パーソル総合研究所は12月4日、「更年期の仕事と健康に関する定量調査」の結果を発表した。調査は2024年7月24日~8月8日、25~64歳の正社員男女2,000人と、軽度レベル以上の更年期障害がある40~50代の正社員1,500人(女性1,000人、男性500人)、女性上司50人を対象にインターネットで行われた。
更年期症状、男性は重度レベルでも7割弱が自覚なし
40・50代正社員の4割前後が軽度レベル以上の更年期症状を保有している。ただし、症状には個人差が大きい。女性の1割弱が要長期治療レベル、男性の1割弱が重度レベルに分類される。
女性においては、要長期治療レベルでも4割強が更年期症状であることを自覚しておらず、男性においては、重度レベルでも7割弱が更年期症状であることを自覚していないことがわかった。
更年期症状がある時の生産性は平均すると50%前後に低下
更年期症状がある場合とない場合での生産性を比較した。男女ともに、症状があるときの生産性は、症状レベルにかかわらず平均で50%前後に低下する。ただし、同じ症状レベルであっても個人差が大きい。
更年期症状がある日の、仕事の支障になる時間は?
男女ともに、更年期症状がある日の1日あたりで仕事の支障になる時間は、症状レベルが上がるほど長い傾向が見られる。平均すると、女性では、軽度レベルで4時間弱、要長期治療レベルで5時間強。男性では、軽度レベルで3時間弱、重度レベルで5時間弱。ただし、同じ症状レベルであっても個人差が大きい。
症状レベルが高いほど、継続就業意向が低く、昇進辞退意向が高い
更年期の症状レベルが高い場合(女性の要長期治療レベル/男性の重度レベル)、会社のために自ら進んで行動しようとする自発的貢献意欲や仕事内容に対するポジティブな心理状態であるワーク・エンゲイジメントが低い傾向が見られる。一方で、症状レベルが上がるほど、昇進辞退意向が高い傾向が見られる。
また、症状レベルが高い場合(女性の要長期治療レベル/男性の重度レベル)、ジョブ・パフォーマンス(役割遂行度)や継続就業意向が低い傾向が見られる。
パフォーマンスと離職への影響
更年期女性のジョブ・パフォーマンス(役割遂行度)への影響を見ると、本人のセルフケアとしての「食事改善」、上司のラインケア(日常的なサポートや職場改善)としての「柔軟な働き方の許容」、同僚のピアサポートとしての「情報提供」が行われていると、ジョブ・パフォーマンス(役割遂行度)が高い。
上司のラインケアとして「評価の透明性(評価基準の明確な説明など)」「健康の重要性伝達」「柔軟な働き方の許容」、同僚のピアサポートとして「情緒的支援(相談にのってくれたなど)」が行われていると、更年期女性の継続就業意向が高い。一方で、職場の理解不足への認識・経験があると、継続就業意向が低い。
セルフケアと職場内支援策
更年期症状の自覚につながったきっかけとして、「家族や友人・知人の話/指摘」で自覚につながった人が多い。一方で、「事業場外の医師や専門家の話/指摘(受診時の診断、健康診断時の説明、漢方相談、カウンセリング時など)」「更年期診断チェックシートへの回答」「セルフチェックキット(ホルモン検査キットなど)」「チラシ」も自覚につながりやすいが、それらの情報に触れた人は少ない。
更年期の症状について(症状の状態やケア、治療方法、症状による働き方の調整について)、職場で上司や先輩・同僚に相談をしている女性は、症状レベルにかかわらず1~2割程度に留まる。男性と比べると、女性は、職場の先輩・同僚に相談している割合が高い。
「精神的な症状(気分の変動や集中力の低下)に対して理解が得られなかった」「症状を軽視された」といった職場の理解不足を経験した人のうち約8割が、上司や同僚にわかってもらえないと思うので相談しづらいと思っている。