文学者を主人公に据えた文芸的な大河ドラマとして放送開始時から注目を集めていた『光る君へ』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)がいよいよ最終回を迎える。第47回では、黒木華演じる源倫子が、長年うすうす感じていた夫である藤原道長とまひろの関係について言及するシーンがラストに流れた。放送がスタートしてから、常にそこはかとない深みを感じさせ、目が離せない倫子を演じた黒木が、これまでの撮影を振り返り、倫子という女性の自身の解釈を語った。
貴族界の頂点にまで上り詰めた柄本佑演じる藤原道長の嫡妻である源倫子。おおらかさと強さと不思議さを持つ倫子は、視聴者はもちろん、共演者からも「推し」として多くの支持を受けた。
そんな存在について黒木は「史実では道長を支えた後ろ盾のような役割で、内助の功じゃないですが、そういう存在だと思うんです。賢さプラス道長や自分の子供たちへの愛情など、とても懐の深いところが彼女の魅力なんだと思います」と解釈する。
一方で、道長の心にはまひろ/紫式部(吉高由里子)という思い人がいる。聡明な倫子だからこその心の動きを表現するのは難易度が高いことが想像される。黒木は「やっぱり難しかったですね」とつぶやき、「本を読んだとき、私のなかでは倫子さんは、そのあたりのことは解決できていると思っていたんです。だって自分の娘を入内させ、そこから帝が出るわけで。やれることはすべてやった。道長もそのことを感謝している。すでに乗り越えていたと思っていたなか、まひろさんに道長のことを聞くんですよね。私からすると『いつまで思っているの!』って感じがしました」と笑う。
だからこそ、あの衝撃的なシーンについて「今なんだ?」と率直に思ったという黒木。「(脚本の)大石(静)先生とはお会いしていないので、直接お話はできていないのですが、監督やプロデューサーさんからいろいろお聞きして、その言葉を頼りに演じました。でもここで言うというのが、大石先生のすごいところだなと思いました」と振り返った。
道長とまひろの関係性への複雑すぎる思い
道長にほかの女性の影を感じながらも、最後まで道長を支え続けた倫子。黒木は「多分倫子さんなりのプライドがあったのかなと思うんです」と切り出すと「正直そこまで道長とまひろが深い関係だとは感じていなかったと思うんです。だからこそ動揺するし傷ついたとは思うのですが、やっぱり嫡妻としてのメンツもあるし、道長の顔に泥を塗るようなことができないという思いだったのかなと」と倫子の芯の強さをどう表現するか、注力したという。
しかし現実は、道長だけではなく、娘である彰子もまひろに惹かれていく。「すごく寂しかったと思いますよ」と苦笑いを浮かべると「でも自分ではできないことをまひろがしてくれているというのも事実。だから余計に切ないですよね」と倫子の苦しい胸の内を慮る。
倫子の状況を「しょうがない」と語った黒木。しかもまひろは、以前倫子が「面白い子が来たな」と興味を持っていた女性だけに、余計複雑な思いが胸に去来する。
「最初にサロンに来たときは、その場の居方も分からず、かわいい子だな、面倒をみてあげなければと思っていたんですよね。でも他の子とは違い才能にあふれていて、とても面白い子。彰子の面倒を見てもらうようになってからも、頼りがいがある。聡明であり、自分にないものをたくさん持っている。でも確実に倫子よりも身分が低い。そこもいろいろ考えてしまいますよね」。