2月1日にブルペンで投球練習するロッテ・河村説人(撮影=岩下雄太)

 「一軍で投げたかったんですけど、投げられなかった。もっとやれたなというのがあります」。

 「成績的に一軍で投げることがベストだったので、それができなかった。良くないシーズンだったと思います」。

 ロッテの河村説人は今季をこのように振り返った。河村は新人の21年に4勝、2年目は2勝を挙げたが、同年9月16日に『右尺骨神経前方移行術および右肘内側側副靭帯補強術』。昨季はレギュラーシーズン中の一、二軍登板が叶わず、同年10月10日に行われたみやざきフェニックス・リーグのKBO選抜1で実戦復帰。

 支配下選手から育成選手で再出発となった今季に向けたシーズンオフの自主トレでは「フェニックスもまだ全然強い球を投げられていなかったので、もう一つ肘が良くなるように、ということだけですね。肘のことだけ考えていました」と肘の状態を上げることに集中した。

 石垣島春季キャンプでは初日となった2月1日にブルペン入りし、「本当に順調で、久しぶりに気持ちよく投げられています」と捕手を座らせて投げ込みを行った。

 3月19日の巨人との二軍戦で今季初登板を果たし、1回、2安打、無失点に抑えると、今季2度目の公式戦登板となった3月30日の日本ハムとの二軍戦では、3-1の7回に登板し、1イニングをわずか9球、今川優馬から空振り三振を奪うなど、1回をパーフェクトリリーフ。特に今川から空振り三振を奪ったスライダーは、ストライクゾーンからボールゾーンに落ちる良いスライダーだった。本人も「この前の試合からスライダーがなんとなく強くなってきた感じがありました」と好感触を得た。

 ストレートの強さについて「キャンプの方がやや強かったなと思うんですけど、最近また良くなってきたと思います」と手応え。スピードに関しても、「まだ40前半くらいしか出ていないので、遅くても40後半は投げたいなと。そこを目指してやっています」とのことで、140キロ後半のストレートを投げるため、「体の使い方だったり、腕のコンディションを整えてというのが一番かなと思います」と語った。

 河村、最大の武器であるフォークについては、「フォークは変わらずなんですけど、球速がないと振られないので、そこをやっぱり球速とセットで良くなってくると思います」と自身の見解を述べた。

 河村は4月28日のオイシックス戦で今季初先発し4イニングを投げると、6月26日の楽天二軍戦で復帰後初の5イニングを投げ、7月9日の日本ハム二軍戦で復帰後最多の105球を投げた。7月31日に支配下選手に復帰。支配下復帰後、一軍登板は叶わなかったが、今季はファームで20試合・45回2/3を投げ、2勝2敗、防御率4.53の成績を残した。

 シーズン終了後に行われたみやざきフェニックスリーグの斗山戦、2-1の9回先頭の左のカン・ドンヒョンを2ストライクから見逃し三振に仕留めた外角のストレートは角度のついた良い球だった。

 フェニックスリーグを通して、「最後の宮崎の登板で147キロが出て、だいぶ力強さがあった。それまでが40中盤ぐらいでうろちょろしていたので、やっと最後の最後でいい感覚を掴めたかなと思います。宮﨑通して全体的によかった。来年に向けては良いフェニックスリーグになったのかなと思います」とストレートに手応えを掴み終え、来季に向けて明るい材料だ。

 右肘手術を経て、河村は手術前の姿に戻ろうとしているのか、それとも新しい形を作ろうとしているのかーー。

 「新しい形、より成長したいなと思ってやっています。手術前と球速自体はそこまで変わらないので、それでも打たれているかなというのがあるので、もう少し球速を上げて力強いピッチングができたらいいなと思っています」。

 ZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習では「上半身の筋肉をつけたいなというのと、来年1年間やれるような体力作りをしたい」と体づくりに着手。“上半身の筋肉をつけたい”のは、ストレートのスピードアップのために必要なのだろうかーー。

 「そうですね。怪我の防止もそうですし、スピードも上げたいというのもそうです」。

 来季は「一軍で1年間投げられるようにしたいです」と、3年ぶりに一軍のマウンドに上がるつもりだ。「先発であれば良いピッチャーがたくさんいるので、そのピッチャーたちよりも結果を残さないといけないというのがありますし、球速ももう少し上げていきたいところではあります」。前回一軍で登板した時は、コロナ禍で応援制限があった。熱いマリーンズファンの応援を背中に受け、ZOZOマリンスタジアムのマウンドに立ちたい。

取材・文=岩下雄太