◆公立小学校・中学校・高等学校の在学者数が約17万人減少
日本には、国立・公立・私立の幼稚園、幼保連携型認定こども園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校、各種学校が約5万5000校(短期大学、大学、高等専門学校は除外/令和5年度)あります。
うち公立は約3万6500校(昨年度より約380校減少)で、小学校の98%、中学校の91%、高等学校の72%、特別支援学校の95%、義務教育学校の97%、中等教育学校の61%を占めます。
少子化に伴い、在学者数は昨年より16万6564人(小学校10万1477人、中学校2万8840人、高等学校3万6247人)減少しました。一方で、義務教育学校と中等教育学校、特別支援学校はそれぞれ8259人、267人、2750人増加しています。
出所:令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値を公表します。(令和5年12月20日公表)文部科学省
◆中学校・高校の教師で定年退職するのは6割強
総務省の「令和4年度地方公務員の退職状況等調査」によると、令和4年度に教育職に就いている地方公務員の離職者数は4万4280人。
内訳は、定年退職2万6708人、早期退職1081人、勧奨退職2484人、普通退職(自己都合や諭旨免職による退職など)1万3515人、懲戒免職137人、その他(分限免職、失職、死亡退職)355人で、定年退職は60%にすぎません。
◆公立教師の60歳定年退職手当は平均いくら?
公立の教員は、地方公務員ですので退職手当は地方自治体、都道府県や市区町村から支給されます。平均支給額を、総務省の「令和5年給与・定員等の調査結果等」を基にご紹介します。
◇都道府県:60歳定年退職者への退職金支給額トップ5
1位:兵庫県/2312.8万円
2位:岡山県/2287.1万円
3位:三重県/2284.8万円
4位:静岡県/2283.5万円
5位:京都府/2273.0万円
47都道府県の教育公務員60歳定年退職者への平均支給額は約2225万円です。支給額のトップは昨年と同じ兵庫県で、昨年より10万円減の約2313万円です。最下位との差は約213万円、支給額が平均以上は27都道府県です。
◇政令指定都市:60歳定年退職者の退職金支給額トップ5
1位:名古屋市/2285.9万
2位:静岡市/2285.4万円
3位:岡山市/2276.8万円
4位:浜松市/2246.4万円
5位:千葉市/2244.7万円
20政令指定都市の教育公務員60歳定年退職者の平均支給額は約2195万円です。支給額のトップは昨年と同じ名古屋市で、ほぼ40万円少ない2285.9万円です。最高額と最低額の差は約292万円で、昨年より約60万円拡大しました。平均支給額より多く支給しているのは14団体です。
◇市区町村:60歳定年退職者への平均支給額トップ5
1位:東京都江東区/2572.7万円
2位:兵庫県尼崎市/2401.6万円
3位:神奈川県横須賀市/2391.0万円
4位:兵庫県明石市/2316.8万円
5位:兵庫県西宮市/2311.6万円
市区町村1721団体のうち教育公務員の60歳定年退職者の退職手当平均支給額のデータがあるのはわずか21団体です。そのデータによると、平均支給額は約2196万円。13団体が平均額より多く支給しています。最高額と最低額の差は約826万円です。
◆公立教師の定年退職金は平均約2200万円。民間企業の2割弱増し
民間企業の退職金平均給付額はどのくらいなのでしょうか。「令和5年就労条件総合調査・結果の概況(退職給付(一時金・年金)の給付実態)」(厚生労働省)によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)は1896万円、高校卒(管理・事務・技術職)は1682万円です。
*「就労条件総合調査」は、常用労働者30人以上を雇用する全国の主要企業を対象に5年ごとに実施される。今回は約6400社を対象とし約3800社から回答を得た。
日本経済団体連合会の「2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」(3年ごと実施)では、管理・事務・技術労働者(総合職)の大学卒は約2243万円、高校卒は約1953万円です。また、給与所得者の70%を占める中小企業従業員のモデル定年退職金は、大学卒が約1092万円、高校卒は約994万円です(東京都産業労働局「令和4年 中小企業の賃金・退職金事情」(隔年実施))。
以上の結果から、公立教師の定年退職手当額の平均約2200万円は、大企業の総合職の大卒とほぼ同額、全国企業の大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の2割弱増し、中小企業の大学卒の約2倍相当額になります。
◆普通離職の60%弱が35歳未満
公立教員の不足が社会問題化しています。原因の一つに「教師を希望する人が減った」があります。多岐にわたる業務や超ともいえる長時間労働、給特法による低額の超過手当、など厳しい労働環境と待遇からブラックとも揶揄(やゆ)される職種を志望する人が減少するのはうなずけます。
より深刻と思われるのが、若手現職の離脱です。先にご紹介しました教育職公務員の普通離職者(在職期間の通算を伴う退職者等を除く)の内訳を見ると、35歳未満までの離職者が58.3%(25歳未満9.8%、25歳以上30歳未満30.1%、30歳以上35歳未満18.4%)とほぼ6割に上るのです。「意欲だけで働き続けるのは無理!」なのでしょう。
ブラックに近い職場で頑張って子供たちを育てている教師への退職手当の支給額、あなたはどう思われますか?
文:大沼 恵美子(ファイナンシャルプランナー、年金アドバイザー)
大沼FP・LP設計室代表。FPとして2002年に独立開業。「健康は食のバランスから、貯蓄は生活のバランスから」という考えを提唱する。企業や地方自治体等の各種セミナーやFP資格取得講座、福祉住環境コーディネーター資格取得講座の講師も務める。
文=大沼 恵美子(ファイナンシャルプランナー、年金アドバイザー)