「僕自身ここまでわからなくなるとは思わなかった」
昨季コンパクトなスイングにスタイルチェンジしてオールスター明け打率.362をマークし、今季は“代走の切り札”からの脱却、レギュラー定着が期待された中で、ロッテ・和田康士朗は出場試合数こそ昨季よりも8試合増え88試合に出場したが、打率.150、打席数も前年を下回った。
わからなくなった部分について「打ち方というんですかね、打ち出した部分で去年の後半から変えた部分があったんですけど、それを継続してやっていましたが、自分の中でそれをやり過ぎてしまったというか、やり過ぎてしまったプラス、それで打てていたので、それをずっとやって余計におかしくなってしまった感じですね」と振り返る。
◆ オープン戦から状態上がらず
昨年のシーズン終了後時点で「いろいろなものをやっていけということで、いろいろなものをやっていて、シーズン後半はしっかり数字もしっかり出て結果を残せたんじゃないかなと思います」と手応えを掴みつつも、「それをどれだけ続けられるかというのが、今後の課題としてありますね」と“継続性”を課題に挙げていた。
年が明けて、昨季後半の打撃について「あの時はいろいろ変えたりしていましたけど、あの期間だけ変えてそれが良かったのか、ただ調子が良かったのかわからないので、しっかりキャンプで去年の後半のバッティングを継続しつつ、色々また変えていけたらと思います」と現状に満足せず、進化していくことを誓った。
“去年の後半のバッティングを継続しつつ、色々また変えていけたら”という部分について改めて、オープン戦の期間中に訊くと、「色々試して、ダメな時もあったんですけど、それはそれで新しい発見ができたので、色々試しながらやっているところですね」と試行錯誤。オープン戦での打率は.045だった。
昨季は開幕を二軍で迎え、ファームで打席数を多く確保していたが、今季は開幕一軍スタートも主に代走・守備固めでの出場がメインとなった。限られた打席の中で結果が求められ、今季初安打は代走から途中出場した5月4日の楽天戦。「オープン戦からあんまり調子が良くなくて、ここまで続いてしまった。色々打席数少ないですけど、試しながらやっています」。
具体的に試していることについて和田は「去年良かった感じで行ってたんですけど、それがちょっと噛み合わなくなって調子を崩したというのがあった。その中で色々去年だけの打ち方に頼ってちゃいけないので、また色々探りながら、まだまだ試し中ですけど」と5月6日の取材で教えてくれた。
「一時期うまくいかなくて、何も考えず思いっきり振ってみようという期間もあったりしたんですけど、今は落ち着いてライナーを打とうかなと思っています」と、昨季から取り組む“ライナー性”を意識した打撃を継続。
また、この時期タイミングの取り方を変えているようにも見えた。「タイミング、色々考えすぎてわからなくなってしまったので、1回何も考えずにリセットして、とりあえず思いっきり振ろうという期間を自分で作ったりした。今は固まってきて、また考えながらライナーを打っているという感じですね」。
5月24日のソフトバンク戦の試合前練習では、「逆方向に打ったり、それだとちょっとスイングが小さくなる時があるので、その時は何も考えず振ったりしています」と、ライナー性の打球というよりは、センターからライト方向に引っ張った打球が多かった。
試行錯誤した中で、『9番・右翼』でスタメン出場した5月31日の阪神戦では「ここまで全然打てていなかったので、ここからしっかりチームの勝利に貢献できるバッティングをしていきたい」と、2-1の4回二死一、二塁の第2打席、青柳晃洋が2ボール1ストライクから投じた4球目のストレートをライト前に適時打。
同日の阪神戦1安打1打点2四球1犠打とこれをきっかけに復調していくかと思われたが、6月は12試合・6打席に立って0安打。それでも7月に入り、代走から途中出場した10日の楽天戦で左安、12日のオリックス戦では、足のあげ方が小さめのフォームで追い込まれてからノーステップ気味に打ち、1-0の7回二死走者なしの2打席目に、曽谷龍平が3ボール2ストライクから投じた6球目の149キロストレートをノーステップ打法でレフト前に安打を放った。この安打に本人は「追い込まれてから詰まりながら、ショートの頭を超えていくというのは、練習している打球だったのかなと思います」と納得のバッティング。
オールスター明けの7月28日の楽天戦では『9番・左翼』でスタメン出場し、0-0の4回二死満塁の第2打席、「種市が頑張っているのでなんとか先制点をと思い打ちに行きました。ランナーを返すことが出来て良かった」と荘司康誠が1ボール2ストライクから投じた5球目のスプリットをライト前に2点適時打。
さらに3-0の5回二死満塁の第3打席、「1本出たんで少し楽な気持ちで打席に入ることが出来ました。いい結果に繋がって良かったです」と弓削隼人が1ボール2ストライクから投じた4球目のストレートを詰まりながらもレフトへ弾き返す2打席連続となる2点適時打を放った。
6-7の7回一死一、三塁の第3打席は、酒居知史が投じた初球のストレートにファーストへセーフティスクイズ。この日は2安打5打点の大暴れ。昨季のようなオールスター明けの活躍に期待が膨らんだが、8月は月間打率.077。同月23日のオリックス戦では、「追い込まれると三振をあまりしないほうがいいタイプなので、その中でどれだけミート率を上げられるかとなったら、今はノーステップの方かなと思います」と、追い込まれてからノーステップ打法を試していた。
9月に入ってからは「終盤は色々変えながらという感じだったので、どれがいいかなという感じでやっていたので」と、11日のオリックス戦で初球からバットを短く持ったり、打撃フォームを色々と変えたが結果に繋がらず。
去年は開幕ファームスタートで打席に多く立てたが、今季は開幕一軍も代走、守備固めでの出場が多く、打席数が少なかった。その辺りも打てなかった原因なのだろうかーー。
「修正するには打席が必要だと思うんですけど、それを言ったら言い訳になってしまうので、打てなくても一軍に入れてるというのは自分の役割が一番だと思う。そこは打席数がと言い訳をせずに自分のバッティングを見つめ直したいなと思います」。
◆ 秋季練習ではセンターから逆方向を徹底意識
シーズン終了後に行われた秋季練習ではチームとして取り組む、センターから逆方向の打撃を徹底した。これまでもセンターから逆方向の意識で打ってきたが、「それプラス、インコースに厳しい球が来ても引っ張るのではなく、内側を叩いて逆方向を意識していますね」とバットを振った。
ロングティーでは「最初は全然飛んでいなかったですけど、だんだんやっていくうちに飛ばし方というのがちょっとずつわかってきたのかなと思います」と何度もスタンドインさせていた。
「去年色々数多くやって、今年はサードが前目であったり、警戒されているのがあった。サードが前にきた分、ヒットの確率が上がるということなので、色々試しながらですね」と今季は三塁方向のセーフティバントが減り、バント安打も去年の5本から今季は1本に減った。
10月19日の秋季練習で、金子誠コーチから一塁方向のセーフティバントについてアドバイスを受けていた。その内容について和田に聞くと、「ピッチャーとファーストの間を狙ってということを言われました」とのことだ。この秋は重点的に一塁側のセーフティバントの練習を行った。三塁側だけでなく、一塁側にもセーフティバントを決められるようになれば、大きな武器となりそうだ。
今季は30盗塁を目標に掲げながら、代走での出場が多かったこともあり11盗塁。「数は多ければ多いほど良いですけど、その分走ったらアウトもついてくる。代走で行って一番ダメなのはアウトになることなので、今年は盗塁死がなかったのは良かったかなと思います」。
来季30盗塁するために必要なことについて「代走では無理な数字。盗塁数を掲げるのであれば、バッティングを磨くしかないのかなと思います。打てないと出られないので、バッティングが一番かなと思います」とキッパリ。
「打ち続ける難しさを感じたので、それをしっかり来年活かせたらなと思います」と話し、「一番はバッティングを磨いていくこと。しっかりバッティングの時間を増やしたいと思います」と宣言。レギュラーを掴むには打つしかない。来季こそ、“代走の切り札”から卒業したい。
取材・文=岩下雄太