「ツーシームを覚えてガラッと変わったと思います」。
ロッテの八木彬は確かな手応えを得て今季を終えた。
今季を迎えるにあたって八木はストレートを磨いてきた。3月6日のDeNAとのオープン戦ではストレートは同日の最速154キロを計測するなど、ストレートは全て150キロ超え。「去年とかより球も結構強くなりました。やってきたことがちょっとずつできているかなという印象で、それができたら当然150キロを超えてくる考えでやっていた。その通りに行っているかなと思います」。力強いストレートを投げ込み、4月7日に今季初昇格。
今季初登板となった4月9日の西武戦、続く14日の楽天戦ともに1回をパーフェクトリリーフ。特に楽天戦は7球中6球がストレートで、全て150キロを超えた。4月19日の日本ハム戦で初めて3-1の勝ち試合の7回に登板した。先頭の田宮裕涼を153キロのストレートで中飛に打ち取ったが、続くレイエスに2ボールから投じた3球目のストレートを被弾。二死後、上川畑大悟、水野達稀に連続安打を浴び失点。1回2失点と悔しい登板となり、翌日に一軍登録抹消となった。
八木は4月19日の登板について、「緊張もありましたけど、ワクワクしていたところもあったので、力が入ってボール2とかになって、カウント負けのホームランを打たれた。実力的にまだやなと思いました。低めに集めてというところだと思います」と反省。
ファームから強いストレートを投げていて、昇格してからも2試合連続無失点に抑えていただけに、4月19日の登板はもったいない印象を受けた。
「チャンスやと思って、やっと来たという感覚でやってたんですけど、空回りした部分もあった。もう1回やらなと思っています」。
ストレートに関しては「通用するなと思ったんですけど、ストレート1本だと無理だなという感じですね」と手応えを掴みつつ、ストレートのみで一軍の打者と勝負するのは難しいと実感。
ファームでもストレートで押すパワーピッチングが目立ち、「右バッターのインコース、自分のピッチングを幅を広げるためにインコースを使ったりというところをやっているので、真っ直ぐが多くなっているという感じですね。今までは真っ直ぐでファウルを打たせてフォークで三振を取るパターンだったので、真っ直ぐが多くなっているという感じです」と課題を持って取り組んでいた。
そんな中で、先発に配置転換になってから右打者のインコースにストレートではなく、「汚い真っ直ぐという感じですね」とツーシームを投げるようになった。
右打者のインコースにきれいな真っ直ぐではなく、ツーシームを投げるようになった理由はなぜなのだろうかーー。
「前の真っ直ぐは怖さがないというか、強さがあるけど怖さがない。綺麗すぎると感じだったので、もっと球的に汚く、変化してやった方が打ち取れるんじゃないかなと二軍監督に言われてそれでやってみたらハマったみたいな感じです」。
ツーシームを習得するにあたって、「(今季まで)二軍投手コーチの大谷コーチにもともとシュートピッチャーでということで細かく教えていただいて、いろいろ相談しながら試行錯誤しながら投げていったら、よくなりました」と今季まで二軍投手コーチだった大谷智久氏に助言をもらった。
ストレートにこだわってきた中で、ツーシームを主体とすることに葛藤は「なかったです」とキッパリ。「あともなかったですし、何かを変えないといけないというのが自分の中にもあった。変えることに全然そういうのもないので、今までもそういうことでハマることもありましたし、変えることの新鮮さを感じてやっていました」と前向きに新球習得に励んだ。
ファームでは7月17日のDeNA二軍戦以降、4試合連続で先発を務めたが、8月7日の西武戦では7回を投げ98球と少ない球数で長いイニングを投げた。「ゴロアウト、打たせて取ることに関しては球数少なくできてきているのかなと思います」と本人も好感触を掴んだ。
ファームで先発を経験したことで、「先発は5回、6回をどう投げるかという感じで、それが意外と力を抜ける感じというか力まず行けたかなと思います」と投球の幅が広がった。
ツーシームを投げるようになったことで、変化球も活きるようになった。武器にしているフォークは「汚い真っ直ぐが活きているぶん、結構決まって空振りを取れているんではないかなと思います」と自己分析。
変化を怖れず、右打者のインコースにツーシームを投げ込み凡打の山を築く投球スタイルで一軍の打者をねじ伏せ、9月10日のオリックス戦では4-1の6回に登板し、「すごく緊張しましたし、初球浮いてしまってそのあとは立て直したんですけど、力が入りすぎていたなと思いました」と1回を無失点に抑えてプロ初ホールドをマークした。
8月18日のソフトバンク戦から9月16日の西武戦にかけて、ツーシームで打たせて取る投球で4試合連続無失点。「ゴロアウトを打ち取りたいと思っているところで、ゴロアウトを打ち取れているのがすごく面白いというか、それを狙ってやっていて、今まではできていなかったのでそれができてたので結構嬉しいですね」と、ゴロアウトで打ち取れる喜びを覚えた。
ツーシームを覚え、空振りを奪うスタイルから打たせて取る投球にモデルチェンジしたが、武器であるフォークの使い方については「今まで通りという感じで、カウントだったりというのをそこは変わらず」としながらも、「速いけど落ちる(芯外して)という感じになっています」と落差の大きい球ではなく、スプリット系のバットの芯を外す球になっている。
9月23日の楽天戦、9月26日のオリックス戦に失点しシーズンを終えたが、その原因についても「最後上半身が強くなって、下半身を使えず、上だけで投げて真ん中に入って打たれたという感じなので、下半身を使って投げればコースに投げられるかなという感じです」としっかりと自分の中で理解している。
「最後ちょっと打たれたんですけど、中盤から7月、8月くらいに覚えて、バッターの反応が変わったので、勝負できる球だなというのは自分の中であります」と八木。
ツーシームを活かすために「強いて言ったらカーブを投げたいかなという気持ちです。緩急が欲しいなという感じですね」と、以前投げていたカーブよりも「もう1個速くてもいいかなと。130出なくて、120後半のカーブを投げられたらいいなと思っています」とカーブ再習得を目指す。
今季掴んだ“自信”を“確信”に変えるためにも、シーズンオフの過ごし方が大事になってくる。「最後下半身を使えていなかったところは疲れもあると思うので、ランニング、トレーニングでしっかり追い込んで、疲れないような体づくりをしたいと思います」。来年は「開幕から一軍でフル回転できるようにしていきたいと思います」と意気込む。ツーシームを武器に打たせて取る投球に磨きをかけ、来季ブレイクするか注目だ。
取材・文=岩下雄太