ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
12月4日(水)のテーマは「アメリカはいまだに人種差別と女性蔑視の国? 大統領選の結果からZ世代が激論」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、アメリカにおける人種差別と女性差別の現状について意見交換しました。
◆ジェンダーと人種問題の視点で大統領選を振り返る
2025年まで残り1ヵ月をきりました。1月20日には、第47代アメリカ大統領のトランプ氏が就任します。番組ではこれまで、Z世代がどういった意図で誰に投票したのか、なぜ若い男性やマイノリティがトランプ支持に流れたのかなどの議論を重ねてきました。今回は、その締めくくりとして、ジェンダーと人種問題に迫ります。
カマラ・ハリス氏が負けた理由は、彼女のジェンダーと人種だったのでしょうか? ニューヨークのZ世代に、率直な意見を求めました。
メアリー:たしかにそうだと思う。アメリカにはたくさんの文化があるけれど、その多くはいまだに“男性寄り”なんだよね。反女性とまでは言わないけれど、女性をリーダーとして見ていないんだと思う。だから、女性に投票するのは難しい。
それに、彼女がマイノリティであることから、「彼女はDEI(Diversity, Equity & Inclusion=多様性・公平性・包括性)候補だ」みたいな会話ね。「マイノリティだから候補に選ばれたんでしょ?」みたいな言い方で攻撃されていたよね。ダイバーシティで公平を期すために選ばれたって言われちゃったら、もうそれだけで彼女がそこにいる価値や資格がないように聞こえてしまう。
ミクア:彼女が負けた理由の1つは、彼女が女性で白人ではなかったからだと思う。オバマは黒人で初めての大統領になったけれど、彼女は非白人であるだけでなく、女性であることが加わった。大統領になるチャンスはどんどん減っていったと思う。
そして、多くの人は女性が大統領になることを望んでいないと思う。「強い大統領が必要だ」みたいなことをよく言っているじゃない。それってつまり「女性ではなく男性が大統領になるべきだ」ということだよ。
ノエ:アメリカ人の多くは、いまだに性差別主義者なんだ。たとえば、アメリカの中西部のようなところに行って「女性を大統領にしたい」と誰かに言ったとする。そうすれば「そんなのは嫌だね。女性は家で家族のために食事を作るべきだ」と言う人がいるに違いない。彼女が女性であるという事実が、多くのアメリカ人にとって彼女を悪い選択肢にしてしまったと思うな。
アメリカはいまだ「女性に大統領になってほしい」と思っていない人が少なくない。人種という意味ではオバマは当選したけれど、ハリスはマイノリティでさらに女性だったことが二重にマイナスに働いた。というのがメアリー、ミクア、ノエの意見です。
◆アメリカ人の人権意識は向上している
これまでの放送でも、若い白人男性が女性やマイノリティから取り残されていると感じたことが、トランプ票の増加につながったのではないかという話をしました。今回の大統領選では、大きなジェンダーギャップと男女の政治的な分断があったと、ラボメンバーたちは感じています。
一方で、ハリス氏の敗北はあくまでも政策が原因だったと反論するラボメンバーもいます。ケンジュの意見を聞いてみましょう。
ケンジュ:もしアメリカ(の人権意識)がまだそのレベルだったのなら、オバマが大統領になることはなかったんじゃないかな。彼女が負けた主な要因だったとは思わない。「女は嫌だから男に入れる」みたいなことはなかったんじゃないかな?
ノエ:別に僕は「男のほうが女より頭がいい」とか「女は絶対信じない」と、みんなが思っていると言っているわけじゃないんだ。なんというか、「男性はなんとなく女より少し有能だろう」ぐらいの感じ。ただ、なんとなくそう感じているだけなんだ。そのぐらい微妙なことだと思うよ。
僕も今回は女性にとってチャンスだと思っていたよ。ハリスは副大統領というところまで来ていたわけだし。アメリカ人は日本やアフリカ、中東のような地域と比べれば、それほどひどくはないと思うよ。それでも、政権を取るチャンスが平等にあるとは思えないけれど。ヨーロッパのほうがうまく行っているよね。
ケンジュ:2016年のヒラリーもかなりいい線行ったよ。彼女は一般投票ではトランプに勝っていたんだよね。
ノエ:そうだよね。だからよくはなっていると思うよ。
アメリカの差別が酷かったなら、オバマが大統領になることはなかっただろうと考えるケンジュ。それに対し、ノエははっきり見えない程度のものだとしても、人種差別も女性差別もいまだあると考え、政権を取るチャンスは平等ではなかったと意見を述べます。
「たしかに8年前にヒラリーは負けましたが、一般投票では勝っていたんですよね。つまり、選挙人投票ではなく直接投票だったらトランプに勝って大統領になっていたかもしれません」とZ世代専門家のシェリーは説明します。
今回も、トランプ氏が一般投票で勝ったとはいえ、過半数には届いていませんでした。そう考えれば、彼らの「よくはなっているとは思う」という言葉には説得力があります。人種とジェンダーは大統領選に限らず常に論争になりますが、気になるのはメアリーが言っていたDEIの問題。ダイバーシティ・イクイティ・インクルージョンとは、すなわちさまざまな人種やジェンダーの人を公平に採用しようという動きを指します。
若いZ世代の8割はこの動きを支持していますが、単純に公平にと言っても、簡単ではないことはたしかです。シェリーは「特に男性や白人からは、自分たちが逆に差別されているという反感も生まれています」と現状を述べます。
今回、ハリス氏が負けたことにより、トランプ新政権の方針でDEIの動きはかなり後退すると予想されています。また、最近は女性を蔑視するようなSNS投稿がバズったり、黒人に対するヘイトメッセージが出回ったりといった不穏な動きもあります。
「この動きを警戒する人は、トランプが“ヘイトを恥と思わなくていい。言論の自由の一部”という文化を作ったと批判しています。このあたりも注視していかなければと思っています」とシェリーは発言し、話題を締めくくりました。
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<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/