視野が欠けたり、視力が低下したりする「緑内障」。緑内障は、特に40歳以上の人に多い目の病気です。しかし、よく耳にする割にどのような病気なのか詳しく知らない人も多いでしょう。今回は、緑内障の症状やなりやすい人の特徴、そして早期発見のヒントを解説します。

■緑内障とは?

緑内障とは、眼圧によって眼の奥にある「視神経」が障害されて異常が起こり、視野が狭くなったり部分的に見えなくなったりする病気です。

緑内障には大きく分けて、「開放隅角(かいほうぐうかく)緑内障」と「閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障」の2つのタイプがあります。これは、隅角という水が流れる部位が、開いているか閉じているかで分けた分類方法で、治療方針が大きく異なります。そのため、緑内障になってしまった場合、自分はどちらのタイプか知っておくことが大切です。

緑内障は40歳以上で5%、80歳以上では1割以上も患者がいる目の病気です。患者数が多く、日本の失明原因の1位にもなっている病気ですが、緑内障による失明率自体はかなり低く、ほとんどの人は早期に発見して適切な治療を受ければ、生涯視野と視力を保つことができます。

緑内障は眼圧によって視神経が傷んでしまうため、それを元に戻したり視野を広げたりすることはできませんが、少しでも早期に病気を見つけ、早い段階で食い止めておくことが重要なのです。

■緑内障になりやすい人の特徴

緑内障になりやすいのは、血縁者(父母、祖父母)に緑内障の方がいる、高齢(60歳以上)、眼圧が高い、角膜が薄い、強度近視、高血圧、糖尿病、ステロイドホルモン剤の内服・吸引の経験がある、片頭痛の既往などの特徴を持つ人です。

また、レーシックなどの屈折手術を受けたことがある人の場合、角膜が薄いので眼圧が低く計測される傾向にあります。緑内障が見逃されるリスクが高いため、健診をしっかり受け、レーシック手術を受けたことを主治医にきちんと伝えましょう。

■緑内障の症状

緑内障は視神経が傷んで死んでしまう病気ですが、実際に死んでいく眼の中の細胞は、網膜にある「網膜神経節細胞」という、網膜の最も内側にある細胞です。網膜神経節細胞は、軸索(じくさく)と呼ばれる長い電線のようなものを通じ、網膜が感じた光の情報を脳まで届ける役割をしています。

しかし、眼圧が上昇すると網膜神経節細胞や軸索が障害され、機能が低下したり死んでしまったりし、脳に視覚情報を伝えることができなくなります。その結果、視力が下がったり視野が欠けたりするのです。

なお、緑内障は「視野が欠ける病気」とされることが多いですが、視力に関する神経が障害された場合は、視力が低下します。また、緑内障の視野欠損は初期にはほとんど自覚がないケースも多く、発見や治療が遅れることがあります。

ちなみに、緑内障のうち、虹彩と角膜が接する眼房水の出口である隅角が狭くなるものが「閉塞隅角緑内障」、そうでないものが「開放隅角緑内障」です。症状にはどのような違いがあるのでしょうか。

<閉塞隅角緑内障>

虹彩と水晶体の間が密着し、ふくらんだ虹彩のために隅角が狭くなって房水の排出ができなくなり、眼圧が高くなります。激しい眼の痛み、頭痛、眼の充血、視界がぼやける、視力が急速に落ちるといった急性の発作を繰り返す特徴があり、特に40歳以上の女性に多くみられます。

失明の危険性も高いため、発作が起きた場合は速やかに眼科を受診しましょう。

<開放隅角緑内障>

開放隅角緑内障の場合、隅角は正常ですが、「上強膜静脈」へのフィルターである線維柱帯や、集合管が目詰まりを起こして循環が悪くなり、眼圧が上がります。高い眼圧が長年にわたって続きますが、初期の段階では自覚症状はありません。

緑内障が進行してはじめて、視野の部分的欠損などの症状に気づきます。健康診断などで早期発見し、視野の欠損に気づく前に治療をスタートさせることが大切です。

■緑内障を早期発見するためには

緑内障は、失明の原因1位の病気ではありますが、ほとんどの方の場合、早期発見と適切な治療によって視野と視力を保つことができます。早期発見のためにはまず、職場や自治体等が行っている健康診断を受けましょう。眼底カメラで眼底写真を撮ってもらえば、緑内障の疑いがあるかどうか診断してもらえます。

また、「視力が落ちてメガネが合わなくなった」といった場合でも、眼科で眼底検査できることが多いので、ぜひ申し出てみましょう。

ただ、緑内障と診断されても、早期や中期の場合は自覚症状がないために、治療をやめてしまう人も多いようです。緑内障は治る病気ではありませんが、治療によって進行を遅らせ、一生涯にわたり視機能を維持することは可能です。

緑内障になると生涯通院することになりますが、多くの場合、治療のために仕事や生活を変える必要はありませんので、主治医の先生に無理のない治療方法や通院状況を相談し、緑内障と上手に付き合っていきましょう。点眼治療の場合は点眼を続け、定期検査を受け続けること。手術をした場合も、その後の定期検査を忘れないことが大切です。

最後に緑内障の予防法や早期発見の仕方に関して、眼科の専門医に聞いてみました。

緑内障の原因は、遺伝的素因によるものや薬剤性、他疾患から起こる続発性、先天性のものなど多岐にわたります。緑内障の発症を完全に予防することは困難です。ただ、緑内障になる前の段階として高眼圧症や前視野緑内障といった概念もあるため、その時期から経過観察や治療介入ができれば、発症を遅らせられる場合もあります。早期発見早期治療には毎年の健康診断が重要となります。眼圧測定、眼底撮影により異常を指摘された場合には、眼科を標榜している医療機関への受診をお願いいたします。

水野 友広(みずの ともひろ)先生

一宮西病院 眼科/部長
資格:日本眼科学会 眼科専門医