東日本旅客鉄道(JR東日本)は12月10日、鉄道やバス、買い物などに使える同社のICカード「Suica」の大規模な機能アップグレード構想を発表した。
Suicaのデジタルプラットフォーム化を進め、新たなアプリの提供やコード決済機能、2万円上限の廃止、ユーザーに応じた運賃割引、タッチなしで改札を通過できる仕組みなどの導入を目指す。
JR東日本は、Suicaを中心とした大規模なDX化を構想しており、今後10年間でSuicaの機能を順次アップグレードする。また2026年頃にはアプリを使ったコード決済機能を追加し、2028年度5にはユーザーの状況に応じたサブスクリプション割引やクーポン配布などにより、新しい移動体験を提供するという。
チケットやSFデータをセンターサーバー管理へ
機能アップグレードのベースとなるのが、Suicaや運賃計算、SF(ストアードフェア。Suicaでは電子マネーを指す)など各種データのセンターサーバー化だ。現在はICカード側で管理している乗車チケットやSFなどのデータを、センターサーバーで管理する新しいプラットフォーム型システムへの移行を進める。
新アプリと運賃のサブスクリプション商品
また、新たに「Suica アプリ(仮称)」のリリースを予定。2028年度には同アプリでセンターサーバー管理型の鉄道チケットの提供を開始したいとする。
例えば毎月3,000円を払うことで、自宅の最寄り駅を起点にどの駅でも運賃が50%割引となるサブスクリプション商品の提供や、鉄道の日などの記念日、駅ビルやイベントでの買い物などで配信されるクーポンなどが、移動時に利用できるようになるという。
利用エリアを順次統合。全線でSuicaの利用が可能に
利用エリアも広範囲で統合。2027年春頃には首都圏(長野含む)、仙台、新潟、盛岡、青森、秋田のSuicaエリアを統合し、例えばSuicaのみで常磐線を上野から仙台まで乗車できるようにする。またSuica未導入エリアでも、「モバイルSuica」アプリで、デジタルチケット「スマホ定期券(仮称)」を利用できるようにする。
合わせて、乗車チケット等のセンターサーバー化により、将来的にタッチせずに改札を通過できる「ウォークスルー改札」、改札機がない駅での「位置情報等を活用した改札」の実現も目指す。位置情報の活用により、将来的には全線におけるSuica対応を見込む。
2026年秋頃にコード決済機能を追加、2万円上限も変更へ
SF機能に関しては、事前のチャージ式ではなく、クレジットカードや銀行口座との紐づけによる「後払い」式を、センターサーバー化により目指す。
2026年秋頃にはSuicaアプリを大幅にリニューアルし、現在2万円となっている上限額を撤廃し、2万円以上の買い物に使えるコード決済機能、家族や友人間で電子マネーを送る/受け取る機能、クーポン機能などの追加を予定する。
このほか、マイナンバーカードと連携して地域の生活サービスや行政サービスが利用できる「ご当地Suica(仮称)」も作るとする。
訪日外国人向けに新アプリを提供、よりスムーズな移動へ
2025年3月には、訪日外国人向けのiOSアプリ「Welcome Suica Mobile」サービスを開始。入国前にアプリのダウンロードやSFチャージができるサービスで、成田及び羽田空港からの移動を簡便にする。
また2025年秋には「JR東日本の新幹線 eチケット」や「在来線特急のチケットレスサービス」を、2026年春には普通列車グリーン車も、同アプリから利用できるよう機能追加する。将来的にはウォークスルー改札や全線でのSuica利用を、訪日外国人ユーザーにも使えるよう利便性の向上を図りたいとする。
このほか、他交通事業者へのSuicaサービスの提供も進め、他交通事業者の定期券発売サービスや、通学定期券の拡大を順次行う。
同社は「Suicaは『移動のデバイス』という今までの当たり前を超え、交通、決済だけでなく、地域のお客さまの様々な生活シーンにてご利用いただける『生活のデバイス』に生まれ変わります」と紹介している。