◆「掉尾の一振」といわれる12月の株式市場の動向は?
12月は、株価動向に影響を与える重要なイベントが数多く控えている月です。11月に米国の投資信託やヘッジファンドの決算が終わるため、12月は手仕舞った株の買い戻しが入るといわれています。
一方で、個人の節税対策の売りが出やすいことから、売り圧力も強まりやすくなります。しかし、個人の節税対策の売りが一巡すると、再び買い圧力が強まり、年末に向けて株価が大きく上昇に転じるともいわれています。これは相場のアノマリー「掉尾の一振(とうびのいっしん)」として投資家に広く知られているものです。
今回は、このような12月の株式市場の動向について、過去の株価データから統計的に検証してみました。
■検証対象:全銘柄
■検証期間:2000年1月1日~2024年10月31日
■1銘柄当たりの投資金額:20万円
■買い条件:11月末の寄り付きで買い
■売り条件:25日経過後の翌営業日寄り付きで売り
11月末に全銘柄を購入し、25日経過後に売却した場合について検証を行います。仮に、勝率が50%以上で損益がプラスならば、12月は株価が上がりやすい月となります。反対に損益がマイナスであるならば、12月は下がりやすい月といえます。
以上のルールで過去のデータを用いて検証した結果は、以下の通りです。
◆12月株式市場の検証結果
勝率:47.67%
勝ち数:40,439回
負け数:44,389回
引き分け数:2,143回
平均損益(円):-833円
平均損益(率):-0.42%
平均利益(円):14,228円
平均利益(率):7.11%
平均損失(円):-14,593円
平均損失(率):-7.30%
合計損益(円):-72,433,669円
合計損益(率):-36,217.84%
合計利益(円):575,354,253円
合計利益(率):287,686.77%
合計損失(円):-647,787,922円
合計損失(率):-323,904.61%
PF(プロフィット・ファクター):0.888
平均保持日数:21.32日
以上が、株式市場の傾向(12月)の検証結果です。検証結果を見てみると、勝率47.67%、平均損益は-0.42%となりました。12月は下がりやすい傾向があるようです。また、損益の推移を見ると、2018年のクリスマスショックによる急落が目立っております。
ところで、12月20日頃から12月相場のアノマリー「掉尾の一振(とうびのいっしん)」が始まります。「掉尾」とは「最後になって勢いが盛んになる」という意味ですが、個人投資家による節税対策の売りが一段落したあと、年末にかけてドレッシング買いが始まり、株価が上昇するといわれています。
「12月20日以降に全銘柄を買い付け、年明け以降に売却する」という条件式で簡単な検証を行ったところ、勝率は65.80%、平均損益は2.46%となり、先ほどの検証よりも成績が向上することが確認できました。12月の投資戦略を考える上で「掉尾の一振」を利用した投資戦略を組むと、利益になりやすいトレードを行えるでしょう。
特に、年末年始の大納会や大発会の時期は、ご祝儀の意味を込めた買いが入る「ご祝儀相場」と呼ばれ、株価上昇しやすいといわれています。「掉尾の一振」と「ご祝儀相場」の傾向を利用すれば、トレードチャンスの幅も大きく広がるでしょう。
しかし、全銘柄を対象にした検証では、12月相場は下がりやすい傾向にあることが分かりました。その中でも、12月相場で成績が好調だった個別銘柄をご紹介します。
◆12月の好調銘柄ランキング
図表は、先ほどの検証によって出された高勝率銘柄のランキングです。
12月相場では「扶桑電通<7505>」「京葉瓦斯<9539>」などの銘柄が、相性がいいようです。
また、12月はボーナス月でもあることから、個人投資家の投資資金が増えることが予想されます。個人投資家の資金量が増えることも、成績が好調となる要因の一つといえるでしょう。12月は上記銘柄に注目してみてはいかがでしょうか。
(このテーマでの検証については、【システムトレードの達人】を使って検証しています。記事の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性、利用者にとっての有用性を保証するものではありません。当社及び関係者は一切の責任を負わないものとします。投資判断はご自身の責任でお願いします)
文:西村 剛(証券アナリスト、ファンドマネジャー)
国内運用会社にて中小型株式ファンドマネージャー兼アナリストを経て独立。個人投資家に分かりやすく株式投資を伝授すべく、講演や執筆を行う。『夕刊フジ』3年連続 株-1グランプリ グランドチャンピオン。
文=西村 剛(証券アナリスト、ファンドマネジャー)