◆「老後破産」しやすい人の特徴をFP畠中さんが解説
“老後資金は、最低でも3000万円必要”――。そんな定説が語られていますが、必要な額は人によってさまざま。老後を考えるには、まず自分にとっての必要額をざっくり見積もることが大事です。
ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに、「老後破産」しやすい人の特徴を解説いただきました。
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――“まとまった老後資金が貯められそうもない”と不安に陥る人にとって、「老後破産」は現実味を帯びた言葉となっています。実際、「老後破産」しやすい人には、どういった特徴があるのでしょうか?
畠中雅子さん:まず、「3000万円以上の貯金がないから老後破産する」ということではありません。逆に、3000万円から5000万円くらいの貯金は、ちょっとのミスでお金が底をつくということもあり得ます。子どもや孫にどんどんと使ってしまう人などはその典型ですね。
逆に、老後資金はそんなに貯まっていなくても何とかなる人は、柔軟に老後を考えられる人です。コンパクトな暮らしに移行するには、これまでと価値観を変える必要がありますが、こだわりが強すぎると難しい。
住む場所にしても、“この家以外絶対にダメ”とか“介護は絶対家じゃないと”など譲れないことが多い人は、お金があっても駄目になることもあります。
――「老後破産」を避けるには、柔軟性をもって現実に対応していく力が必要だということですね。そのほか、踏まえておくべきスキルがあれば教えてください。
畠中さん:自分に合った情報を集めるスキルも欠かせません。料理ができない人が良い素材ばかりを集めたところで宝の持ち腐れになるのと同じで、自分の力量に見合った情報をキャッチする。
今はインターネットでいくらでも情報が得られる便利な社会ですが、だからこそ情報の海で溺れている人も少なくありません。
とにかくたくさんの情報を持ってきたものの、逆にどうしたらいいか分からなくなってしまうというのは、特に若い方に多くみられます。自分に必要な情報を的確に取りにいくという能力は、特に老後には重要です。
◆どう暮らしたいか、どこまで許容できるのかを決めておく
――“一般的な例”ではなく、“自分に見合った情報”をキャッチするスキルを身に付ける。そのためには、自分の状況をしっかり把握して、どんな風に暮らしていきたいかをイメージしておかなくてはいけませんね。
畠中さん:だからこそ、まずは自分の暮らしで“いくら赤字が発生するのか”を算出しておくことが大事なんですね。そして、どう暮らしたいか、自分はどこまで許容できるのかを決めておく。そうなれば取捨選択もしやすいですし、持っているお金が少なくてもなんとかなるケースが多いんです。
どうしたいのか選べないという人は、“どっちが嫌か”で考える。人は「どっちがいいですか?」と聞くと決めきれないけれど、「どっちが嫌ですか?」と聞くとすんなりと決められるものです。
――今後、さらなる高齢化社会が進み、生涯未婚者も増えていくといわれます。“超高齢化社会&おひとりさま増加”で、時代のニーズに合ったサービスも出てくるでしょうか。
畠中さん:もちろんそう思いますよ。いつの時代も、その時代背景に合った現実的なサービスが生まれています。
例えば、私が初めて高齢者施設の見学を行ったのは、20年前の2002年です。当時は、入居費用が高額で家を売らないと入りにくかったのですが、今は入居一時金ゼロのプランを提示しなければいけないことになっているので(東京は例外規定)、家を売らなくても入れるところだらけに変わっています。
さらに数十年後には、その時代に生きる人に合わせた価格帯に変わってくるでしょうね。ですから、今の制度だけで全てを考えて不安になりすぎないことです。
葬儀にしても、ずいぶん変わりました。一般的な葬式代は平均200万円弱といわれていますが、なかなか準備できない人もいます。
例えば、少額短期保険会社なら、自分の葬儀まで行ってくれる契約が可能ですし、金額に応じた葬儀をしてくれる。こうしたサービスなども知っておくと、おひとりさまで老後を迎えるにしても安心ですよね。
自分がどう生きたいのか、そしてどういう最期を迎えたいのかまでイメージして調べておけば、かかるお金も分かるし、必要なお金も分かります。
教えてくれたのは……畠中雅子さん
ファイナンシャル・プランナー。大学時代からフリーライターとして活動し、出産後にマネー分野を専門とするライターとなりFP資格を取得。新聞・雑誌・WEBなどに多数執筆するとともに、セミナー講師、講演などを行う。「教育資金作り」「生活設計アドバイス」「住宅ローンの賢い借り方、返し方」「オトクな生命保険の入り方と見直し方」などのテーマを得意としている。
取材・文/西尾英子
文=あるじゃん 編集部