「出場できたところでなかなか結果を残せなかったので、チームからの信頼も勝ち取れなかった。自分自身も不甲斐ない1年だった」。
ロッテ・安田尚憲は今季、2020年に一軍定着後ワーストとなる55試合の出場にとどまり、レギュラーシーズンでの本塁打はなく、打率.228、15打点と悔しい1年に終わった。
◆ 熾烈な競争
今季を迎えるにあたって、昨季セカンドでゴールデングラブ賞を受賞した中村奨吾がサードにコンバート、新人の上田希由翔がドラフトで入団し、一塁にもDeNA時代に本塁打王、打点王のタイトル獲得の経験があるソトが加入と、これまで以上に競争が熾烈になった。
その中でシーズン前に安田は「1年間試合に出続けて、ハイレベルなところで成績を残して頑張っていけたら」と意気込み、レギュラー争いについて「ライバルではありますので、しっかりと勝てるように争いで勝ち取れるように。しっかりアピールできたら」と覚悟を示した。
3月29日の日本ハムとの開幕戦に『5番・一塁』でスタメン出場し、3月31日の日本ハム戦で今季初安打を放ったが、4月2日に故障により一軍登録を抹消。4月13日の楽天二軍戦で実戦復帰し、4月27日に再昇格すると、「ちょっとずつ良くなっているかなという感じですね」と5月は1日のオリックス戦で2-3の9回一死満塁の打席、平野佳寿が2ボール2ストライクから投じた5球目の外角低めの143キロストレートを逆らわずレフトの頭上を越える決勝の2点適時二塁打を放てば、5月21日の西武戦から5月29日のヤクルト戦にかけて5試合連続安打と、5月は月間打率.313、8打点をマークした。
春季キャンプ中の取材で安田は「今年はアナリストの方とたくさん話をしながら、データ的なところも頭に入れてやっていきたいと思います」とデータを取り入れる方向を示していたが、5月26日の取材で「そこは継続していますね。村田コーチと3人で一緒に相談しながらやっています」とのことだった。
6月に入ってからも、1日の阪神戦、0-0の4回二死一、二塁の第2打席、「晴也(田中晴也投手)が初先発ということで、緊張もありながらここまで踏ん張っていたので、何とか一点と思って打席に入りました!先制できて良かったです!」と、先発・ビーズリーが1ボール1ストライクから投じた3球目のカットボールをライトへ弾き返す適時二塁打を放った。
ここからさらに勢いを加速させたいところだったが、この安打を最後に13打席安打がなく、6月10日に一軍登録を抹消。「色々考えながらやっていました」と、ファームで昇格に向けて技術向上を図り、7月4日に再昇格。
◆ 試合前に福浦コーチとマンツーマン練習
7月9日、10日の楽天2連戦(ZOZOマリンスタジアム)、12日〜14日のオリックス3連戦(ZOZOマリンスタジアム)での試合前練習では福浦和也コーチ(来季一・二軍統括打撃コーディネーター)にマンツーマン指導を受けながら、打撃練習することが多かった。スタッフに打っているところを撮影してもらい、打撃練習の合間に映像を確認している場面もあった。
福浦コーチは7月14日の試合前練習後の取材で安田について、「基本タイミングを取るのが上手じゃないので、タイミングの話は常にしていますね。1球目から振れる準備の話とかしていますね」と明かした。福浦コーチは安田の新人時代から“下半身を使って打つ”よう指導してきたが、現在も「そうですね、下半身の動きを言っていますね」とのことだ。
打撃投手が投げる打撃練習では、「ライナー性を意識して打撃練習をしています」と角度のついた大きなフライではなく、ライナー性の打球を打っていた。その意図について「バットが下から出ないようにという意識でやっています」とのことだった。
結果を残すために、日々試行錯誤する。「しっかりと準備しながら、福浦さんと話しながら、いい結果を残せるようにやっていきたいと思います」と安田。
7月15日〜17日にかけてのソフトバンクとの3連戦で7打数3安打1打点と復調の兆しを見せたかのように思えたが、7月は月間打率.175、8月1日の西武戦で3打数0安打に終わると、翌日に今季3度目の一軍登録抹消。
◆ CSで一発も
降格後、ファームで「全部見直してはきましたけど、ファームでしかできないこともあるので、そこをしっかりやりながらやってきました。トレーニングの部分だったり、練習量をやってきたつもり」と、打率.304、2本塁打、8打点と結果を残し、8月30日に一軍に上がった。
9月10日のオリックス戦、1-1の4回一死二塁の第2打席、「チャンスだったので勝ち越すことができてよかった」と、エスピノーザが投じた初球のカーブをセンター前に勝ち越しの適時打。クライマックスシリーズ進出を決めた10月1日の楽天戦、『8番・ファースト』でスタメン出場し2安打、10月3日の日本ハム戦では今季初めて4番に座った。吉井理人監督は試合後、4番で起用した意図について「特にないですけど、いつも8番だなと思ってかわいそうだなと思ったので」と説明した。
レギュラーシーズンでは悔しい結果に終わったが、日本ハムとのクライマックスファーストステージ第2戦では「チャンスをもらえたので、なんとか結果をと思っていました」と、金村尚真が投じた初球のカーブをライトスタンドに一発。
ただ本人は、シーズン終了後の取材で「1本出たのは良かったですけど、う〜ん、そこまであんまり。それが自分にとってこの1年プラスになったかと言われたら、別にそうでもない」と振り返った。
◆ 秋季練習ではレベルアップを図る
シーズン終了後に行われたZOZOマリンスタジアムでの秋季練習では、「全てにおいてしっかりレベルアップしていこうということで、特にバッティングのことを考える時間が多いです。走塁も守備もちゃんとやっていこうということでやっています」と、攻走守全てのレベルアップを図った。
秋季練習中は「今シーズン出た1年間の課題だったり、来シーズンに向けてどうしていこうかというところを少しデータを見ながら、福浦さんとやっています」と、福浦コーチからマンツーマンで指導を受けることが多かった。
来季に向けた戦いが始まっている。今季限りで現役引退した井上晴哉さんは期待の選手に安田の名前を挙げ、安田も「晴哉さんとは7年間一緒にプレーさせてもらって、優しい先輩でしたし、主砲としての姿を見させてもらった。晴哉さんさんは2年連続24本打ったりしているバッターなので、成績を出せるように僕も頑張っていけたらと思います」と決意。
「バッティングの部分でしっかりとやらないといけないと思うので、そこはどうすれば打てるか、自分の長所を出せるかを見つめ直して、あとは量もやっていけたらなと思います」。来季でプロ8年目。来季こそ結果で期待に応えたい。
取材・文=岩下雄太