デパートの歴史をたどる特別展「La Saga des grands magasins」がパリで開催中

デパートの屋上にあった小さな遊園地や、最上階のレストラン街で食べたお子様ランチ。多くの人にとって、デパートにはさまざまな思い出があるのではないだろうか。そんなデパートの歴史をたどる特別展 「La Saga des grands magasins - デパートの壮大な物語」 が開催されている。パリのデパートの歴史を味わえる展示で、会場はエッフェル塔を一望できることで有名なトロカデロにあるシテ建築遺産博物館だ。

【画像】デパートの歴史をたどりながら、ファッションやビジネスの変遷を知ることができる特別な展覧会(写真22点)

パリで最も古いデパートは Le Bon Marché(ル・ボン・マルシェ)。1838年創業で、これはパリだけでなく世界で最初のデパートとされている。Le Printemps(ル・プランタン) は、かつて日本にも店舗があったことで知られ、1865年に創業。この特別展は2部構成で、第一部では1850年代から1930年までが展示され、今回はその続編として1930年代から1980年代までを取り上げている。午後には入場制限がかかるほどの人気ぶりだ。この時代を生きた世代にとって、デパートの展示は懐かしさを誘い、多くの来場者を集めている。

子どもの頃、デパートは「夢を売る店」という特別な存在だった。ファッションの中心地でもあったその役割はフランスでも変わらない。当時のデパートの広告やプロモーションを見ると、その時代ごとの流行やファッションの移り変わりを感じられる。

展示では、今は存在しない、デパートの入口にあった手すりやパーツが展示されており、それを見て昔通った日々を思い出す来場者も多かった。1930年代のマネキンは蝋人形で作られ、非常に精巧な作りだった。当時の店内では、冷房のない夏に配られていた扇子やうちわも展示されており、それぞれのデパートのイメージに合った美しい装飾が施されている。

当時のデパートでの服装といえば、ほとんどがオーダーメイド。レディメイドの服も好みに応じて調整が可能だった。展示では当時の生地見本やボタン、バックルなどの装飾品も紹介されており、個性的なデザインが顧客に提供されていたことが伺える。1960年代以降、ファッションは徐々に変貌を遂げ、当時のドレスなどを通じてその移り変わりを垣間見ることができる。

また、顧客からの質問に対する回答やサービスマニュアルなど、貴重な資料も展示されている。これらには、気の利いた、いわゆるフランスらしい「エスプリ」が感じられる対応が記されていた。売り手も顧客も対等であるという精神が込められたサービスは、現在のフランスでは想像もできないと感じた。

僕自身はフランスの昔のデパートを直接知らないが、展示を見ながら日本のデパートの思い出がよみがえった。冒頭で書いたように、お子様ランチや屋上のヒーローショーなど、親に手を繋がれて訪れた幼少期の記憶と重ね合わせながら、この展示を楽しんだ。

2025年4月6日までパリ、シテ建築遺産博物館にて開催中。

La Saga des grands magasins

https://www.citedelarchitecture.fr/fr/agenda/exposition/la-saga-des-grands-magasins

写真・文:櫻井朋成 Words and Photography: Tomonari SAKURAI