ブルペンで投球練習するロッテ・中村稔弥[撮影=岩下雄太]

 「今年1年、いい時もあれば、二軍に落ちてしまう時もあったので、1年通してできることができなかったのかなという感じですね」。

 ロッテの中村稔弥は今季一軍で17試合・34イニングを投げて、1勝、防御率3.71、ファームでは19試合・20回1/3を投げ1勝、防御率1.77だった。

 中村は今季に向けて自主トレでは「真っ直ぐを速くというイメージでやってきたんですけど、ランニングを重点的にやってきました」と体力強化に励んだ。練習試合、オープン戦に向けて「いくらいいボールを投げても対バッターに対して、対戦できずに四球とか出していたら意味がない。まずはしっかりゾーンで強いボールを投げて、バッターと勝負できるところをアピールしたい」と、2月の練習試合は4試合・9イニングを投げ与四球は2つ、オープン戦でも5試合・5イニングを投げ与四球は1つだった。

 ストレートに関してはオープン戦を終えた段階で、「去年の後半よりもストレートを投げる割合を増やしていて、ストレートあっての変化球だと思うので、そういう面ではしっかり打者に投げられているのかなと思います」と納得のいくボールを投げられたようだ。

 この時期、ハーマンカーブだけでなく、「まっすぐが速くないので、カーブを使って緩急使って投げていくのが大事かなと思って投げています」と、ストライクを取るイメージで90キロ台のカーブも投げていた。

◆ ロングで存在感

 開幕はファームスタートも、4月5日に一軍昇格。「最初点を取られたんですけど、取り返すしかないので、無失点に抑えることだけ考えて投げています」と今季初登板となった4月6日のオリックス戦で4失点したが、同試合で安達了一を見逃し三振に仕留めたインコースのストレート、中川圭太を見逃し三振に仕留めた144キロのストレートは良かった。右打者のストレートについて「右バッターに対して昨年よりインコースに投げられていると思います」と明かした。こだわってきたストレートもシーズンが始まってから、「いい感じで投げられている」と好感触。

 続く4月12日の楽天戦から4月29日の楽天戦にかけて4試合・5回1/3を無失点。5月1日のオリックス戦で失点したが、5月7日の西武戦、5月17日の日本ハム戦と無失点に抑える。

 中村の真骨頂が発揮されたが、5月26日のソフトバンク戦だ。ブルペンデーとなったこの日、中村は0-0の2回から3イニングを無失点に抑え、吉井理人監督も試合後、「今日のMVPの一人ですね」と手放しで褒めた。

 中村はこの時期、登板間隔が空いての登板が続いていたが、試合前の練習で「「キャッチボールと準備とかはしっかりやるようにしています」とし、その中でも準備は「柔軟ですかね」と大事にする。ブルペンでの過ごし方は「去年と一緒で自分がやることをやって準備をしています」と、いつ呼ばれてもいいように体を作った。

 オフから課題を持って取り組んできたストレートも、「今はいい感じで投げられています」とし、5月7日の西武戦で渡部健人から空振りを奪ったストレートが良かったと伝えると、「あの時よりも、日本ハム戦の方がしっかり力を伝えられているのかなと思います」と振り返る。

 5月は「しっかりコントロールも意識して、ボール先行にならないように、ストライク先行で攻めていけるようにと考えて投げられています」と、7イニングを投げ与四球が“0”。「でもカウント悪くなっているところがあるので、ストライク先行でもっと投げたいなと思います」と反省も忘れなかった。

◆ カイケルから学ぶ

 6月1日の阪神戦で3回1失点、6月7日の広島戦で2回2失点と2試合連続で失点すると、6月8日に一軍登録を抹消。7月15日に再昇格され、17日のソフトバンク戦で2回・2失点すると、その後登板がなく再び登録抹消。

 8月13日に今季3度目の昇格を果たすと、15日の日本ハム戦では、連投となったが、「僕の仕事はそういうビハインドとかでいっても、しっかり抑えることが一番だと思っています。それができてよかったと思います」と4回からの3イニングを打たれた安打は4回の1安打だけで、5回と6回を三者凡退に抑える好リリーフ。

 8月21日の日本ハム戦では1-5の5回一死一、三塁で先発・メルセデスの後を受けて登板すると、「次の日の試合もありましたし、まだ連戦が続いていたのでここはしっかり僕の仕事をまっとうできたのでよかったと思います」と、4回2/3を投げ2失点と他のリリーフ陣を休ませた。

 投球面でいえば、開幕直後に90キロ台のカーブを投げていたが、「今速いカーブの方がストライクが取りやすいので、そっち(ハーマンカーブ)を使っています」とハーマンカーブを優先的に投げた。

 また、この時期の試合前練習では、「動く独特のボールを教えてもらっていますし、投げ方とか、自分は投げている時に疲れてきたりしたら、どうなるから、どうすればいいかとか、そういうのを詳しく教えてもらっています」と、サイ・ヤング賞左腕・カイケルから熱心にアドバイスをもらっている姿があった。

 「ピッチングを見たりとかもしています。ブルペンも後ろから、キャッチボールの丁寧さ、ピッチングでも少ない球数での丁寧さ、几帳面というか、全てにおいて丁寧、ピッチングも丁寧じゃないですか。だからそういうところが大事なんだなと思って学んでいます」と目を輝かせた。

◆ 9月以降はファームで奪三振増

 8月29日の西武戦で3回2失点すると、翌8月30日に登録抹消された。9月に入ってからはファームで9試合・8回1/3を投げ13奪三振と、奪三振が増えた。

 その理由について「ツーシームの精度は自分の中ではよくはなってきていると思うので、そこのおかげかなと思います」と説明。そのツーシームは、120キロ台のボールを投げたり、わざとスピードを落としているように見えた。「普通に投げていたら129とか、平均が133とかなので、それが129キロとかになっているだけだと思います」と球速差を出すなど工夫を凝らした。

 10月4日のソフトバンク戦で1回を投げ2つの三振を奪い、今季を終えた。ZOZOマリンスタジアムでの秋季練習では「体力強化と真っ直ぐの質を上げるのと、もう1個新しい変化球を覚える練習したい」と新球習得に励んだ。

 中村にシーズン終了後、こだわってきたストレートの質に関して質問すると、「シーズン最終盤になると真っ直ぐの球速も落ちてきていた。終盤もしっかり強い球が投げられるように、やっていかないといけないなと思いました」と反省。

 今季も一、二軍を往復。シーズン通して一軍で活躍するために必要なことについて「真っ直ぐの質の高さともう1個カウント、決め球かなと思います」と話した。来季は「中継ぎだったら1年通して投げられるようにしたいなと思います」と意気込んだ。ロングリリーフでは相手打線の勢いがついた中で、相手の流れを食い止め、しっかり抑えるのはさすが。その強みを活かしながら、来季もリリーフで投げるのであれば、勝ちパターンにも割って入り込めるような存在感を放ちたい。

取材・文=岩下雄太