逆転ゴールを決めたのは腕章を巻くエンソ・フェルナンデス [写真]=Getty Images

 プレミアリーグ第15節が8日に行われ、トッテナムとチェルシーが対戦した。

 今季のトッテナムは9月末から10月頭にかけて公式戦5連勝を飾ったこともあるが、調子の上がらない前半戦を過ごしており、前節終了時点でのプレミアリーグにおける成績は6勝2分6敗。勝ち点「20」の獲得で2桁順位に沈んでおり、現在はヨーロッパリーグ(EL)も含めた公式戦で3戦未勝利。現地報道ではアンジェ・ポステコグルー監督の去就も騒がれるなか、これ以上の躓きは許されない。

 対するチェルシーは、エンツォ・マレスカ新監督の下、充実のシーズン前半戦を過ごしている。前節終了時点での成績は8勝4分2敗で、勝ち点「25」を積み上げている。順位は2位につけるだけでなく、現在はカンファレンスリーグ(ECL)も含めた公式戦で4連勝中。間違いなく好調のなか、今節は『トッテナム・ホットスパー・スタジアム』で、同じロンドンに本拠地を置くライバルの撃破を目論む。

 トッテナムにとって朗報となったのは、足首の負傷により戦線を離れていたクリスティアン・ロメロと、ハムストリングのケガで離脱していたミッキー・ファン・デ・フェンの復帰だろう。“守備の要”と呼べる2人が、今節はスタートからセンターバックでコンビを組む。一方のチェルシーは、前節サウサンプトン戦はターンオーバーを実施しながら5-1で勝利しており、中3日の今節は7名を変更。レヴィ・コルウィルやニコラス・ジャクソンらの主力が先発に戻ってきた。

 試合は序盤の5分、意外な形で均衡が破れる。チェルシーがピッチ中央付近でボールを繋ぐなか、左サイドでパスを受けたマルク・ククレジャが足を滑らせる。この隙を逃さなかったブレナン・ジョンソンがボールを奪い、右サイドを突破。グラウンダーのクロスボールをニアサイドへ飛び込んだドミニク・ソランケがダイレクトで仕留め、トッテナムが先手を取った。

 さらに11分、今度は自陣左サイドでのパス回しのなかでククレジャがまたもスリップ。B・ジョンソン、ペドロ・ポロと繋いで、ボックス右のデヤン・クルゼフスキにボールが渡ると、カットインから左足を振り抜く。ロメオ・ラヴィアの股下を通した一撃をニアサイドに突き刺し、トッテナムが早くも2点をリード。2度のスリップという不幸に見舞われたククレジャは、このタイミングでスパイクを履き替えた。

 幸先の良いスタートを切ったホームチームだったが、直後にはアクシデントが発生。ロメロがどこかのプレーで足を痛めていた模様で、15分にピッチ内へ倒れ込んで交代を要求。急きょラドゥ・ドラグシンと交代し、ロメロは復帰戦でわずか15分間の出場でピッチを後にした。

 この直後、チェルシーが反撃をスタート。17分、ラヴィア、ククレジャを経由して敵陣左サイドでボールを受けたジェイドン・サンチョが細かいタッチのドリブルでカットインし、右足で強烈なミドルシュート。狙い澄ました一撃をファーサイドに沈め、チェルシーが1点を返す。サンチョは前節サウサンプトン戦に続いて2試合連続ゴールを記録した。

 このゴールをきっかけに、試合の流れはチェルシーに傾く。“らしい”ビルドアップから多彩な攻撃を繰り出し、トッテナムを追い詰めていく。31分には敵陣中央のスペースでラヴィアからの斜めのパスを引き出したコール・パーマーが前を向き、左足でミドルシュートを放ったが、ここはGKフレイザー・フォースターが右手で弾き出す。こぼれ球に詰めていたペドロ・ネトは切り返しから左足を振ったが、またもGKフォースターが立ちはだかった。

 34分にはセットプレーでホームチームがゴールを脅かす。ソン・フンミンの蹴った右コーナーキックがパペ・マタル・サールの頭にピタリと合ったが、ヘディングシュートはクロスバーに嫌われる。直後には敵陣中央で縦パスを引っ掛けたところからショートカウンターへ転じ、ソン・フンミンのボックス左からの折り返しをソランケが合わせたが、シュートはジャストミートせずにGKロベルト・サンチェスの正面。両チーム多くの決定機を作り出すスリリングな前半は、トッテナムの1点リードで終了した。

 後半に入ると、チェルシーはラヴィアが交代を強いられ、マロ・ギュストを投入しモイセス・カイセドを右サイドバックから中盤へ上げる。前半から効いていたラヴィアの不在は大きな痛手になるかと思われたが、前半の半ば以降と同様に、後半も立ち上がりからチェルシーが試合を支配。保持の時間を増やし、サンチョ、ジャクソンらが次々にゴールへ迫っていく。

 チェルシーのペースで時計の針が進むと、59分には敵陣でのボール回収からサンチョが左サイドでボールをキープし、相手選手複数名を引き付けてスペースにパスを通すと、ボックス内へ入っていったカイセドがイヴ・ビスマに倒される。アンソニー・テイラー主審は迷わずペナルティスポットを指差し、チェルシーにPKが与えられた。キッカーを務めたパーマーはGKフォースターとの駆け引きを制し、逆を突いてゴール左下にシュートを沈める。遂にチェルシーが試合を振り出しに戻した。

 ホームチームは後半、シュートまで持ち込むシーンを作れていなかったが、68分には決定機を構築。左サイド低い位置で起点を作ったソン・フンミンから、ソランケのポストプレーを挟んで、デスティニー・ウドギーを追い越したソン・フンミンが再びボールを持つ。フリーでペナルティエリア左に持ち運ぶと、角度のある位置から右足で狙ったが、シュートは枠を捉えきれない。

 トッテナムが後半最大のビッグチャンスを逃すと、チェルシーが再び牙を剥いた。73分、敵陣右サイド大外でP・ネトからのパスを引き出したパーマーが、見事なターンでウドギーを抜き去ると、切り返しから前を向いて左足を振り抜く。このシュートはブロックされたものの、こぼれ球を狙っていたエンソ・フェルナンデスが左足一閃。狙い澄ました一撃でニアサイドを射抜き、チェルシーが逆転に成功した。

 2点リードからまさかの逆転を許したトッテナムは、78分にファン・デ・フェンまでもが再負傷。追い込まれたチームは83分、パーマーに対して厳しく寄せたサールがPKを献上する。チェルシーがこの日2度目のPKを獲得すると、キッカーのパーマーはGKフォースターを嘲笑うかの如くクッキアイオ。“エース”の一発で、勝敗は決した。

 後半アディショナルタイムにはコーナーキックの流れからソン・フンミンが1点を返したものの、トッテナムの反撃はここまで。勝利したチェルシーは今季2度目の公式戦5連勝を達成し、無敗の試合数を「8」まで伸ばしている。一方のトッテナムは、ホームで痛すぎる逆転負けを喫し、公式戦4戦未勝利。プレミアリーグで今季2度目の連敗を喫した。

 この後、両チームはミッドウィークの12日ににヨーロッパの戦いが控えている。トッテナムはEL・リーグフェーズ第6節でレンジャーズと、チェルシーはECL・リーグフェーズ第5節でアスタナと、ともに敵地で対戦する。

【スコア】
トッテナム 3-4 チェルシー

【得点者】
1-0 5分 ドミニク・ソランケ(トッテナム)
2-0 11分 デヤン・クルゼフスキ(トッテナム)
2-1 17分 ジェイドン・サンチョ(チェルシー)
2-2 61分 コール・パーマー(PK/チェルシー)
2-3 73分 エンソ・フェルナンデス(チェルシー)
2-4 84分 コール・パーマー(PK/チェルシー)
3-4 90+6分 ソン・フンミン(トッテナム)

【ゴール動画】チェルシーが鮮やかな逆転劇