年末が近づき、お酒を楽しむ機会が増えてくる時期。CureAppは、減酒治療アプリの開発を担当する宋医師解説のもと、「急性アルコール中毒とその予防と対策」について公開した。
■急性アルコール中毒とは
年末は特に急性アルコール中毒で搬送される人が増える時期。急性アルコール中毒とは、短時間に大量のアルコールを摂取することで急激に血中のアルコール濃度が高まり、肝臓でのアルコール代謝が追いつかず一気に泥酔状態になることを指す。
さらに、血中アルコール濃度が0.4%を超えると生命に危険が生じる「昏睡(こんすい)」状態となり、意識レベルの低下や嘔吐(おうと)、血圧低下、呼吸数の低下が起こるほか、嘔吐した際に吐物による窒息が原因で死亡することもあるという。
東京では毎年1万人以上が救急搬送され、一時はコロナ禍で減少傾向にあったものの、コロナが5類感染症に移行したあと再び増加に転じ、2023年12月の救急搬送人員は1,500人を超えたことがわかった。
■急性アルコール中毒になりやすい人とは
東京消防庁のデータによると、急性アルコール中毒で搬送される人のうちとりわけ女性の割合が増えている。女性は男性に比べて、アルコールを分解する力が弱く、アルコールの影響を受けやすいことが分かっており、よりリスクが高いという。
また、搬送者のうち20代以下が半数を占めていることも大きな特徴である。飲酒経験が少ないことから、適切な量やペースが把握できていないケースが多く注意が必要。アルコールを分解する酵素の働きは個人差が大きく、どのくらいの量であれば急性アルコール中毒にならないと断言することはできないという。
しかし、厚生労働省の指針によると純アルコール量60g/日の飲酒は多量飲酒と位置づけられており、避けるべきとのこと。なお、純アルコール量60gとは、アルコール度数5%の缶ビール500mlで3本程度、同15%の日本酒で3合程度を指す。
■急性アルコール中毒の予防対策
宋医師によると、安全な飲酒のための対策については以下の5つがあげられている。
- 無理に飲まない、飲ませない
- 一気飲みや短時間での大量摂取を避ける
- こまめに水を飲みながらお酒を楽しむ
- 体調が悪い時や疲れている時は、飲酒を控える
- 周りに具合の悪い人がいたら、すぐに横にして(吐物での窒息を防ぐため)安静を保ち、酔いが覚めるまで付き添う。つねったり、たたいたりしても反応がなく、意識がない場合はすぐに救急車を呼ぶ
解説者の宋龍平氏は、CureApp 岡山県精神科医療センターの医師。長年、アルコール依存症に精神科医として向き合う中で、早期治療普及の重要性を痛感し、同社で減酒治療アプリプロジェクトを立ち上げた。最前線の診療現場に立ちながら、研究にも精力的に取り組み、日本アルコール・アディクション医学会を始め、複数の学会で受賞歴がある。