日本では高齢のおひとりさま世帯が年々増えており、2020年の国勢調査によると、65歳以上の約5人に1人が一人暮らしをしています。おひとりさまの中には「終活をしたいけれど、何から始めればいいかわからない。相談する家族もいない」と迷う人もいます。
そこで今回は、おひとりさまの年代別に「終活の第一歩」として取り組みやすいポイントをまとめました。各年代で優先して取り組むべきことをご紹介します。
◆終活ってどんなことをいうの?
一般的に終活には以下のとおり、さまざまな事柄が含まれています。
・財産整理(資産を現金に変える・使わない口座やカード類を解約する)
・資産の目的別管理(介護費用など確実に必要なお金を別口座で管理する)
・荷物整理(持ち物整理)
・エンディングノートを作る(自分年表作成・介護の希望をまとめる・財産の情報をまとめる)
・葬儀やお墓について考える(埋葬方法を決める・墓じまいをする)
次は、50代、60代、70代の優先すべき事柄についてお話しします。
◆50代の終活は老後に向けて「生活をシンプルに」
50代は、終活を本格的に進める前段階として、まずは「生活をシンプルにする」ことから始めましょう。そのために、いきなり家の中の物を整理するのではなく、まず「老後にやりたいこと」を見つけていくことが大切です。
例えば、趣味や興味を再発見する、旅行や挑戦してみたいことをリスト化する、あるいは人間関係を見直して再構築する相手を見つけるなど優先したい活動を絞り込みましょう。
やりたいことが明確になると、「これは本当に必要か?」と考え、生活に必要な物や出費の優先順位も見えてきます。また、物を整理するときの「捨てる・捨てない」の判断もしやすくなるでしょう。
◆60代の終活は「資産の目的別管理を」
60代に入ると、生活や生き方の価値観もある程度固まっているころです。徐々に「どのように人生を締めくくりたいか」について考える時期にさしかかります。
この時期は、先々に向けて老後資金をしっかり振り分ける「資産の目的別管理」を行いましょう。これは、生活費や医療費、急な出費など、目的ごとにお金を管理することです。自分が持っているお金の状況を確認し、毎月どれくらいの生活費が必要かを把握しましょう。
今の時代は、100歳近くまで生きることも多く、長期的な計画が必要です。例えば、日常の生活費は年金の中でやりくりをして、足りない分はパートの仕事で補うなどの計画性が必要です。また、家電の買い替えや家の修理、将来の介護費用など、大きな出費が予想されるものは、別の口座に分けて管理しましょう。
さらに、エンディングノートを使って、保険や銀行・証券口座の情報、動画や音楽、食品などを定期購入しているサービス(サブスクリプションサービス)の契約情報をまとめておきましょう。
このように、資産を目的別に整理したり、必要な情報をエンディングノートにまとめたりすることで、安心して老後を過ごす準備が整います。
◆70代の終活は「葬儀やお墓についての具体的な準備を」
70代は、終活の仕上げとして「葬儀やお墓の準備」を具体的に進める時期です。このころには、埋葬方法やお墓の場所についての希望がはっきりとしている方も多いのではないでしょうか。自分の意向に沿った準備を整えましょう。
具体的にやることは、火葬や土葬、散骨など希望する埋葬方法を決める、近年増えている「墓じまい」や永代供養墓を検討するなどが挙げられます。
また、自身の葬儀を家族葬などシンプルなものを望む場合は、その意向をエンディングノートに書き加えて、信頼できる親族に伝えておきましょう。自分の意思を明確にしておくことで、残された人の負担を減らすことができます。ご自身の将来の安心感も得られるでしょう。
以上のように「終活」は安心して老後を過ごすために必要なことです。気負わずに今日から少しずつでも進めてみてください。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
3匹の保護猫と暮らすファイナンシャルプランナー。会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方、心豊かに暮らすための情報を発信しています。
文=舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)