「今ではお客さんが"なるほど・ザ・ワールド"よ」と笑うのは、かつてフジテレビで放送されていた人気クイズ番組の名物レポーターとして知られる迫文代(さこふみよ)さんです。
世界中から集められたグッズたち
迫さんは50歳を機に鎌倉の一軒家カレー専門店「コペペ」を開店、2024年のGWで15年目を迎えました。
コペペの情報はスペインなどの旅行サイトでも紹介されており、筆者が取材に伺った2024年11月24日の日曜日も、イタリア、韓国、スペイン・・と5か国の観光客が訪ねてきたそうです。その話題の中で冒頭の一言が飛び出しました。
店内には迫さんがレポーターとして60か国を飛び回るなかで集めた品々が展示されています。当時1年の3分の2は海外で過ごされていたとのことで、一部屋にはとうてい納まらないほどのコレクションがあるそうです。
気分により展示物は変わるそうですから、カレー屋さんと同時に、ちょっとした古美術ギャラリーの印象もあります。
コレクションの一部をご紹介
部屋中のカラフルなコレクションの中から、特に筆者の興味を引いた一部をご紹介します。
パプア・ニューギニアで見つけたという木彫り人形。
イタリアで出会ったピノキオ、隣は日本で出会ったタイ製の兎。
セーシェル諸島にしかないという双子椰子。
ロフトにある荷物を隠しているのは、カメルーンの女性が身体に巻いていた布なんだそうです。
人生の転機から、がむしゃらの挑戦
迫さんは50歳のタイミングで離婚という人生の転機を経験されています。息子さんが1人いて、これからどうしようかと考えた時、クイズ番組引退後グルメレポーターとして日本全国数千軒ものを飲食店を食べ歩いたなかで、もっとも感銘を受けた銀座の老舗バー「TARU(樽)」のランチカレーを思い出しました。
「カレー屋なら独りでもできるかもしれない」と一念発起し、当バーに飛び込んで半年間を修行。そして2009年のGW、コペペのオープンに漕ぎつけました。
当初は開店前の10時から11時の1時間、毎日宣伝のためのチラシ配りをし、これを10年間続けたそうです。
「街頭インタビューをさんざんやっていたから、人と絡むのは得意分野」と迫さん。「でも子供がいたからね、がむしゃらだった。チラシを渡し、何時にいらっしゃいますかと聞いてその場で予約をもらっていた。そうしたら必ず来ていただけるから」
自慢のカレーは6種類、手作りデザートも
コペペ自慢のカレーは全部で6種類。※記載の値段はすべて税込です。
ビーフカレー 1,200円焼きチーズカレー 1,200円サラダカレー 1,200円きのこカレー 1,300円牛すじカレー 1,500円天使のエビカレー 1,700円お客様の半分は観光客、残りの半分はご近所さん。
店内は天井が高く広々としていて、木製の家具からはぬくもりを感じ、落ち着きます。大きく切られた窓からは周囲の家並みや木々の緑が見え、解放感があります。
プリンにタルトと手作りデザートも用意されているので、近所の主婦たちが午後にゆったりと世間話を楽しむ場所としても使われているそうです。
一番人気のきのこカレーが登場
一番人気というきのこカレーが運ばれてきました。
野菜5種類ほどに加え、とんこつと鶏がらを煮込むこと5時間。牛コツを入れることもあるそうです。
まずは野菜と動物性のうま味の濃縮したスープが作られ、そこへ10種類のスパイスを調合してルーが完成します。
たっぷりのルーに隠れているライスのお米は天日干し。
手間暇をかけ、丁寧に作られています。
使われるきのこは香りのよいマッシュルームの1種類のみ。
運ばれるなり濃厚な生クリームとバターの香りが立ち上ってきます。
最後に焼きあげられているから香ばしさを強く感じ、引き寄せられます。
鎌倉のお店らしく国際色に富んだ観光客がお店を訪ねてくると話す迫さんに、「体当たりレポートで著名な迫さん目当てですか?」と聞いて、「カレーが美味しいからよ!」と訂正される筆者でした。
迫さんが世界で一番美しいと思う場所
ポタージュのようになめらかなルーをスプーンですくい、口に運ぶと、何層ものうま味と豊かなスパイスの風味がふくらみます。
スパイシーさは程よく抑えられていて、じっくりと煮込んで抽出したベースとなるスープの味を大切に守っているように思いました。
付け合わせのサラダはお店のすぐそばにあるレンバイ(鎌倉市農協連即売所)で地元農家さんに直売されている鎌倉野菜です。これ以上なく新鮮で、色も鮮やかです。
迫さんが愛情と一緒に注いでくれる自家製ドレッシングはほんのりレモン風味。あとで知りましたが、小笠原レモンを使用しているそうです。
カレーを味わいながら、迫さんに「60か国を回られた中で一番美しいと思った場所はどこか」と尋ねてみました。
答えは意外でした。
迫さんは、それは日本の小笠原だと答えました。35年間、毎年通っているそうです。
「毎年1か月ほどお店を閉めて、小笠原に行く」と迫さんは話します。「小笠原は海と空の色が一緒なの。ボニンブルーと呼ばれる色で、見るたびに感動を覚える。ダイビングが趣味だから、海に入れば野生のイルカのほか、クジラにも出会える。冬にはザトウクジラが子育てにやってくる。海中で出くわしたら軍艦みたい」
店名の「コペペ」は、小笠原諸島で中心的な役割を果たす父島の西部にある小さな海岸「コペペ海岸」から取ったそうですから、迫さんの小笠原愛を感じます。サラダのドレッシングに小笠原レモンが使用されていたり、デザートメニューの中にそれと名の付くタルトがあったりするのも頷けました。
迫さんは店内の一角を指さしました。
「少し前まではアフリカの木彫りを展示していたのだけど、ちょうど今は小笠原の和紙で作られた魚たちを飾っている」と迫さん。「天井近くを飛んでいる青いのはセミホウボウという魚。あれも和紙でできているのよ。あそこに飾ってある魚の名前、全部わかるんだから」
テラス席の隅に並べられているのは小笠原の珊瑚でした。
迫さんにとって鎌倉とは
長崎出身、かつ海外でも日本でも、数えきれないくらい色んな場所を訪ねた迫さんが、なぜ鎌倉に住み、鎌倉にお店を出すことを選んだのでしょうか。
「鎌倉には海も山もある。それに海外にいる時には教会の鐘の音が聞こえたものだけど、鎌倉ではお寺の"ぼーん、ぼーん"というあの梵鐘の音が聞こえる。そこが好き。東京にすぐに出られるしね」と迫さんは答えてから、続けます。
「息子が一人立ちした後だから、もうがむしゃらにとは思わない。手伝いに入ってくれる友達と一緒に、マイペースにこのお店をやっていきたい。好きな立ち飲み屋さんに週に1~2回飲みに行けたりして、自分が楽しくやれる範囲でいいのよ」
迫さんは「実はね」と教えてくれました。
「子供の頃に連れて行って気に入ったのか、実はね、息子は今小笠原に移住しているの。だから小笠原に行くと家族に会える。これまでは年に1回、1か月ほどだったけど、もしかしたらこれから2回3回と増えていくかもしれない」
だんだん小笠原に引き寄せられていく迫さん。
コペペ海岸の名前は、ギルバート諸島から来てその場所に住み着いた「コペペ」という名の先住民のおじいさんに由来します。コペペじいさんもその昔、迫さんのように小笠原の魅力に取りつかれてしまったんだろうか、そんなことを考えました。
最後に迫さんの写真もとお願いしたら、クイズ番組のレポーター時代のポーズで応じてくれました。
鎌倉のみならず湘南エリアには、カレーの名店が数知れず存在しています。それでも、お気に入りのお店はいくつあっても足りないのがカレー屋さん。
迫さんのこだわりがなみなみと注がれたきのこカレーで、ご自身のお気に入りラインナップをまた1つ充実させられるかもしれませんよ。
コペペ
営業時間
11:30 - 16:00
定休日
不定休
電話番号
0467-24-9919
支払い方法
現金のみ(カード不可、電子マネー不可、QRコード決済不可)
禁煙・喫煙
禁煙
設備
テラス席、リビング席
アクセス
JR鎌倉駅徒歩261m
住所:神奈川県鎌倉市小町1-14-10
駐車場:なし
基本情報
お店の種類
レストラン、カフェ
ジャンル
洋食
メイン料理
カレー、タルト等デザート
利用シーン
お一人様、家族・子連れ、ランチ、デート、女子会
こだわり条件
落ち着いた空間、子ども歓迎
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