野村総合研究所はこのほど、国内12業界の主要企業による1年間のポイント・マイレージ発行量を金額換算した「年間最少発行額」について、2023年度までの実績推計および2028年度までの予測を行った。

2023年度の民間発行額は1兆2,887億円で、前年度から約4%の増加

2023年度の民間部門における発行額(以下「民間発行額」)は、2022年度の1兆2,342億円から約4%増加し、1兆2,887億円と推計された。また、行政主体のポイント発行もあり、官民合わせると発行額は1兆5,660億円と推計されている。

2022年度から民間発行額が増加した主な要因は、キャッシュレス決済の拡大と航空需要の回復。「キャッシュレス決済」によるポイントの2023年度の発行額は6,541億円で、2022年度から約15%(840億円)増加している。これは、新型コロナウイルス感染症の流行に端を発する「新しい生活様式」への対応や、マイナポイント事業によるキャッシュレス決済の普及推進などの影響が大きいと考えられる。また、「航空」業界も新型コロナウイルス感染症による行動自粛からの需要回復が続いており、ポイント発行額で見ると2022年度比で約31%増加している。

  • 国内におけるポイント・マイレージの年間最少発行額の実績値(推計)と予測値

  • 国内12業界別 2023年度のポイント・マイレージ年間最少発行額と算出の根拠

2023年度の行政主体の発行額は2,773億円に上る

2023年度は、「マイナポイント事業」によって2,773億円相当のポイントが行政により発行された。マイナポイント事業は2020年6月から2023年9月まで続いた施策で、1人当たり最大で2万円相当のポイントが付与された。この間、合計で1.3兆円超相当のポイントが発行されたと推計され、その規模は単年度の民間のポイント発行額とほぼ同等。「個別自治体が行うマイナポイント事業」など、行政の施策にポイントを活用する動きは続いているが、現時点でキャッシュレスポイント還元事業やマイナポイント事業と同規模の政策は発表されていない。

今後も、クレジットカードの決済ポイント特約店の拡大とキャッシュレス決済の発行額増加が予想される

経済活動に伴って発行されるポイントは、キャッシュレス決済の利用によって付与される「決済ポイント(本推計ではキャッシュレス決済による発行額に計上)」とポイントサービスを提供している店舗・非決済サービスの利用で付与される「購買ポイント」の2種類に大別できる。

「決済ポイント」に関して、ポイント付与率が通常よりも高い「決済ポイント特約店」を設けているケースがあり、昨今はクレジットカード会社によるその取り組みが活発化している。具体的には、三井住友カードは2024年10月より、セブン-イレブンでスマートフォンによるタッチ決済を利用した際のポイント還元率を、従来の最大7%相当から最大10%相当に引き上げている。また、三菱UFJニコスは、2024年8月よりくら寿司・オーケー・東武ストアなどを決済特約店に追加し、最大で5.5%相当のポイントを付与している。これらの取り組みの主な目的は、「少額決済におけるクレジットカードの利用拡大」や「クレジットカードのタッチ決済普及促進」。少額決済領域では、現状、コード決済が主流であること、また、クレジットカードのタッチ決済については、公共交通機関への導入など今後も利用シーンの拡大が期待されることから、クレジットカード会社による同様の取り組みが今後拡大すると考えられる。

これらのクレジットカード会社の取り組みに加えて、EC・フードデリバリー・動画配信などのオンラインサービスの利用拡大に伴うキャッシュレス決済も増えている。また、日本政府もキャッシュレス決済比率80%を将来的な目標として取り組みを進めていることから、今後もキャッシュレス決済の取扱高とそれに伴う発行額は増加することが見込まれる。また、12業界の民間発行額合計は2028年度に1兆6,000億円を突破することが予想される。