女優の松本若菜が主演するフジテレビ系ドラマ『わたしの宝物』(毎週木曜22:00~ ※TVer・FODで見逃し配信)の第8話が、きょう5日に放送される。

夫以外の男性との子どもを夫の子と偽り産み育てる「托卵」をテーマにした今作、とうとう離婚という結論に至った主人公夫婦の二人だったが、ついに“本当の父”へ、“最後の真実”が明かされる――。

  • 松本若菜(奥)とさとうほなみ (C)フジテレビ

    松本若菜(奥)とさとうほなみ (C)フジテレビ

視聴者をやきもきさせる相反する思い

今作をここまで見続けてきた視聴者には、相反する2つの思いがあるだろう。一つは、主人公・美羽(松本若菜)と宏樹(田中圭)、そして「托卵」の末にできた子供の栞と共に、3人で暮らしていくことだ。

これまでの女性視点に立った不倫ドラマであれば、熱情を抑えきれず夫を捨て不倫相手と一緒になるか、その思いを残したまま一人で生きていく道を選んだだろう。なぜなら通常の不倫ドラマにおいて、不倫されてしまう夫側に“人格”はなく、その夫に“人格”があっては、不倫へ走ってしまう主人公に共感できないし、思いを乗せることができないからだ。

今作もまた、序盤までは不倫される夫・宏樹に“人格”がなかった。妻・美羽への冷たすぎる仕打ちは、不倫されても仕方がない、同情の余地がない=“人格”がないと判定していた視聴者が圧倒的だったのではないだろうか。しかし中盤以降、夫側の描写が丁寧に紡がれ、演じる田中圭の好演も相まって、宏樹にも幸せになってもらいたい…という、宏樹に“人格”を感じてしまった視聴者が多くなっていったはずだ。

それと相反する思いは、“本当の父”である冬月(深澤辰哉)の存在を明かさないままで良いのか?ということだ。これは、物語の都合上…視聴者を盛り上げるための波乱がなければつまらないというエンタテイメントの宿命としてももちろんそうなのだが、美羽のけじめとして、宏樹の決意として、“本当の父”が明かされるのは当然の流れであり、ドラマの落とし前としても、登場人物の心情としても、それを描かなければモヤモヤは残ってしまう。しかし、それが描かれるということは、美羽と宏樹、栞が3人で暮らすという“幸せ”からは遠ざかっていく…。この、相反する思いが視聴者をやきもきさせている。

そして何より、定石ではない不倫される側・宏樹の“人格”ばかりが描かれたのと同じように、不倫した側・冬月の“人格”をこれから丁寧に描いていくには、“本当の父”問題は避けて通れないのだ。

“見たくないけれど見ざるを得ない”真骨頂が終盤に

さて今回の第8話は、とうとう“最後の真実”と言っていい“本当の父”問題が描かれる。第5話で暴露された「托卵」については、まさか美羽の友人である真琴(恒松祐里)によるものだったが、今回はどのように明かされていくのか注目だ。

先に予告で明かされた通り、それは冬月の同僚・水木(さとうほなみ)が発端となるのだが、なぜ水木が…という“引き金”については、視聴者に気付かれないようにさりげなく描かれ続けた冬月の“人格”を手繰り寄せることで見えてくる。

“見たくないけれど見ざるを得ない”という今作の真骨頂が、この第8話終盤の“攻防戦”に詰まっている。それはもう、息苦しくて見ていられない(けれど見ずにはいられない)はずだ。

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