大谷翔平、山本由伸、タイラー・グラスノー、ブレイク・スネル(写真=GettyImages)

◆ メジャー屈指の先発ローテーションへ

 今季のワールドシリーズを制したドジャースが連覇に向けて着実に歩を進めている。

 ジャイアンツからFAになっていたブレイク・スネルが、新たにドジャーブルーを身に纏うことになった。ドジャースは、今オフのFA市場で目玉の一人になっていた左腕と5年総額1億8200万ドル(約277億円)で合意。メディカルチェックを経て、近日中に正式発表される見通しだ。

 これまでサイヤング賞を2度獲得するなど、スネルの実力は折り紙付き。これでドジャースの先発ローテーションには、大谷翔平、山本由伸、タイラー・グラスノーに次ぐ4人目の“エース候補”が加わることになった。

 さらにドジャースは、ロッテからポスティングシステムでメジャー移籍を目指す佐々木朗希の有力候補の一つにも挙げられるなど、先発投手の補強はまだ道半ば。来季は6人制のローテーションも視野に入っており、一線級の先発投手をあと1~2人補強する可能性は高い。来年3月に迎える日本での開幕をどんな布陣で臨むのかに注目が集まる。

 ただ、スネルの加入で誕生した現時点の“4本柱”にも課題はある。大谷はトミー・ジョン手術による1年以上のブランク明けで、左肩も手術したばかり。山本は今季夏場に約3か月の戦線離脱を経験し、グラスノーとスネルも今季それぞれ2度の負傷者リスト入りがある。どの投手もフルシーズン働けるかどうかは、蓋を開けるまで分からない状態だ。

 ただ、もし4人が健康ならメジャー屈指のローテーションが誕生することに間違いはないだろう。

 ちなみにメジャーリーグが現在の3地区制となった1994年以降、先発投手陣のシーズン防御率が最も良かったのは2022年のドジャース(2.75)だった。以下、2位が2011年フィリーズ(2.86)、3位が21年ドジャース(2.93)と続くが、いずれもどちらかというと投高打低と呼ばれたシーズンだった。

 一方で、打高投低の時代に驚異の先発防御率をマークしたのが、1997~98年のブレーブスだ。97年が3.05、翌98年には3.06をマークしたが、それぞれリーグ平均の先発防御率は4.45と4.55だった。

 特に超豪華ローテーションを構築したのは、5人が16勝以上をマークした98年。18勝9敗、防御率2.22で最優秀防御率に輝いたグレグ・マダックスを筆頭に、20勝6敗で最多勝を獲得したトム・グラビン、17勝3敗でリーグ最高勝率の.850をマークしたジョン・スモルツのほか、ケビン・ミルウッド(17勝)、デニー・ネーグル(16勝)がシーズンを通して活躍した。

 また、質では98年のブレーブスに到底かなわないが、珍しい記録を達成したのが2003年のマリナーズ。先発陣の防御率自体は3.92と特筆すべきものではなかったが、なんと先発で登板した投手が5人しかいなかった。シーズン中に登板順の入れ替わりは多少あったが、ジェイミー・モイヤーとフレディ・ガルシアが33試合、ライアン・フランクリン、ジョエル・ピネイロ、ギル・メッシュの3人が32試合に先発。開幕から閉幕まで5人でローテーションを回し続けた。

 果たして2025年のドジャースは史上最強と呼ばれるローテーションを構築することができるのか。佐々木の動向など、今後も目が離せない。

文=八木遊(やぎ・ゆう)