ガチで"ヤバい一杯"を丸亀製麺が生み出した。残念ながら簡単には味わえない。物理的にも、システム的にも制約だらけである。しかし、どうにかしてその一杯を多くの人に食べてもらいたい。そう切に願いながら、その詳細をここに記したい。

もう一度繰り返すが、この一杯だけはガ・チ・で・ヤッベェぞ〜!

ついに丸亀製麺から"三つ星麺職人"が登場!? 新施設「心の本店」とは

"ヤバい一杯"について語るには、まず丸亀製麺の「心の本店」について説明しなければならない。

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    丸亀製麺の新施設「心の本店」(香川県丸亀市・広島)

「心の本店」は、丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスが掲げるスローガン「食の感動」を体感できる施設として香川県丸亀市の離島「広島」に建てられ、11月27日にはオープニングセレモニーも開催された。2025年4月以降、丸亀製麺の"三つ星麺職人"を育成したり、社員研修を行う施設として稼働予定だという。

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現在、丸亀製麺の麺職人の最高位は"二つ星"で、"一つ星麺職人"が1,700名以上いるなか、"二つ星麺職人"は全国にわずか10人しか存在しない。このことからもその称号の重みがうかがえるが、今度はさらに上をいく"三つ星麺職人"をこの「心の本店」から輩出しようというのである。

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しかも「心の本店」では、従業員たち自らがうどんの原材料となる小麦の栽培から製麺までをすべて担い、さらには瀬戸内海の海水から塩を手作りしたり、天ぷらにする野菜を栽培したりもするなど、徹底的にうどんと向き合っていくのだという。うどんに対する愛情が尋常じゃねぇ……!

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セレモニーに登壇したトリドールHDの粟田社長は、「この施設は単なる研修の場にとどまらず、麺職人たちが切磋琢磨し、技術と知識を共有することで新たな創造と革新が生まれる場になることを目指しています」「多くの才能が開花し、讃岐うどんの伝統が次世代へ受け継がれていくことを期待しています」と主張した。

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    トリドールHD代表取締役社長 兼 CEOの粟田貴也氏

そのうえで、セレモニーに駆けつけた島民たちに向けて「地域社会との連携を深め、交流の場としても機能することを目指しております。島民の皆様に愛され、支えられる存在となるよう精進していきたいと考えております」と訴えかけた。

挨拶に立った丸亀市の松永恭二市長は、「心の本店」のオープンについて「うどんは古来、讃岐の食文化であり、香川の人なら誰もがうどんにこだわりと愛着、誇りを持っています。『心の本店』が地域活性化の大きな推進力になるとともに、島民の皆さんや島を訪れる多くの方々にとって、うどん文化を通じた交流と感動体験の助けとなり、 この島でさらに郷土愛が育まれるよう切に願っています」と期待を込めた。

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    丸亀市長・松永恭二氏

その後、登壇者らによるうどんの食べ比べ会を実施。ここで登場したのが、普段から丸亀製麺で販売されている"かけうどん"と、ここでしか作られていない"手作りうどん"である。後者は「心の本店」で栽培された小麦から作られたうどんが使われており、出汁も通常のかつお、昆布出汁ではなく、いりこ出汁を使っているという。

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うどんを堪能した松永市長は、「いつもの丸亀製麺のほうは、表面は柔らかくてツルツルなんだけどコシがある。心の本店のうどんはいりこの香りが強くて麺もおいしい」と感想を口にした。

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いざ、実食! 「心の本店」でしか食べられないうどんの味は……

その後、地元のみなさんに心の本店のうどんが無料で振る舞われた。しかも、厨房で手を動かしているのは全国に10人しかいない"二つ星麺職人"たちである。なんと贅沢なことか。

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せっかくなのでその恩恵に預かろうと列に並んだところ、なんといつもの丸亀製麺のかけうどんと食べ比べられるというではないか……ありがとうございます!

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    左が「心の本店」のうどん、右が丸亀製麺のかけうどん

いや〜、どっちもウマそうだな……。でもまずはいつもの丸亀製麺のほうからいただきますか。

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いただきます!

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うわぁ……めちゃくちゃウマい……! さすが"二つ星麺職人"! マジでウマい! かつおと昆布で作られた出汁はクリアなのに旨みがたっぷりで、厳選された国産小麦で作られた麺はツルッツルで喉越しも最高だ。やっぱりウマい……。"二つ星麺職人"たちが直々に作ってくれているので、いつも食べている丸亀製麺より確実に美味しいのだろう。こんなにウマいのかよ〜!

それではいよいよ、「心の本店」でしか食べられない手作りうどん、行っちゃおう。いただきます……!

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ウッッッ…………マーーー!! 何コレ、ウマすぎんだろッッッ!!!! 全然違う! 丸亀製麺のかけうどんと全然違う……! いや、どっちのほうがウマいとかいう話ではないんだけど、もう完全に別物!

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麺はふわふわで柔らかく、だけど中には確かなコシがある。麺には"ふすま"(小麦粒の表皮部分)が紛れ込んでおり、これが小麦の風味をいっそう際立てているようだ。麺の色合いもちょっと全粒粉っぽい雰囲気が出ていて特別感がある。

でもマジでスゴいな。この麺の小麦、丸亀製麺の従業員さんたちが自ら育てたんだもんなぁ。こんなウマい食べ物に変わるって、ちょっとマジで感動的なんだけど……。そういえば屋外に、収穫された小麦が置かれていたっけ。

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そしてスープもスープでめちゃくちゃウマい……! いりこの濃厚な風味と強い香りがぶわ〜っと口の中に広がり、オープニングセレモニーで冷えた身体に染み込んでいく。これはヤバい……! この一杯はヤバすぎる! 丸亀製麺の"二つ星麺職人"たちが作った、「心の本店」でしか食べられないこのうどんはガチで"ヤバい一杯"である。

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こちらは「心の本店」のうどんに舌鼓を打つ地元のみなさん。食後の感想をうかがってみたが、「香川のうどんとは味が違うけどこれはこれですごく美味しい!」「讃岐うどんとより優しい味わいで、出汁もしっかり出ている」「讃岐うどんは太くてシコシコしてるけど、このうどんは柔らかくてコシがある。どっちが美味しいかはわからないけど、どっちも美味しい。好みの問題だね!」と絶賛! きっと誰しもうどんには一家言をお持ちだろうが、ストレートに褒めていたのが印象的だった。

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丸亀製麺の「心の本店」に行くには、JR丸亀駅から徒歩10分のところにある丸亀港からフェリーに乗る必要がある。アクセスがいいとは決して言えないだろう。そして残念ながら、あくまで「研修施設」なので、仮に訪問したところでうどんを味わうことはできない。

しかし、地元の皆さんとのコミュニケーションを取る場としての機能も担うわけだし、イベントなどの催しも定期的に展開していくことが予想される。最初は地元の皆さんしか参加できないかもしれないが、いずれ観光名所となり、ツアーなどが組まれるようなことがあれば……。

そう考えてみると、結構ワンチャンあるのでは?いや、きっとあるだろう。こんな"ヤバい一杯"、表に出さないなんてあまりに勿体ないもんね。