舞台、テレビ、映画、モデル、執筆業と幅広く活躍している長井短。12月6日に開幕する草なぎ剛主演の舞台『ヴェニスの商人』では、佐久間由衣演じるポーシャの侍女・ネリッサ役を務める。長井にインタビューし、本作出演の喜びや女優業への思い、20代に抱いていた世間とのギャップ、今後の抱負など話を聞いた。
『ヴェニスの商人』がウィリアム・シェイクスピア作品初挑戦となる長井は、「演劇を始めた時から1回はシェイクスピア作品をやりたいと、本当に待ち望んでいたので、念願が叶ってすごくうれしいです」と喜んでいる。
そして、「現代劇をやる機会の方が多いので、何百年も前に書かれたセリフをしゃべるとどんなことが起きるんだろうという興味もあって。美しいセリフが多いので、自分の持っている言葉の引き出しが増えるのではないかなと楽しみです」と期待。「この時代の物語は、本か演劇で、映画やアニメがなかったということは、それだけ研ぎ澄まされたものがあるのではないかなと思うので、改めて演劇が好きだなと思える公演にしたいです」と意気込んだ。
演じるネリッサと自身の共通点もあるようで、「自分も恋の相談をするよりも、恋の相談に乗る方が多かったので、そういうところが似ているのかなと。恋愛以外でも自分の中で完結する方が多いです。もちろん頼ることはあっても、結局自分で決めないといけないと思うので」と話した。
中学生の時に大人計画の舞台を見て「演劇をやりたい」と思い、高校在学中に演劇活動を開始した長井。芝居は「ずっと楽しい」とやりがいを述べ、演じる役が変化してきたことでさらに楽しさが増しているという。
「20代前半は、若い20代の女の子という社会的な属性が自分の性格とはあまりにも合わないなと感じていたんですけど、演じる役柄の年齢が上がってきて、それがだいぶ合ってきたなと。お姉さんポジションでいられて楽になってきて、演じることがどんどん楽しくなっている気がします」
20代前半は、一般的な若い女性のイメージと自分のギャップを感じたという。
「『夢に向かって元気に走らないといけないんですか?』という感じで、20代の若い女の子の役に共感できず、オファーも来ないし、オーディションを受けても受からないし、もらえる役の数も少なかったと思います。その頃は、汗かいている人だけが頑張っているわけじゃないのになと。必死に『やらせてください!』みたいにしてなくても、同じ熱量を持っている人間はいるはずで、そういう人もいるんだともう少しみんな想像してくれてもいいんじゃないかなという思いがありました」
そして、年齢が上がり、また、世の中において多様性が広がったことで、演じる役が広がってきたという。
「ここ数年で、一見やる気のないような役を任せてもらうことが増えて、自分に合った役を演じられるようになってきてありがたいなと。昔の作品にはそういう女の子が少なかったと思いますが、世の中の空気もいろんな人いるよねという方向に進んだことで、今の方が働きやすいですし、生きやすくなったなと思います」