東日本旅客鉄道は12月10日、今後10年間にてSuicaの機能を順次グレードアップすることを発表した。
Suicaの当たり前を超える
同社は中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」に基づき、Suicaをデジタルプラットフォームとするため、今後10年間にてSuicaの機能を順次グレードアップしていく。
「移動のデバイス」という今までの当たり前を超え、「Suicaアプリ(仮称)」のリリースをはじめ、利用者に応じた鉄道サービスや各種の決済機能の検討を順次進め、移動、決済、地域といった様々な生活シーンにおける新たな体験やDXの提供を目指す。
今までの当たり前を超える
今までの当たり前を超えて、心豊かな生活を創るためにチケットやSFのバリューをセンターサーバーで管理する新しいプラットフォーム型のシステムへの移行「センターサーバー化」を順次検討していく。
1.鉄道利用は固定的という当たり前を超える
鉄道利用は定期券とSFという当たり前を超える。2028年度には、新しくリリースされる「Suicaアプリ(仮称)」においてセンターサーバー管理型の鉄道チケットの提供を開始する。たとえば、毎月3,000円を払うことにより、自宅最寄り駅である大宮駅を起点として、どの駅でも運賃が50%割引となるサブスク商品(割引上限あり)、鉄道の日などの記念日、駅ビルやイベントでの買い物により配信される鉄道クーポンなど、これまでにない便利なサービスが利用できるようになる。
2.改札はタッチするという当たり前を超える
鉄道での利用にはタッチが必要という当たり前を超える。将来的にセンターサーバー化により、タッチせずに改札を通過できる「ウォークスルー改札」、改札機がない駅での「位置情報等を活用した改札」の実現を目指していく。
3.Suica利用エリアという当たり前を超える
Suicaは利用エリアのみで利用可能という当たり前を超える。2027年春頃には、首都圏(長野含む)、仙台、新潟、盛岡、青森、秋田のSuicaエリアを統合し、たとえば、Suicaで常磐線を上野から仙台までの利用が可能となる。また、Suica未導入エリアにて、モバイルSuicaアプリで購入できる「スマホ定期券(仮称)」が利用できるようになる。(モバイルSuicaアプリで定期券の画面表示にて利用可能)
将来的には「位置情報等を活用した改札」の実現により、同社全線でSuicaが利用できるようになるという。
4.事前にチャージという当たり前を超える
事前にSuicaへのチャージが必要という当たり前を超える。センターサーバー化により、現在広く利用されているSF機能に加えて、将来的にはあらかじめ利用者のクレジットカードや銀行口座と紐づけることにより、チャージする必要のない「あと払い」の実現を目指していく。
少額決済という当たり前を超える
Suicaが便利なのは少額決済だけという当たり前を超える。2026年秋頃には、モバイルSuicaアプリを大幅にリニューアルし、Suicaならではの簡単&便利なタッチ決済に加え、Suicaの上限額(2万円)を超える買い物にも利用できるコード決済機能、例えば家族、友達同士でバリューを送ったりする電子マネーを送る&受け取る機能、お得に買いものができるクーポン機能、地域限定のバリューの発行など、様々な機能が追加される予定。
これにより、モバイルSuicaはさらに便利になり、子どもからお年寄りまで、「日常も旅先も、これさえあればいい」、そのようなユニバーサルな決済ツールへと進化していく。
新しい当たり前を創る
1.各地域に根差した新しいSuicaを創る
現在、自治体と同社のMaaSの連携にて実現している移動と地域のDXモデルを地域連携ICカードとの統合により拡張し、各地域に根差した「ご当地Suica(仮称)」を創り、地域の生活における新しい当たり前にしていく。このサービスはSuicaアプリ(仮称)をベースとし、マイナンバーカードとの連携により、地域内の生活コンテンツ、サービス(地域割引商品、デマンドバスなど)、商品券や給付金の受け取りや行政サービスの利用を実現する。これによりあらゆる生活シーンをDXし、地域がかかえる課題を解決していく。
2.利用者の生活に徹底的に根差したSuicaを創る
移動や生活シーンにてSuicaを利用したデータを活用することにより、たとえば旅行時に新幹線が到着したらタクシーが待っていたり、帰宅時にお風呂が沸いていたりする「おもてなし」サービスや、健康状態に合わせた食事のレコメンドをする「お気遣い」サービスを実現することで、広く利用者の生活をサポートする。
3.訪日外国人がシームレスに利用できるSuicaを創る
2025年3月に訪日外国人客向けの「Welcome Suica Mobile」(iOS)サービスを開始する。 日本入国前にアプリのダウンロードやSFチャージを可能とし(各国の法規制により一部機能が制限されるケースがある)、成田及び羽田空港からJR線や東京モノレール他の鉄道各線をシームレスに利用できる。
さらに2025年秋には「JR東日本の新幹線eチケット」や「在来線特急のチケットレスサービス」を、2026年春には中央線をはじめとした普通列車グリーン車もこのアプリから簡単に利用できるようグレードアップする。
将来的にはセンターサーバー化により、訪日外国人客にもウォークスルー改札や同社全線でのSuicaの利用が当たり前にできるようになり、更なる利便性の向上を行っていく。
他交通事業者へのSuicaサービスの提供
2024年11月にモバイルSuicaにて新たに開始した「東京モノレール区間の定期券(通勤定期券)」と同様に他交通事業者の定期券発売サービスを行っていく。2026年春頃には通学定期券への拡大も行っていく。
他交通事業者と協調、共生を行い、社会における持続可能な交通系IC乗車券システムの実現に貢献していく。そのためにセンターサーバー化によりSuicaサービスを共通プラットフォームとして構築し、他交通事業者のシステム導入や更新時におけるコストを抑え、ニーズに応じて利用できるようにしていく。
将来的にはこれらのSuicaサービスを、モビリティを含めたTOD・スマートシティ開発の1つの機能として位置づけ、海外マーケットへの拡大を目指す。