下仁田ネギとはどんな野菜?
下仁田ネギ(しもにたネギ)は、ユリ科ネギ属の野菜、白い葉鞘部を持つ根深ネギの一品種で、株分かれしない一本ネギです。白い部分は15~20cmと短く、太いものでは直径4~5cmとなり、太く短いずんぐりとした姿が特徴です。
群馬県南西部の邑楽郡(おうらぐん)下仁田町とその周辺で栽培される、群馬県の伝統野菜です。江戸時代には栽培され幕府にも献上されその味が評判になったことから、別名「殿様ネギ」とも呼ばれています。
味の特徴
生では辛みが強すぎて薬味には向きませんが、糖度は一般的な根深ネギよりも高く、加熱すると独自の甘みとコクが引き出され、肉質は柔らかくとろけるような食感になります。下仁田町とその周辺地域の豊富な日照時間と小石混じりの重粘土質が、その味を作り出すといわれています。
旬の時期
下仁田ネギの収穫期は11月中旬から1月までで、12月が旬で最もおいしい時期。霜に数回当たり甘みを増したタイミングで収穫され、冬の味覚として出荷されます。
含まれている主な栄養とその効果
下仁田ネギには、植物粘液成分のミューシンと辛味成分の硫化アリルが一般的なネギの3倍含まれているといわれています。また、ビタミンCやカルシウムも比較的多く含まれています。
タンパク質(ミューシン)
ミューシンはタンパク質とマンナンが結合した高分子糖タンパク質で、ネギの葉に多く含まれています。胃粘膜の保護に役立つほか、タンパク質の吸収を助ける働きがあるとされています。
辛味成分(硫化アリル)
硫化アリルは揮発性が高い成分です。血栓ができにくくする、胃液の分泌を促進して消化を助けるなどの働きがあるとされています。また、ビタミンB1の吸収を高め、疲労回復に役立つと期待されています。
ビタミンC
ビタミンCは水溶性のビタミンで、皮膚や骨を構成するコラーゲンの合成に必要な栄養素です。また、ストレスに対する抵抗力と免疫力を高める働きがあるとされています。
カルシウム
カルシウムはミネラルの一種で、歯や骨の形成に役立つほか、筋肉を収縮させる働きがあるとされています。
下仁田ネギの育て方
下仁田ネギの産地では、高品質な下仁田ネギを作るため、伝統的な「2回植え方法」で種まきから収穫まで14カ月余りかけて育てています。10月下旬から11月上旬に種をまいて越冬させて育苗し、春に仮植をした苗を、夏に掘り起こして定植し、冬を迎えて甘みを増したころに収穫します。
ここでは、家庭菜園向けに春まき・冬収穫の「1回植え栽培」を紹介します。
種まき・育苗
育苗箱にタネまき用土を入れ、条間10cm、深さ5mm程度のまき溝をつけ、タネを1cm間隔で条まきします。発芽が密集しているところは間引きします。
畑の準備
植え付けの2週間ほど前までに石灰を施して土と混和させ、20~30cmの深さに堆肥と元肥を入れ、幅90cm、高さ10cmほどの畝を立てます。
植え付け・管理
苗が鉛筆ほどの太さになったころ、条間45cm、株間10~12cmに定植し、1カ月に1回ほど追肥します。土寄せは収穫の1カ月前ごろに1回だけ行います。
収穫
11月下旬から12月に収穫。収穫後は風通しの良い軒下などの半日陰に保存すれば、1~2カ月は日持ちします。
下仁田ネギを育てるときに注意したいポイント
注意点は土壌と日照です。下仁田ネギは、水はけの良い肥沃(ひよく)な土壌が適しています。土壌は礫を多少含んだ粘土質、肥料は鶏糞や油かす、米ぬかなどの有機質肥料が適しています。日当たりの良い場所を選ぶこともポイントです。
おいしい下仁田ネギの選び方
下仁田ネギは、白い部分の巻きが固く、全体的にみずみずしいものが良質です。葉先が青くピンとしたものを選びたくなりますが、黄色く枯れているものが、霜に当たり甘みを増しています。また、緑の葉と白い根の境目に弾力があれば身が詰まっています。太いものほどおいしいとは限りません。用途に応じて選びましょう。
下仁田ネギの保存方法
出回る時期が短い下仁田ネギ。できるだけ長く保存する方法を紹介します。
泥付きの場合
泥がついたまま洗わずに新聞紙で包み、日陰で風通しの良い場所に立てておくと1カ月ほど保存できます。氷点下にならないように注意しましょう。
泥なしの場合
乾燥しないように新聞紙で包み、冷蔵庫に入れる場合はさらにポリ袋に入れて保存します。冷凍する場合は、洗って水気を切り、使いやすい大きさに切ってから、ラップに包んで小分けにし、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ入れます。
下仁田ネギの食べ方とレシピ5選
根深ネギ(白ネギ)と同じように食べられますが、辛味が強く薬味などの生食には向いていません。加熱すると甘みが増すので、煮る、焼く、蒸す、炒めるなどの加熱調理がおすすめです。鍋物、汁の具材、煮物、炒め物など、さまざまな料理に向いています。ここでは、下仁田ネギの甘さやとろける食感が楽しめるレシピを紹介します。
青い部分は食べられる?
下仁田ネギの青い部分も加熱調理して食べられます。栄養価も高く、彩りにもなるので丸ごと使い切るのがおすすめです。白い部分と比べて硬いので煮込みや炒め物に向いています。白い部分との境目に土がたまりやすいのでよく洗って使いましょう。
下仁田ネギの丸焼き(大名焼き)
下仁田ネギの丸焼きは、産地では「大名焼き」という別名を持つご当地料理です。表面を焦がして中身をトロトロに焼き上げます。
材料(2人分)
・下仁田ネギ 2本
・塩 少々
作り方
1.下仁田ネギは根元と青い部分を切り除く
2.グリルに下仁田ネギを並べて中火で表面を焦がす
3.アルミホイルで2を包み、柔らかくなるまで10分ほど蒸し焼きにする
4.外側の焦げた皮に浅く包丁を入れて開き、塩を振って中身を食べる
下仁田ネギとマグロでねぎま焼き
ねぎまとは、江戸時代にさかのぼるネギとマグロの鍋料理(ねぎま鍋)のこと。後に焼き鳥のねぎまに転じたとおり、焼いてもおいしい組み合わせです。
材料
・下仁田ネギ 1本
・マグロ(刺身用)100g
・しょうゆ 大さじ1
・酒 大さじ1
・砂糖 大さじ1
・ごま油 適量
作り方
1,下仁田ネギとマグロは一口大に切る
2.フライパンにごま油を熱し、下仁田ネギを中火で炒め、柔らかくなったらマグロを加えて火を通す
3.容器にしょうゆ、酒、砂糖を混ぜ合わせ、フライパンに回しがけして味をからめて火を止める
下仁田ネギのすき焼き風
下仁田ネギの醍醐味はすき焼き。最初にこんがりと焼き色をつけてから、わりしたを注ぐのがポイントです。
材料(2人分)
・下仁田ネギ 1本
・牛薄切り肉 160g
・焼き豆腐 1/2丁
・糸こんにゃく 100g
・えのきたけ 100g
・しいたけ 2枚
・卵 2個
・サラダ油(牛脂)適量
<わりした>
・酒 1/4カップ
・みりん 1/4カップ
・しょうゆ 1/4カップ
・水 1/4カップ
・砂糖 大さじ2
作り方
1.下仁田ネギは薄皮をむいて1cmの斜め切りに、牛肉は食べやすい大きさに切り、焼き豆腐は1/4に、しらたきは下茹でして食べやすい長さに切り、しいたけは軸を切り、えのきたけは石づきを切り落とす
2.小鍋にわりしたの材料を合わせ、一煮立ちさせる
3.鍋にサラダ油(または牛脂)を熱し、下仁田ネギを焼き、牛肉を加えて焼き色をつける
4.焼き豆腐、糸こんにゃく、えのきたけを加えたら、わりしたを注ぎ、中火で煮て味を染み込ませる
5.鍋から取り分け、溶き卵をつけて食べる
下仁田ネギの鶏せいろ
ネギと鴨肉は好相性ですが、手に入りやすい鶏もも肉で鴨せいろ風に。下仁田ネギの甘みと鶏肉のうまみが好相性です。
材料(2人分)
・下仁田ネギ 1本
・鶏もも肉 1/2枚
・ショウガ(おろす) 1かけ
・酒 大さじ1
・そば 200g
・めんつゆ(3倍濃縮) 50cc
・水 300cc
・サラダ油 適量
作り方
1.鶏肉は一口大に切り、おろししょうがと酒をまぶして5分おく
2.下仁田ネギは1cm幅の斜め切りにし、鍋にサラダ油を熱して焼き色がついたら取り出しておく
3.続いて同じ鍋で鶏肉を焼き、焼き色がついたら、めんつゆと水を合わせ入れて5分煮て、2の下仁田ネギを戻し入れて更に3分煮る
4.そばは袋の表示どおりに茹でて流水で洗って器に盛る
5.別の器に3を盛り、つけ汁にして食べる
下仁田ネギのグラタン(2人分)
甘みを蓄えた旬の下仁田ネギは、冬に食べたくなるグラタンの具材にもぴったり。ボリュームもあります。
材料
・下仁田ネギ 1本
・ベーコン 2枚
・固形コンソメ 1/2個
・水 大さじ3
・米 小さじ2
・牛乳 100ml
・バター 小さじ1
・塩こしょう 適量
・シュレッドチーズ 適量
作り方
1.下仁田ネギは5cm幅、ベーコンは1cm幅に切る
2.フライパンにバターを中火で熱し、下仁田ネギとベーコンを焼き色がつくまで炒める
3.水、固形コンソメを加え、柔らかくなるまで弱火で煮て、耐熱皿に取り出す
4.同じフライパンでホワイトソースを作る。容器に米粉と牛乳を入れてよく混ぜ、同じフライパンに入れて混ぜ、とろみがついたら塩こしょうで味を整える
5.耐熱皿の下仁田ネギとベーコンに4をかけ、シュレッドチーズをのせ、トースターまたはオーブン(230℃)で焦げ目がつくまで焼く
群馬県が誇る甘くて太いネギの王様
群馬県の特産品、下仁田ネギは下仁田町とその周辺の土壌や気候風土で育まれる伝統野菜です。伝統的な「2回植え栽培」では種をまいてから収穫まで14カ月余りかけて育てられ、霜に当たって甘みを蓄えて出荷される下仁田ネギは、まさに「ネギの王様」と呼ぶにふさわしい逸品です。
12月の最盛期、短い旬を逃さずに、季節料理の鍋物などで味わいたいものです。香ばしく、焼き色をつけることが調理のポイント。下仁田町のネギ畑の風景や江戸時代の食文化などに思いを馳せると、より味わい深く感じられるかもしれません。
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