2024年12月8日、日本将棋連盟と阪神甲子園球場の100周年を祝う記念コラボイベントとして行われた「100周年記念対局」で、藤井聡太七冠と羽生善治九段が対局。激戦の結果、120手で羽生九段が勝利しました。
序盤から激しい攻防が繰り広げられる
対局は先手、藤井七冠の角換わり選択から始まりました。藤井七冠は得意とする形を目指しつつも、序盤から早繰り銀で攻め立てる積極的な駒運びを見せました。一方、羽生九段もこれに応じ、8筋から鋭い指し手で先手陣にプレッシャーをかけ、序盤から盛大な殴り合いが展開されました。
中盤に入ると、藤井七冠が角で、後手の銀、飛車、香車を一気に貫こうとする攻めを見せます。後手は9筋に飛車を避難させ角のラインを外します。この時点でAIの評価値は先手優勢、後手の羽生九段は苦戦を強いられているように見えていました。
攻防に利く後手角が局面をひっくり返す
先手は相手陣深く7筋に毒矢のような歩を打ちます。これを飛車でとると先手角の成りこみを許すことになってしまいますが、ここで後手はまさに羽生マジックともいえる攻防の角を9筋に打ちます。ここから後手を攻めていたはずの先手角は逆に狙われる対象となり、盤上で追い回される展開に。
先手の必死の反撃で後手玉は守り駒から離れてポツンと裸の状態となりますが、後手は落ち着いて玉を中段に浮かしてかわします。そして先手玉の前に馬を進撃させ、さらに細かく歩を突いて先手の守り駒を分解。そしてもう一枚の角を打ち込み、先手陣を崩壊させます。
毒饅頭にも動じず、120手で羽生九段が勝利
さらに藤井七冠は必死のねばりを見せ、後手陣に毒饅頭を打ち込みますが、それで揺らぐ羽生九段ではありませんでした。相手玉の息の根を止める桂馬を打ち、数手の後に藤井七冠が投了を告げました。
勝利した羽生善治九段は、「日本将棋連盟と阪神甲子園球場がともに100周年ということで、藤井さんからお祝いをいただいたような感じ」とコメント。一方の藤井七冠は、「100年に一度の対局ということで大変緊張した。積極的に指したが羽生九段にうまく切り返された」と対局を振り返りました。
解説を務めた谷川浩司17世名人と久保利明九段は、この一局を絶賛。藤井七冠と羽生九段の対局は、100周年を祝う対局にふさわしい将棋の奥深さを再認識させるものとなり、多くの人々の記憶に刻まれる名局となりました。