◆夫の残業が少ない月は赤字で、いつもギリギリの生活費でやりくり
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。
今回の相談者は、さまざまなトラブルが起きて第1子出産後に貯金がゼロになってしまった30歳、専業主婦の方。ローン返済などでいつもギリギリの家計というお悩みにファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
◇相談者
たぬきさん(仮名)
女性/専業主婦/30歳
埼玉県/持ち家(一戸建て)
◇家族構成
夫(会社員・28歳)、子ども(1歳)
◇相談内容
私が第1子を出産するときの出産費用や、家族が体調を壊して医療費がかかったり、同時期に車検2台が重なるなどトラブルが続き、貯金がゼロになってしまいました。
今のところ私は働いていませんが、子どもが保育園に入れそうになく、実家も近くではないので、3歳から幼稚園に入れて働く予定です(元々バイトをしていたところで、月5万~6万円の予定)。
また、2人目を希望しているので(不妊なので授かれれば……ですが)、今後のために家計を見直したいと思っています。
住宅ローンは、月々6万4000円、ボーナス月が35万円です(月々のローン分も含む)。毎月給料から住宅ローン払いの口座に10万円移しています。月々3万6000円、ローン払いに備えて貯金している状態です。
電気代は、太陽光を設置したため(320万円、15年ローン)安くなる予定です。まだ、売電は申請が通らずできてない状態です。ローンは1年目、月々5000円、売電が始まる予定の1年後からは2万2000円です。
児童手当を子どもの貯金に回すようにしていますが、子どもの物を購入する際に使ってしまいます。主人の残業が少ない月は赤字です。いつもギリギリの生活費でやりくりしています。次のボーナスからは、しっかり貯金するつもりです……。
◇家計収支データ
たぬきさんの家計収支データは図表のとおりです。
◇家計収支データ補足
(1)収支について(相談者コメント)
収支の差額分は、毎月貯金できていません。給料からいろいろ引かれているので(会社の保険や主人のお昼の代金)、ローン分を引いて残りが19万円です。残業代が少ない月は、手取りがだいたい5万円前後違います。
(2)住居費について
・購入時の物件の状況:築年数3年
・物件価格:4700万円
・頭金:200万円
・ローン残高:4400万円
・借入期間:35年
・金利:固定金利0.5%
・毎月の返済額:6万4000円
・ボーナスの返済額:28万6000円
・固定資産税:12万円
※ボーナス時は、ボーナス払いと毎月の返済額を合わせて35万円になります。
(3)太陽光発電について
<ローン詳細>
・借入額:320万円
・期間:15年ローン
・金利:1.9%
・毎月の返済額:5000円(最初の1年だけ)
(4)車両費について(相談者コメント)
現在は16年落ちの軽自動車と、8年落ちの普通車を所有しています。どちらもローンはなしです。
車両費ですが、ガソリン代が月々主人の給料から、だいたい2万円天引きされています(主人が通勤2時間、出張が自家用車のため多めです。私の車の分も含まれています)。車両費は2台分あわせて、2万円を超えることはないです。だいたい1万5000円くらいです。
予定ですが、現在の車は12年乗っていて、故障が出てきたりしているので、50万~60万円の中古車(軽自動車)を購入予定です。家族が増えたら、もう一台200万円くらいの中古車ファミリーカーの購入を検討しています(こちらはローンになるかもです)。
(5)加入保険について
相談者コメント「夫は、会社でも生命保険に入っていていますが、内容は不明です。また、会社で個人年金もしているみたいです。両方とも給与天引きされています」
・夫/生命保険(死亡5000万円、給料保障あり、入院5000円)=毎月の保険料1万2000円
・本人/医療保険(入院5000円、死亡100万円)=毎月の保険料4500円
・子ども/共済=毎月の保険料2000円
・車の保険など
(6)食費について(相談者コメント)
現在、私の実家からお米、野菜を月1くらいのペースで送ってもらっています。なので、食費は抑えられています。
(7)教育費について(相談者コメント)
子どもの進路については、特に決めてないです。小学校、中学校は公立で、高校、大学は本人が行きたいなら、なるべく奨学金に頼らず行かせてあげたい、とは思っています。児童手当のうち、5000円は貯金しています。1万円は子どもの物を購入するときに使う場合もあります。
(8)ボーナスの主な使い道について
・固定資産税:12万円
・車の税金:5万円
・主人の交際費:2万円
・家族旅行:5万円
・住宅ローンのボーナス払い:7万円(毎月3万6000円をボーナス払い用で貯金しているので、その不足分)
・主人の小遣い:3万円
相談者コメント「今回のボーナスは35万円貯金しました」
(9)貯蓄について(相談者コメント)
貯蓄75万円の内訳は、貯金口座35万円、引き落とし口座20万円、子どもの口座に20万円です。引き落とし口座の方は使ってしまう貯金ですが……。引き落とし口座分は給料が少ないときや、家電や家具を買うときに使っています。
子どもの口座に貯まっている20万円については、お祝い金やお年玉、あと児童手当を貯めて作った貯金です。貯金する余裕ができてから、児童手当が支給されるたびに5000円ずつ貯金し、現在20万円貯まっています。
(10)勤め先について(相談者コメント)
今のところ転職は考えていません。夫の会社は、65歳まで働けるそうです。主人は働くと言っています。退職金はありますが、いくらかはわかりません。
◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:ここからが貯めどき。児童手当とボーナスの半分は確実に貯蓄
アドバイス2:これ以上、ローンを組むのはNG。借りられる額ではなく、返せる額
アドバイス3:たぬきさんが働き始めれば、家計は改善。保険の見直しは今すぐに
◆アドバイス1:ここからが貯めどき。児童手当とボーナスの半分は確実に貯蓄
さまざまなことが重なり、大変でしたね。ここからが、お金の貯めどきです。
まず、児童手当は全額貯蓄。加えて、ボーナスの半分は貯蓄に回すようにしてください。たぬきさんも自覚されていることですが、児童手当は子どもの教育費として、きちんと貯めておくことが大事。
ボーナスについては、住宅ローンの返済比重が高く、厳しいこともあるかもしれませんが、半分の60万円は必ず貯蓄すると決めましょう。
これで、年間78万円。お子さんが大学進学までの17年間で約1300万円貯めることができる計算ですから、お子さんの教育費、大学進学については、問題ありません。今の段階では、お子さんの教育費のめどを立てることが優先です。
◆アドバイス2:これ以上、ローンを組むのはNG。借りられる額ではなく、返せる額
今後の大きな出費としては車の買い換えですが、故障がちの1台は仕方ないとして、2台目は、もう少し先延ばしすることを検討してください。
現在、住宅ローンの返済が年間で134万円。それに来年からは太陽光発電のローンが増額になり、年間で26万円。合わせて約160万円のローン返済を抱えています。
年収(児童手当を除く)が468万円ですから、年収の34%がローン返済に回されていることになり、かなり負担となります。その上、自動車のローンも加わるとなると、家計に占めるローンの割合が高くなりすぎて、ボーナスから毎月の赤字の補てんをするような家計になりかねません。
ご主人の勤務先の信用力が高いからだと思いますが、おそらく、自動車ローンの審査もおりるでしょう。
でも、ローンは借りられる額ではなく、返せる額で考えなければいけません。今の状態でも、やや厳しいといえるのに、これ以上のローンはNGです。頭金を貯めて、できるだけ現金、または少額のローンで済むようにしてください。
◆アドバイス3:たぬきさんが働き始めれば、家計は改善。保険の見直しは今すぐに
お子さんが幼稚園に入られたら、復職されるということですから、ぜひ、そこから貯蓄のスピードも早めましょう。ただ、あと2年ありますから、それまでにできる家計の見直しにも着手してほしいと思います。
具体的には、保険と通信費です。
保険については、ご主人が会社で入られている保険の内容を確認してください。その内容次第では、現在加入中の生命保険は解約できるかもしれません。
少なくとも、現在の保障額5000万円は多すぎです。住宅ローンに付帯している団体信用生命保険にも加入しているはずですから、保障額を2000万円に減額しても、問題ありません。
お子さんが加入している共済も気になります。お子さんの保険は不要です。通院しているということですが、多くの自治体では幼児の医療費は無料、または助成金があります。
ご病気が重篤であれば、申し訳ないことですが、家計から出せないほどの医療費がかかっているのでしょうか? その点は、自治体などで確認してください。
通信費については、ご夫婦2人で2万2000円は高いように思われます。光ケーブル回線の料金は別枠で計上されているので、この通信費はスマホ2台ということでしょうか。家族割をはじめ、通信費を抑えるプランは検討されていますか?
毎月の家計自体は、それほど問題があるわけではありません。あともう一歩、見直しができるとしたら、通信費なので、ご夫婦で相談なさってください。
お2人目をご希望とのことで、授かられることをお祈りしますが、今しばらくはご主人の健康を維持すること、生活と貯蓄のペースをつかむこと。この2つを目標に頑張ってください。
◆相談者「たぬき」さんから寄せられた感想
ずっとお金の相談をしたかったのですが、やっとできました。いろいろ不安で保険も入っていましたが、必要ないかもしれないですね。まずはやれることから頑張っていきたいです。ありがとうございました。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
文=あるじゃん 編集部