マイコプラズマ肺炎が過去最多に流行している中、厚生労働省はインフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。手足口病、溶連菌感染症と今年は様々な感染症が特に流行しています。感染症の流行がピークを迎える冬に向け、家庭でできる感染対策を総合内科専門医・感染症専門医の小幡 史明先生にお伺いしました。

■2024年冬はインフル、コロナ、胃腸炎等が流行

――今年の冬はどのような感染症が流行するのでしょうか?

小幡先生:2024年11月時点で、今年の冬に流行する可能性が高い感染症について解説します。特に注目すべき疾患は、「インフルエンザ」です。インフルエンザウイルスは毎年冬に流行し、特に高齢者や基礎疾患を持つ人に重篤な影響を及ぼします。今年もワクチン接種が推奨されており、早期の予防が重要です。流行の兆しとして、地域によっては感染者が増加し始めています。

次に、「マイコプラズマ肺炎」は特に子供や若年層で多く見られる感染症で、咳や発熱が主な症状です。冬季に流行する傾向があり、最近のデータでは学校や保育所での集団感染が報告されており、注意が必要です。

また、「感染性胃腸炎」も冬に流行しやすい疾患で、ノロウイルスやロタウイルスが主な原因です。特に集団生活を送る場所(学校、保育所、施設など)での感染が多発するため、手洗いや衛生管理が重要です。最近の報告では、ノロウイルスの感染者が増加している地域もあります。

さらに、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」も引き続き注意が必要です。変異株の影響やワクチン接種後の免疫低下が懸念され、感染者数の増加が報告されています。特に冬季は人が密集するため、再度の流行が予想されます。

最後に、「肺炎球菌による肺炎や髄膜炎」も冬に流行する可能性があり、特に高齢者や免疫力の低下した人に対してリスクが高いため、ワクチン接種が推奨されています。

これらの感染症は冬季において特に注意が必要であり、予防策としてワクチン接種、手洗い、マスク着用、人混みを避けることが重要です。早期の症状に気付いた場合は医療機関への受診をお勧めします。感染症の流行を防ぐために、個人の衛生管理がますます重要になります。

■咳や喉の痛みを伴う呼吸器系感染症が例年よりも流行

――すでに様々な病気が流行していますが、今年の感染症の特徴はありますか?

小幡先生:2024年の感染症の流行状況にはいくつかの顕著な特徴があります。今年はインフルエンザやマイコプラズマ肺炎、COVID-19などの呼吸器系感染症が例年よりも多く見られ、特に咳や喉の痛みを伴う症状が顕著です。これにより、学校や保育所での集団感染が増加しており、感染拡大のリスクが高まっています。特に、感染症が冬季に増加する傾向があるため、これからの季節に向けての対策が重要です。

また、子どもから保護者への感染が特に目立っています。学校や保育所での集団感染が家庭内に持ち込まれるケースが増加しており、子どもたちが感染することで家庭全体に広がる傾向が強まっています。このような家庭内感染は、特に高齢者や基礎疾患を持つ家族にとって深刻な影響を与える可能性があります。子どもたちは学校や遊び場で多くの人と接触するため、感染拡大の温床となりやすいのです。

新型コロナウイルスの流行が落ち着く中で、感染対策が緩んでいる傾向も見られます。マスクの着用や手洗いの徹底が少なくなり、これが呼吸器系感染症の広がりを助長しています。特に、冬季は人が密集することが多く、屋内にいる時間が長くなるため、感染症のリスクが高まります。これに対処するためには、再度の感染対策の徹底が求められます。例えば、換気を良くすることや、定期的に手を洗うことが基本的な予防策です。

インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種が重要視されており、特に高齢者や基礎疾患のある人にとっては感染症予防のためにワクチン接種が必要です。ワクチン接種によって、感染症の重症化を防ぎ、入院や死亡のリスクを大幅に低下させることができます。今年は特に、ワクチン接種率が低い地域では流行のリスクが増加するため、地域社会全体での接種促進が求められています。

さらに、新型コロナウイルスの変異株が引き続き発生しており、感染力が強いものも存在するため、再度の感染拡大が懸念されています。これらの変異株は、特にワクチンの効果に影響を与える可能性があり、注意が必要です。変異株の監視体制を強化し、早期に対応することが重要です。

■日常的に感染対策が必要

――感染対策のために、日常から取り入れたい対策を教えてください

小幡先生:感染症の流行を防ぐためには、日常生活の中で実践できる感染対策を取り入れることが重要です。まず、室内の空気をこまめに入れ替えることでウイルスや細菌の濃度を下げるため、定期的に換気を行いましょう。次に、手洗いは感染症予防の基本であり、外出から帰ったときや食事前、トイレの後には必ず手を洗い、石鹸と水で20秒以上かけて丁寧に洗うことが推奨されます。アルコール消毒液も併用すると効果的です。

また、特に人混みや公共交通機関を利用する際はマスクの着用が重要で、飛沫の拡散を防ぎます。インフルエンザワクチンの接種も冬季に流行するインフルエンザウイルスから身を守るために重要で、高齢者や基礎疾患を持つ人は特に接種が望ましいです。

免疫力を高めるためには、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動が大切で、ストレスを軽減し心身の健康を保つことが感染症予防に寄与します。 家庭内での感染拡大を防ぐために、共用部分や接触頻度の高い場所を定期的に清掃・消毒することが重要で、風邪やインフルエンザの流行時には特に重点的に行いましょう。

最後に、風邪やインフルエンザのような症状が見られた場合は無理に外出せず、自宅で休養し、症状が重い場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。これらの感染対策を日常生活に取り入れることで、感染症のリスクを低減し、健康を守ることができます。家族全員が協力して取り組むことで、より効果的な感染症予防が実現します。感染症の流行を防ぐために、一人ひとりの意識と行動が大切です。

■健康的に冬を過ごすポイントは免疫力

――最後に、冬を健康的に乗り切るためのコツを教えてください

小幡先生:冬は寒さや乾燥により感染症のリスクが高まる季節ですが、健康的に過ごすためにはいくつかのポイントを押さえることが重要です。

まず、免疫力を高めるためには、十分な睡眠を確保することが不可欠です。睡眠中に体は回復し、免疫が強化されますので、毎晩7~8時間の質の高い睡眠を心がけましょう。また、ストレス管理も重要です。ストレスは免疫機能を低下させるため、リラックスできる時間を持つことが大切です。次に、生活リズムを整えることも忘れてはいけません。規則正しい生活を送ることで、体内時計が整い、健康的な身体を維持することができます。毎日同じ時間に起床し、食事を摂ることが推奨されます。

栄養バランスの取れた食事も健康維持に欠かせません。特に冬は、ビタミンCやビタミンD、亜鉛を含む食材を意識的に摂取することが重要です。これらの栄養素は免疫機能をサポートし、感染症予防に役立ちます。新鮮な果物や野菜、魚、ナッツ、全粒穀物などを取り入れた食事を心がけましょう。また、温かい食事は体を内側から温め、血行を促進するため、冬季には特におすすめです。

さらに、適度な運動を取り入れることも健康維持に役立ちます。運動は血行を促進し、ストレスを軽減する効果があります。外が寒い場合は、室内でできるストレッチやヨガなどを行うことで、体を動かすことができます。最後に、こまめな水分補給も忘れずに行いましょう。冬は乾燥しやすく、喉や肌が乾燥するため、意識的に水分を摂取することが健康を保つために重要です。

これらのポイントを実践することで、冬を健康的に乗り切ることができます。免疫力を高め、生活リズムを整え、栄養バランスの取れた食事を心がけることで、感染症のリスクを低減し、元気に冬を過ごしましょう。

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