江崎グリコは、世界保健機関(WHO)が推奨する「1日5g未満」をベースに、食塩相当量「1食1.5g以下」を目指し、カレー、シチュー、丼などさまざまなシリーズを開発している。11月28日、メディア向けに「塩分過多解決への挑戦宣言&試食会」が開催され、取り組みの背景や商品のこだわりなどが説明された。

  • 販売する食品事業商品の塩分量の見直しを行っていくことを宣言! 「塩分過多解決への挑戦宣言&試食会」が開催された

■毎日の食卓に『おいしさと健康』を

発表会冒頭、江崎グリコ 執行役員 健康イノベーション事業本部長 木村幸生氏が登壇。木村氏は「私たちは、皆さんの良質なくらしのため、素材を厳選したり、素材の力を使って創意工夫することにより、『おいしさと健康』を提供し続けていく」と話し、今回新たに健康事業を再定義していくと説明。子どもからシニアまでずっと健康で、元気でいてもらえるよう健康寿命の延伸につながる新しい食文化を提案していくと木村氏。

  • 江崎グリコ 執行役員 健康イノベーション事業本部長 木村幸生氏

「毎日の生活を豊かにしていくということを考えた時に、毎日の食卓にあがる食品を健康にしていく、それが取り組む理由でこだわっているところです。その中で、塩分に着目しました」と取り組みの背景を語る。

世界保健機関(WHO)が推奨する塩分摂取量は、成人の塩分摂取量の目標を1日あたり5g未満としているが、日本人の塩分摂取量は約2倍。塩分は、体にとって大事な栄養素ではあるものの、摂りすぎはさまざまな病気のリスクになる。また、世界的に見ても、日本人は従来より塩分摂取量が多いという。

こうした背景から、同社は「1日当たり1.5g以下」という独自基準を決め、現行商品の食塩相当量の見直しを順次行っている。一方、おいしい味をキープするために、出汁やブイヨン、香味野菜、香辛料などを使いながら、健康で美味しいものを作っていくと話す。

最後に木村氏は「私たちの取り組みは、メインの商品があって塩分調整した商品があるということではなく、メイン商品を全て塩分を調整していくことで、皆さんの健康に資するような商品展開を行っていきます」と力を込めた。

■素材の風味に着目し、おいしさも実現

続いて、同社 健康イノベーション事業本部 商品開発部の池田紀子氏が登壇し、レシピの変更点や商品の概要について紹介した。

現在「クレアおばさんシリーズ」のレシピ設計を行っている池田氏は、「クレアおばさんのシチュー」については、約2年にわたる開発で、味作りにはさまざまな苦労があったと話す。

  • 江崎グリコ 健康イノベーション事業本部 商品開発部 池田紀子氏

開発当初、塩味を減らしたところ、味にメリハリがなくなり、味のバランスが崩れてしまうことが判明。さらに、香りも弱く感じられるということが分かったそう。しかし、試作を重ねていくうちに、「塩味を減らすと素材の味を感じやすくなる」ということに気づき、素材の風味が感じられるような美味しさを引き出す方針に発想を転換。「出汁、ブイヨン、香味野菜、香辛料を活用することで新たな美味しさを実現できた」と池田氏は話す。

クレアおばさんのブランドで使用している「3段仕込みチキンブイヨン」は、鳥を長時間煮込んで旨味を引き出し、にんじんと玉ねぎを加えて甘みを出す。最後に、セロリを短時間煮込むことで香りを加え、それぞれの素材の味わいを効果的に引き出した。ビーフシチューとハッシュドビーフは、ブイヨン・香辛料・香味野菜を増量。味覚分析センサーで調べたところ、旧品(2023年)と比べてリニューアル後の方が、旨味とコクがアップしたそう。

プレミアム熟カレー・カレーZEPPINで使用している「特製ブイヨン」は、ポークブイヨンを原料段階で「煮込み」と「冷却」を繰り返すことで、旨味成分が溶け合い、脂肪分と水分が均一に乳化し、まろやかでコクのある風味を作り出している。プレミアム熟カレーは、熟成ブイヨンと熟成スパイスを増量したことで、旨味を強化しつつ、香りも華やかに。カレーZEPPINは、ブイヨンをチキンからポークベースに変更。香辛料も増量し、香りとコクを強化。

炊き込み御膳で使用している「一番だし」は、2023年秋に素材を見直し、だしのおいしさを追求。4種の素材を組み合わせることで、それぞれの風味や香りが複雑に絡み合い、より深い香りと味わいを実現。今秋は、鶏肉・ごぼうをそれぞれ増量している。

■塩分調整しつつ、おいしさを作り出すために

発表会後半では、ゲストとしてミシュランガイド東京(2021年~2024年)に一つ星として掲載されている麻布「和敬」の店主・竹村竜二さんも加わり、トークセッションが行われた。

池田氏は、商品開発について「私たちは、少しでも多くのお客さまの困りごとを解決できたらと思ってます。健康面はもちろんそうですが、お客さまセンターに寄せられる生の声をうまく商品開発に活かしていきたいですし、お客さまが気づいてない課題に対しても、いつの間にか健康になっていたとか、お役立ちできるようになると嬉しいなと思ってます」と話す。

続けて、木村氏は「難しいとは思いますが、毎日食べているものを皆さんがそんなに苦労せず、いつの間にか健康になっている状態をつくるという取り組みってすごく大事だなと思っています」と取り組みの重要性について語る。

今回、同社は出汁やブイヨンにこだわり開発。日本料理にも欠かせないものだが、竹村さんは「出汁だけが美味しすぎるというのは、逆に美味しくないという方向に進んでいくので、出汁・具材、またお米など全てが相まって最後の美味しさになってくる」とバランスの難しさを指摘。

  • 麻布「和敬」の店主・竹村竜二さん

その後、竹村さんが「炊き込み御膳 とり五目」と「クレアおばさんのビーフシチュー」、「プレミアム熟カレー 中辛」の3品を試食。「炊き込み御膳 とり五目」を食べた感想について「もっとたくさん食べたくなりますね。もう少し味が強く来るのかなと思っていたのですが、お米の味も感じられて、すごい優しい味です」と高評価。続いて、池田氏が担当した「クレアおばさんのビーフシチュー」を試食し、「素材の風味とスパイスがしっかり感じられます。母親に作ってもらったような、ほっとする味で美味しいですね」と話し、この感想を受けて池田氏も安堵した様子。

木村氏も笑顔を浮かべつつ「家庭の中で毎日美味しいなと言ってもらえる食卓を作っていけたらと思っています。これが私たちの使命で、めんどくさいことは私たちがやりますので、皆さんは楽しく食べて健康になってもらえたら嬉しいですね」と話していた。

同社の食品事業では、11ブランド中8ブランドの食塩相当量の見直しが完了。「カレー職人」「炒飯の素」「洋風炒めご飯の素」については今後見直し予定とのこと。