達成への貢献を目指したサステナビリティ方針を設定している。そして支援を必要としている人に食料品を配布する「フードバンク」は、SDGsの17目標のうち「1.貧困をなくそう」「12.つくる責任 つかう責任」に寄与するものと言える。「地域社会への貢献」を掲げる同社は、持続的なフードバンクへの協力を惜しまないという。
3年以上続けられているNTT東日本 千葉支店の“仕分け隊”
千葉県においてこのフードバンクを行っている団体のひとつが、フードバンクちばだ。NTT東日本 千葉支店もまた、家庭に備蓄している食料品などを賞味期限が十分にあるうちに寄付する活動「フードドライブ」として社員が持ち寄った食料品を、継続的にフードバンクに寄贈している。
現在、フードバンクちばと千葉県社会福祉協議会が年間3回にわたって実施しているフードドライブは、約100カ所もの窓口で寄贈を受け付けているという。それゆえに寄贈された食品の仕分けを行う人手が不足してしまい、タイミングによってはフル稼働しても捌ききるのが難しくなっている。
こういった状況を鑑み、NTT東日本 千葉支店はSDGsの17目標の「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に則り、各地から寄せられる食料品の整理・梱包作業をサポートする“仕分け隊“活動を行うことを決めた。この活動はコロナ禍の時期にスタートし、すでに3年以上続けられているそうだ。
11月8日に行われた“仕分け隊”の活動では、フードバンクちばに9名のNTT東日本社員が集った。同社野球部に所属する社会人選手も数名参加しており、NTT東日本の“仕分け隊“に対する熱意が伝わってくる。
フードバンクの食料品を入庫・整理・分類・梱包
フードバンクちばに到着した“仕分け隊”は、はじめにフードドライブとして持ち寄った食料品を寄贈した。フードバンクちば 社会福祉士の高橋晶子氏は、“仕分け隊”の活動に対し、次のように挨拶する。
「多くのフードバンクさんは、どちらかというと企業からいただくものが多いのですが、フードバンクちばはご家庭からいただく方が割合として多くなっています。すべて違うものなので、整理するのが大変です。こうやって手伝ってくれる方がいらっしゃるというのは、すごく大きな力になっています」(フードバンクちば 高橋氏)
2023年ごろから始まった物価高騰、2024年夏に起きた「令和の米騒動」を受け、フードバンクちばの窓口では寄贈が減少傾向にあるという。米にいたっては昨年の半分に満たず、今回の整理作業でも想定した量には達しなかったそうだ。
そんな状況でスタートした“仕分け隊”の整理・梱包作業。筋力のある男性陣は米袋を倉庫に運び込み、細やかな作業を得意とする女性陣やベテランのボランティアスタッフは食料品の整理を行うというチーム分けが自然に行われた。
食料品は賞味期限別に8分類と品目別に3分類、そして除外品の計12分類に仕分ける。「そのまま食べられるか」「簡単な調理(お湯を注ぐ・レンジで温めるなど)で食べられるか」「調理が必要か」という視点で分類しているのがフードバンクならではと言えるだろう。
どうしてこのような分類になっているかというと、生活に困ってる方は電気・ガス・水道といったライフラインが止まっていたり、身体的・精神的に調理ができなくなっていたりする場合もあるからだ。
各チームが一通り作業を終えた後は、梱包作業だ。フードバンクが支援する人たちの多くは「明日食べるものがない」という緊急性の高い方々のため、正午までに来た食品支援の申請はその日の午後には地域のボランティアの協力で梱包・発送され、早ければ翌日の午前中には手元に届くという。だからこそ、梱包は素早く間違いのないように行わなければならないし、事前の仕分け作業がとても重要な役割を果たしている。
支援を求める人たちが希望する食品、アレルギーなどで送ることができない食品はオーダー表に記載されているが、実際にどんな品物を入れるかは作業者にまかされている。それだけさまざまな食料品が集まってくるからだ。だからこそオーダー表に記載された内容から家庭の状況を想像することが求められ、梱包する品物にも作業者の個性が表れる。
こうして“仕分け隊”の活動はお昼をもって終了となった。参加したNTT東日本社員の感想を伺ってみよう。
「私は自治体の業務でフードバンクのことを知ったんですけど、その先がどうなっているかは知らなかったので、今日実際に体験できてとても勉強になりました」
「僕は初めての参加で、まずいろいろな食品があること、細かく仕分けていることにビックリしました。10回参加したら一人前という話をお聞きしたので、あと9回呼んでいただけるようにがんばりたいと思います」
「私は2回目の参加なんですけれども、改めて大変な作業だと身に染みました。もし3回目もあればぜひ参加させていただきたいなと思っております」
「いま野球部に所属しているのですが、野球だけやっていたらこういう経験はできないので、とても貴重な機会をいただけました。ありがとうございます」
さまざまな人が関わり少しずつ手伝って成り立つフードバンク
もともとまったく別の仕事をしていたものの、東日本大震災後に声をかけられて現在の団体に入ったという、フードバンクちばの高橋晶子氏。当時はまだフードバンクは始まっておらず、就労が難しい人たちの支援が主な事業だったという。
だが、就労困難者はそもそも最初の経験を得るのも難しい。そんな人たちが働ける場を自ら作ろう、という考えからスタートしたのがフードバンク活動なのだそうだ。
しかしフードバンクはそれ自体では採算がとれない。だからこそ高橋氏らが福祉の仕事と掛け持ちでフードバンクの活動を行うことになったそうだ。そのうちに法律も整備されていき、コロナ禍などを経て寄贈もどんどん増加し、高橋氏はいつしかフードバンク活動の専任になった。
「まだまだ知らない人が多い活動なので、もっと沢山の人に知ってほしいですね。小・中学校の子たちはいまSDGsや食品ロスについて学校で学んでいると思いますので、その流れの先にフードバンクという活動があると伝えたいです。でも実際にどんなことをやっているかは分からないでしょうから、フードバンクちばで見学・体験をしてもらえたらうれしいなと思います」(フードバンクちば 高橋氏)
フードバンクは、さまざまな人に関わってもらい、みんなが少しずつ手伝って成り立つ活動だ。だからこそ、積極的に活動を支援してくれる企業は非常に助けになっているという。
「NTT東日本さんは、いつも私たちファーストで考えてくださるんですよね。企業目線ではなく、『なにをしたらこちらが助かるのか』を聞いたり考えたりしてやってくださいます。それにみなさん優秀なので、細かい作業でも想像以上の成果をあげてくれます。本当にありがたいです」(フードバンクちば 高橋氏)
地域社会を考えることは必ず事業のプラスになる
NTT東日本 千葉支店が“仕分け隊”の活動を行うきっかけは、前事業部長がフードバンクちばの状況を知り、「助けたい」という純粋な気持ちとともに、「社会の状況を社員に学ばせる場として必要だ」と考えたことだったという。
当初の活動は年に1~2回程度で参加する社員も少なかったが、継続して続けた結果、現在は年に3~4回程度開催するようになったそうだ。参加したNTT東日本社員も延べ100人ほどになっており、フードバンクの機能や社会課題への理解が深まったことが伺える。
NTT東日本 千葉事業部 企画総務部 総務部門 総務担当(サステナビリティグループ)課長の原喜一郎氏は、「NTT東日本 千葉支店の意義は、地域社会の課題解決にあります。フードロス問題、困窮している方々との関わりは地域社会を考える上で切っても切れないものです。このような課題を社員みんなで考えていくことは必ず事業にとってもプラスになると考えています」と、“仕分け隊”の意義について語る。
また、同総務部門 総務担当(サステナビリティグループ) チーフの向井菜穂子氏は、「“仕分け隊”のメンバーは我々が指名して強制しているわけではなく、みなさん公募で来ていただいています。参加者の応募があるか不安でしたが、みなさんスケジュールを調整して参加してくれます」と、社員の意識の醸成に喜びの声を上げる。
NTT東日本グループはこの他にも、古い切手やインクカートリッジ、本などの収集活動、マイクロプラスチックを中心として海岸清掃活動も行っており、さまざまな形で社会貢献を行っている。
そんなNTT東日本の活動のひとつに福島の復興支援「福島ひまわり里親プロジェクト」がある。これは、プロジェクトへの参加者(里親)がNPO法人からひまわりの種を購入し、育てたひまわりの種を再び福島へ贈りかえすというものだ。
フードバンクちばも里親のひとりとして敷地内でひまわりを育てているが、NTT東日本 千葉支店の“ガーデニング隊”はこの花壇の手入れを行っているという。
原氏は最後に、「これからも“仕分け隊”を初めとした活動を継続し、社員が社会課題を考える機会を提供し続けたいと思います」と社会貢献を継続する意思を示した。