QUBITが語る『tiny desk concerts JAPAN』出演 5人組スーパーグループの音楽的挑戦

『tiny desk concerts JAPAN』、NHK総合での12月2日(月)23時〜放送回はQUBITをフィーチャー。Daoko(Vo)、永井聖一(Gt)、鈴木正人(Ba)、網守将平(Key)、大井一彌(Dr)と、それぞれ多方面で活躍する凄腕ミュージシャンが集い、2023年4月に活動を開始したスーパーグループである。

※以下、ネタバレあり

左から網守将平(Key)、永井聖一(Gt)、Daoko(Vo)、大井一彌(Dr)、鈴木正人(Ba)

◎収録レポート

攻めたアイディアとハイブリッドなアンサンブル

8月のとある午後、渋谷のNHK放送センター。オフィスの片隅には、赤いカーペットの上に見たこともない機材がたくさん並んでいた。スタッフが「みなさーん、もっと近くに来てくださーい」と促し、NHKで働くスタッフたちが仕事の手を止めて集まってくる。メンバーが入るとまずサウンドチェック。プロデューサーの紹介からライブ本編がスタートした。

大井がドラムセットではなくローランドのリズムマシーンの前にどっかと座り、特徴的なビートを流して「G.A.D.」でスタート。これにボサノヴァ/ジャズっぽいウッドベース、レゲエ風のカッティングギター、そしてニューウェイヴを彷彿とさせるアナログな音色のシンセが乗り、複数の時代とスタイルが混在するQUBITならではのハイブリッドな音楽性がのっけから全開だ。

続いては「Wonder World」。ドラムセットに就いた大井のハンドクラッピングから始まり、クラベスやボンゴなどのパーカッションを混ぜたリズムが演奏を引っ張っていく。ギターもアコースティックで、人肌の温かみと躍動感に満ちた演奏が1曲めと快いコントラストを描いた。Daokoのマイクなしの生歌は初めて聴いた気がする。

しばしの静寂の後、網守がサンプリングした声ネタを鳴らすと大井がブッダマシーン(電子念仏機)で応じ、キックを打ちながらスネアのリムを叩く。ギターとベースも加わり、Daokoがラップに「これはフリースタイルです」と交えて、次曲がジャムセッションであることを知らせる。4人の音と1人のボーカルは拡散と収斂を繰り返し、ベースのリードで奏でる律動に「We are QUBIT!」のシャウトが同期。最後はシンセが混沌を演出し、フェイドアウトで締めた。お見事。

エレピのイントロに乗ってDaokoが♪キラキラひかる……と歌い始めると、シンセとキックのキメに永井の(ギターではなく)シェイカーが絡み、鈴木のスラップベースが踏み込んで、4曲めは「Neon Diver」だ。途中で永井がギターを手に取り、E-BOW(エレキギターで持続音を鳴らす機材)で 「Heroes」 (デヴィッド・ボウイ)のロバート・フリップのソロみたいな強烈な演奏を聴かせてくれた。

#tinydeskconcertsJAPAN

総合 レギュラー 第9弾は

新進気鋭のバンド #QUBIT が出演

NHKオフィスで繰り広げられる

フリーセッションも交えた

実験的なパフォーマンスをお楽しみに

12/2(月)23:00~NHK総合https://t.co/bbhyT9IfbA

Neon Diver 一部を先行公開! pic.twitter.com/ae1HoYiZg8 — NHK MUSIC (@nhk_musicjp) November 29, 2024

このへんまで来るとスタッフのみなさんもノリノリ。攻めまくる演奏とは裏腹に(?)、メンバーたちのシャイな人柄が表れたMCはちょっぴり微笑ましかった。Daokoの「また会いましょう」という挨拶に続き、最後は「コンタクト」。『みんなのうた』に提供したテンポゆっくりのかわいらしい曲(演奏は楽ではないはず)をアコースティックに奏で、短いショーは幕を閉じた。

網守と大井の大車輪ぶり、大井が「大黒柱」と言う鈴木のどっしりした存在感、永井の遊び心満点のプレイ、Daokoの楽しそうな風情。魅力的なシーンは満載だったが、全員が曲ごとに楽器を持ち替え、機材を操作しながら、誰が中心とも言いにくい見事なアンサンブルを静かに興奮しながら聴いた。

◎5人が出演を振り返る

「この環境だからこそ、エレクトロニクスを持ち込むセンスが試される」

終演後に少し時間をもらえたので、最後にメンバーの言葉をひとことずつ紹介しておこう。

Daoko「自分の声をモニターで聴きながら歌うことが多いので、基本的に生声というのが新鮮だったし、自分の声に違った響きがあるという気づきがありました。あと、オフィスで歌うとこんな感じなんだ、というのも(笑)。すごく緊張して汗がいっぱい出ました」

永井「(E-BOWについて聞くと)スタジアムとか大きな会場で使われることが多いんですけど、あえてこのセッティングで使うことで、文脈のズレみたいなところを狙いました」

鈴木「(音量の調節が難しかったか、との問いに)エレクトリックベースはアンプを絞ればいいんです。今日もほとんど鳴らしませんでした。むしろウッドベースのほうが、大きな音で弾くときは思いっきり弾かなきゃいけないから、指が痛くて」

網守「お話をいただいたときはうれしかったんですけど、ふだんほとんどの音をコンピューターで作っていることもあり、最初は不可能だと思いました(笑)。でも、やったことのないことはやったほうがいい精神で頑張って、工夫して。あえて奇を衒って面白い音を出していこうという取り組みでもあったけど、同時にそもそも『tiny desk concerts』ってこういうものだとも思うので、素直にやった感じもあります」

大井「PAを介さず、その場で鳴っている音で完結させなきゃいけないという『tiny desk concerts』のレギュレーションにはかなり厳しいものがあって、それと我々のステイトメントの融合できるところを模索しました。向こう(アメリカ・NPR版)ではたとえばDEVOが拡声器を使ったりしていますよね。この環境だからこそ、エレクトロニクスを持ち込むセンスが試されると思って。多様性を示せたと思います(笑)」

◎放送予定

【NHK総合】2024年12月2日(月)23:00~23:29

※NHKプラスでの同時・見逃し配信あり

tiny desk concerts JAPAN

https://www.nhk.jp/p/ts/KXVP6WG6VM/