TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。
この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。今回の配信では「トーク力」に関する質問に答えました。
<リスナーからの質問>
この番組「Dream HEART」は、茂木さんとゲストとのトークがとてもスムーズで聴きやすく、かつわかりやすいです。事前に話の進め方やゲストへの質問の内容を決めていらっしゃるのでしょうか? それとも、時間内でまとめられるようにされていらっしゃるのでしょうか。これからも番組を楽しみにしております。
<茂木の回答>
茂木:ありがとうございます。励みになります。質問の回答なのですが、もちろん毎回台本はありまして、それに基づいて進行する部分もあります。
一方で、脳の仕組みとして非常に大事なのですが、相手に対して「関心」「興味」「好奇心」を持たないと質問は出ないです。私は科学者ですから、好奇心や問いかけというのは職業上常に持っています。これはある意味、子どもはみんなそうですよね。ですが、大人になっていくとあまり質問をしなくなったり、人によっては好奇心を失ってしまう人もいます。
科学者なので職業上ずっとキープしているのは前提としてありますが、僕はゲストの方に毎回関心があります。素晴らしいゲストばかりなので質問したくなるのです。ですから、事前に内容を決めているというよりは、話を伺っていくなかで聞きたくなることが、ずいぶんとあります。
最近、印象的だった出来事があります。僕はあるネットの番組で科学の質問をする役割なのですが、キャスティングを竹下隆一郎さん(「TBS CROSS DIG with Bloomberg」CCO、「PIVOT」創業メンバー、元「ハフポスト」編集長)という方がされました。
何回かやっていくうちに、僕は「世の中にいろんな科学者がいるなか、なぜ僕をインタビュアーにしようとしたのですか」と竹下さんに聞いたのです。そうしたら、「驚いているときに本当に自然と驚いているから」と言うのです。演技ではなく本当に驚くことで、そこからさらに話が進んでいくことがあるとのことでした。聞いてみたところ、世の中にはそういう人がなかなかいないそうです。
そういうところが会話をスムーズに進めるうえでは大事なことだと思うのですけども、考えてみると日常の会話でもそうですよね。お友達やご家族、知り合いと話しているときに「ああ、そう」みたいな反応をされると話があまり進まないですよね。 「本当!?」「驚いた~」みたいな反応をすると話が弾むのは、こういったラジオ番組でも同じなのです。
興味を持つためにはよく調べたり事前にリサーチしたりすることも大事なのですが、いわゆる傾聴するといいますか、相手の話をよく聞くことが大事です。よく聞かないと好奇心も持てませんし、びっくりもできません。
ですから、聞く力を鍛えるのはすごく大事だと思います。そういう意味においては、ラジオを聴くのはいいことではないでしょうか。ラジオを聴いていると自然と聴覚系脳、具体的に言うと側頭連合野、すなわち過去の記憶と結びつけていろいろと質問をする回路が鍛えられます。ですので、ラジオをこれからも聴いていただけると嬉しいなと思います。
<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎