ヒット商品やサービスを手掛ける企業のキーマンにお話しを伺う企画「#お仕事図鑑」。
今回は「Gakken」で働く先輩社会人にインタビュー。企画・編集を担当している中村円香さん・徳永智哉さんに、日々の仕事内容やアイデアの生み出し方、今後の展望などについてお話を伺いました!
教育を創る!編集者のお仕事とは
ーーまず簡単に自己紹介をお願いします。
中村:中村円香と申します。2019年度に入社し、今年の4月で6年目になります。K12-2事業部で、小中学生向けの学習参考書や児童書の企画編集を担当しています。また、学研教育総合研究所で教育情報の収集と発信の仕事もしています。
徳永:徳永智哉と申します。入社8年目になります。高校生向けの参考書や大人向けの一般書、実用書の企画編集を担当しています。出身は大阪で、就職時に上京してきました。
ーー日々のお仕事内容について教えてください。
徳永:基本的には編集の仕事がメインです。書籍の企画と編集を行っており、私は特に高校生向けの学習参考書、理系科目の参考書の企画を多く手掛けています。具体的には、多くの人と協力して仕事を進めることが多いです。自分で執筆やイラストを描くわけではなく、著者や漫画家、イラストレーターに依頼して、企画を進めていくのが私たちの仕事です。
中村:実際の作業としては、多くの方にお仕事を依頼し、出来上がった原稿やイラストをチェックする役割を担っています。私も理系出身で、主に理科系の教材を作成しています。最近は自由研究の本を作成しており、実験の撮影なども行っています。先日はスタジオでカメラマンと共に一日中実験の撮影を行いました。
ーー現在担当されている書籍について、もう少し詳しく教えていただけますか?
中村:私は以前、中学生向けの『ひとつひとつわかりやすく。』シリーズの編集を担当していました。現在は、そのシリーズのまとめ役をしています。また、小中学生向けの学習参考書やドリルを、5教科でシリーズとして発刊しています。社内では、国語、数学、英語などの担当者とチームを組み、シリーズをより良くする方法を検討しています。私は主に理科の教材を担当していますが、最近は自由研究の本や、子供向けに選挙や政治をわかりやすく解説した本も作成しています。
徳永:私は高校生向けの学習参考書、特に生物科学や数学などを担当しています。また、『ひとつひとつわかりやすく。』シリーズを大人向けにリメイクし、就職活動に関するシリーズを立ち上げました。これにはSPI試験や一般常識問題、エントリーシート、面接、グループディスカッションなど、就職活動に関連する内容が含まれています。さらに、仕事の基本やITの基本をわかりやすく解説したビジネス書も手掛けています。
「ターゲットにどう響くか」を考える
ーー売れているシリーズを拡張したり改訂したりするアイデアはどのように生まれるのでしょうか?
徳永:今回の就職活動シリーズのアイデアは、2009年に中学生向けに始まったシリーズから着想を得たものです。その読者が今や大人になり、就職活動を迎えている時期にあたるだろうなと考えました。ターゲットにどのように響くかを考えた結果、就職活動中の方々にも『ひとつひとつわかりやすく。』のコンセプトが適しているのではないかと思い、シリーズを拡張しました。他社の就職活動本との競合を考慮し、読者に親近感を持ってもらえるような戦略を立てましたね。
中村:『ひとつひとつわかりやすく。』シリーズは2009年に始まり、学習指導要領の変更に伴い改訂しました。質の高い参考書を提供するためには、内容をリニューアルする必要があります。また、シリーズがよく売れていたため、さらに多くの人に手に取ってもらう方法を模索しました。競合商品と比較し、フルカラーの方がわかりやすいという仮説を立てて、そういった仮説を積み重ねながら改訂作業を行いました。
ーー他社の商品との差別化はどのように図っているのでしょうか?
中村:まず他社の商品と比較して、私たちの商品が優れていると感じていただけるように努力しています。さらに、私たちの商品が素晴らしいと思ってもらえるような付加価値をつける工夫もしています。特に、『ひとつひとつわかりやすく。』シリーズは、勉強が苦手な子でも手に取りやすい参考書なので、より多くの人に分かりやすくするために、※メディアユニバーサルデザイン認証を取得しました。これは、色覚特性のある方にも見やすい配色を心がけて作成したものなんです。
※メディアユニバーサル認証を取得していない銘柄もあります。
とにかく知識をインプット!企画のヒントを見つける
ーー印象に残っている仕事のエピソードがあれば教えてください。
中村:以前『世界が広がる学問図鑑』という、私の趣味が詰まった図鑑を作成しました。大学の学部選びの際に、学問分野名ありきで専門分野を選んだ経験から、もっと多種多様な学問について知っていれば違う選択をしていたかもしれないという思いで作ったものです。この図鑑は、昨年、日本最大級の科学イベントであるサイエンスアゴラというイベントの公式ビジュアルとして使用されたんですが、そのイベントの会場が図鑑の世界観そのままの空間になっていたことが非常に印象深かったですね。
徳永:初めて企画した書籍が書店に並んだときは、すごく感動しました。特に、最初に作成した生物と化学の参考書に関する読者アンケートで、「おかげで点数が大幅に上がりました。100万円出しても買う価値のある素晴らしい参考書です」というコメントをもらったことが印象に残っています。実は私は、もともと出版業界に入るつもりはなかったんですが、塾講師としての経験からより多くの人にコンテンツを届けたいと思い、編集の仕事を選びました。その思いが実現できた瞬間でしたね。
ーー知識のインプットはどのように行っていますか?
徳永:コンテンツを作る仕事をしている限り、流行っているものには心を動かす何かがあると思うので、流行りのものは何でも見るようにしています。アニメや漫画、小説、TikTokもよく見ています。また、言語化することも大切にしていますね。いいと思うものを言葉にすることで、自分の中で答えを作ることができます。デザインが苦手でしたが、デザイナーやイラストレーターさんと仕事をするようになり、言語化する癖をつけ、実体験を通じて学ぶように心がけています。
中村:私はインプットを増やすことに尽きると思います。特に、小中学生向けの書籍を作っているので、保護者の悩みにも目を向けています。女性誌や年代が上の人向けのコンテンツも見るようにして、親世代の悩みを企画のヒントにしていますね。
ーーこれからの展望やキャリアプランについて教えてください。
中村:私は自分が作った本をとても可愛がるタイプなんですね。でも一方で、書店に並んでいる本を見ると、もっと改善すべきだったなと反省することも多いです。本は売り上げの良しあしがはっきりとわかりますからね。自分がいいと思える、かつ、世にも受け入れられるものを作りたいと思っています。
徳永:近年、書店が減少していることが気になっています。多くの読者ターゲットは生徒なので、書店が減ると読者に届けにくくなってしまいます。デジタルの活用や新しいシステムを考えることで、将来的にはもっと多くの人に届けたいと思っています。
ーー最後に、大学生に向けてのメッセージをお願いします。
中村:就職活動は迷う時期ですが、迷う分だけ多くの可能性が広がっているということだと思います。いろんな会社を見て、みなさんが納得いく選択ができることを願っています。
徳永:今がいろんな会社に入り込めるタイミングだと思います。社会人になると他社に入ることは難しいので、今こそ様々な経験をしてほしいです。また、海外に行くのもいいし、旅行や習い事をするのもいいですね。今の年齢だからこそ感じられることがたくさんあり、それが仕事に役立つことがあります。就職活動は辛いかもしれませんが、諦めずに頑張ってください。
マイナビ『学生の窓口』
-いろんな仕事をのぞき見!「お仕事図鑑」 -
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取材:清水 碧
執筆:田中 妃音
編集:学生の窓口編集部
取材協力:Gakken
※本稿はマイナビ『学生の窓口』の過去の記事を転載したものです