脱脂粉乳の過剰在庫問題とは

2020年、新型コロナウイルスのまん延により、学校や飲食店や旅館など、多くの施設が休止を余儀なくされました。学校給食がなくなり、インバウンド需要はストップ。卸されていた生乳は、自ずと廃棄の危機にさらされました。
そこで生乳は脱脂粉乳へと加工され、乳業メーカーや流通事業者へ。
しかし、需給バランスが崩れてしまい、生産者や事業者、国などでも対策を取ったものの大量の在庫が倉庫へ積み上がってしまいました。コロナ禍前の2019年末に69337トンだった在庫は、2021年末には94599トン、2022年4月には10万トンを超えました(農林水産省「牛乳乳製品統計調査」)。
直近の2024年10月末時点では47115トンまで減りました(同上) 。ただ、これについては「酪農家による生乳生産抑制や生産者団体や乳業メーカーが資金を出し合って、特別対策を講じ続けているもの」とBlueprint one。「特別対策がストップすれば在庫は再び増加に転じてしまうものとなります」と課題を感じていました。

脱脂粉乳から生まれるアパレル商品

そんな課題感から生まれたのが、脱脂粉乳から「服」を創るというアプローチです。
具体的には、国産脱脂粉乳を繊維に練り込んで、綿と混ぜます。そこから糸を紡ぎ、生地に編んで、商品として仕立てます。
事業構想から、ここまで約3年。特に脱脂粉乳を繊維化する工程で苦労があったと同社。国内外200以上の工場に問い合わせをしても、なかなか合意に至らなかったといいます。
それでも引き受け手が見つかり、いよいよ製造へと進むことになりました。

特長は「シルクのような滑らかな質感・肌触りの良さ」だといい、その上で「汚れにくくて、洗濯後は素早く乾く」フッ素フリーのはっ水加工を施すなど、実用的な商品企画となっています。ただし商品は、その特性上、牛乳タンパク質(カゼイン)を含むため、牛乳アレルギーがある人は着用を控える必要があります。
さらに同社は、国産脱脂粉乳の消費促進や新たな価値創出を目的とするライフスタイルブランド「moment of MILK」を立ち上げ。その社会的意義に共感し、明治ホールディングスや、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルも支援しています。

商品を通じた一次産業の魅力の発信へ

「この国の一次産業が輝く、新たな瞬間をつくりたい。」と掲げるBlueprint one。
現在、同社はクラウドファンディングにより正式販売に向け手に取りやすい価格設定をすべく、支援を募っています。
酪農家からも「このような革新的なアイデアが酪農業の持続可能性を高め、私たちの生活を支えてくれると信じています」との応援の声。一次産業を守ろうという思いから突き進む同社の活動に期待が寄せられます。

(画像提供すべてBlueprint one)

株式会社Blueprint one
東京都港区北青山3-6-7 青山パラシオタワー11階
https://bp-one.jp/

moment of MILK
https://moment-of.com/