大学教授は、専門的な研究や学生の教育、さらには大学の運営にも関わる重要な職業です。多くの経験とキャリアを積み重ねた結果、たどり着けるポジションということでその分収入も高いイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。
実際に大学教授の年収はどのような状況にあるのでしょうか。本記事では厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をもとに、大学教授の平均年収を詳しく見ていきます。
※本記事の教授、准教授、講師とも、すべて大学のほか高専に従事する人も含みます
◆大学教授の平均年収は男女ともに1000万円以上!
初めに、大学教授の平均年収を見てみましょう。
令和5年(最新)の「賃金構造基本統計調査」によると、大学教授の平均年収は1074万7100円でした。男女別に見てみると、男性が1085万円5700円で、女性が1036万4000円となっており男女差はほとんどない印象です。
一方で、労働者数を見ると男性が5万1570人であるのに対して、女性は1万4620人となっており、女性の大学教授は全体の約22%にとどまっていることがわかります。
◆大学教授の年収は、直近7年間でどう推移している?
次に、平成29年~令和5年の大学教授の年収の推移を見てみましょう。
直近7年間は、多少の変動があるもののほとんど横ばいとなっています。ここ数年の年収に大きな変動がないことや、年収1000万円以上の高水準を維持していることから安定した職業といえそうです。
◆大学教授の年収は、40代で1000万円超え
次に、年代別に大学教授の労働者数と年収を見てみましょう。
一般的に大学教授の職位に就くのは50代、早くとも40代といわれています。
統計データによると、年代別の労働者数は、上位から「60~64歳」、「55~59歳」、「50~54歳」と並び、これらの年代で全体の約75%を占めるという結果になっています。
年収で見てみると20代のうちに400万円を超えており、その後は5年ごとに100万円ずつ上昇して40代では1000万円近くに上ります。それ以降も1000万円以上を維持して「60~64歳」にピークを迎え、緩やかに下降するものの70代でも700万円台を維持している傾向です。
上で述べたように、50~64歳が大学教授のボリュームゾーンですが、この年代の平均年収の高さが大学教授全体の平均年収の高さに直結しているといえそうです。
◆教授、准教授、講師で年収はどれくらい違う?
大学教授は、博士課程を修了した後、講師や助教、准教授といったポジションを経て就くのが一般的です。そこで、職位別に年収を比較してみましょう。
同統計によると、「教授」は約1074万円、「准教授」は約862万円、「大学講師・助教」は約692万円となっています。このように見ると、職位ごとで平均年収に比較的大きな差があることが分かります。
◆国立大学・公立大学・私立大学と区分が違っても年収はほとんど変わらない
また、大学といっても国立、公立、私立がありますが、それぞれで大学教授の年収に差はあるのでしょうか。
これは「賃金構造基本統計調査」ではわからないため、文部科学省の「令和4年度学校教員統計調査」からわかる平均給与月額で比較してみましょう。
これによると、大学教授の平均月額給与は「国立大学」が53万円、「公立大学」が54万円、「私立大学」が57万円となっており、大きな開きはありませんでした。
国公立大学に比べて私立大学のほうがわずかに給与が高いですが、いずれも大学教授は等しく給与が高めであることがわかります。
◆大学教授は、平均年齢とともに平均年収も高め
最後に、大学教授の年収と「民営事業所(給与所得者)の全体」の年収を比較してみましょう。
冒頭で述べたように、大学教授の平均年収は約1074万円で男女差はほとんどありません。
一方で、民営事業所(給与所得者)の全体の年収は約507万円で、男女別に見ると男性は約570万円、女性は約400万円となっており男女差がある印象です。正社員のみに限っても年収は約545万円となっており、あらためて大学教授の年収が非常に高い水準にあることを示す結果となっています。
ただし、大学教授は平均年齢が高いため、単純比較できないという点は注意が必要です。
大学教授は、民営事業所(給与所得者)全体の平均年収よりも多くの収入が得られることがわかりました。一方で、大学教授になるには博士号を取得した後も多くのキャリアや経験を積まなければならず、またポストも限られているため、相当な時間や労力が必要となるでしょう。
そうした点を踏まえると、大学教授の年収の高さも納得の結果といえるかもしれません。
(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)
文=All About 編集部