日に日に寒さが増し、夜が長くなってきた。年末に向けた慌ただしさも相まり、この時期はどうにも心が荒んでくる。やらなければならないことは山積みなのに、体が動かない。布団のなかでスマホをいじるばかりの鬱屈とした日々を過ごしている人も多いのではないだろうか。
そんな長い冬の夜のささくれだった心を癒すのに最適なゲームに出会ったので、ぜひご紹介したい。タイトルは『Recolit(リコリット)』。インディーゲームサークル「Image Labo」と「Marudice」が共同開発した作品だ。
モノローグ調のテキストがユニーク! 夜の世界を歩き回り、人々の「困りごと」を解決しよう
『Recolit』は、「明かり」を頼りに進む、ピクセルアートの謎解きアドベンチャーゲーム。宇宙服を着た少年が暗闇を漂い、海に不時着したところから物語がはじまる。機能が停止した宇宙船を乗り捨て、海から上がると、そこには1人の少女が佇んでいた。
ぼんやりとオレンジ色に光る少女に表情はなく、幽霊か幻かのように見える。近づくと、「バケツに水を汲んできてほしい」と声をかけられた。しかし、夜の暗闇のなかではバケツをうまく持つことができない。すると、少女がろうそくに火を灯してくれた。本作では、どうやら「明かりのなかで見えるもの」にだけ触れられ、アイテムを持ったり置いたりアクションができるようだ。
バケツを持ち上げると、画面左上にアイテムの説明文が表示された。通常であればメニュー画面のアイテム一覧で確認できそうなものだが、テキストを読んでみると、宇宙服を着た少年のモノローグとしてつづられていることがわかる。なんともユニークな演出だ。
バケツに水を汲んで少女のところに戻ると、今度は花火をつけようと提案される。どうやら少女は、海辺で手持ち花火を楽しむつもりだったらしい。みどり色の花火が燃え尽きると、少女は礼を言ってゆらゆらと暗闇のなかへ消えていってしまった。
宇宙服を着た少年は、消えた少女を探すために海辺から住宅地へと進んでいく。夜の道には、少女と同じように光る住人たちがぽつぽつと点在していた。住人に近づくと、ぼやき声が聞こえてくる。
コンビニ前の中学生は喉が渇いて飲み物を欲していたり、横断歩道の前でスマホをいじる女性は信号が変わるのをずっと待っていたり、それぞれに何か「困りごと」を抱えているようだ。
プレイヤーは宇宙服を着た少年を操作し、さまざまなアイテムをゲットしながら、住人たちの困りごとを解決していく。自販機の下で見つけたコインで飲み物を買ってきてあげたり、街灯を点けて押しボタン式信号機のスイッチを押してあげたり、住人たちを手助けしながら、ちょっとした謎解き要素が楽しめるのだ。ゲームとはいえ、ささやかな善行を積み重ねていくのは気持ちがいい。
バケツと同様に、それぞれのアイテムに触れると画面にモノローグの説明文が表示される。そのユニークな言い回しに、「わかるわかる」と共感を覚えつつ、くすりと笑えるのが実に心地よかった。
また、アイテムの説明文や住人たちの困りごとの調査内容は、「タブレット」で見返すことができる。未取得のアイテムはシルエットで表示され、一度触れるとリストに追加されていく。この収集要素が絶妙にコレクター心をくすぐり、取り逃がしてはならないとプレイヤーを夢中にさせる。アイテム収集やサブクエ好きの人には、たまらない仕様だ。
住宅地にいる住人たち全員の困りごとを解決させると、彼らも少女と同様にゆらゆらと暗闇のなかに消えてしまい、次のステージへの道がひらいた。こうして宇宙服を着た少年は、夜の世界にいる人々と出会い、別れ、少女を追いかけながら思い出を辿っていく。
大切な思い出を呼び覚ましてくれる、懐かしい景色と心あたたまる物語
海辺や住宅地のほかにも、『Recolit』にはさまざまなステージが登場する。マンションの敷地、駅の改札口やホーム、揺れる電車内など、いつかどこかで見たような懐かしい気持ちになれる景色が続く。
なかでも筆者が特に感動したのは、科学館のステージだ。全4階建ての科学館は、各階にバラエティに富んだ展示コーナーが用意されている。地球誕生から生命の進化を辿る展示物や迫力満点の恐竜模型、発電機の体験コーナー、ピタゴラ装置など、現実の科学館さながらのギミックが多数登場する。実家の徒歩圏内にある科学館に通っていた筆者は、「こんなのあったなぁ!」「懐かしい!」と童心にかえって楽しんでしまった。
なお、科学館には「スタンプラリー」があり、とある困りごとを抱える親子のために各コーナーを見学してスタンプを集めるという調査がある。まるで遠足にでも来たかのようなワクワク感を味わえるので、プレイする際にはぜひスタンプラリーに挑戦してほしい。
宇宙服を着た少年は、少女に導かれながら科学館を探索し、やがて宇宙をテーマにした展示コーナーに辿り着く。そして、宇宙服の展示物をきっかけに、少年は少女と交わした「大切な約束」を思い出し、ぼやけていた少年と少女の思い出が、だんだんとハッキリしてくる。
これ以上はネタバレになってしまうので多くは語らないが、ラストの胸がチクリと痛むような、切ない思い出の数々には涙を禁じえなかった。懐かしさにあふれた景色も、甘く苦い思い出も、きっと誰しもが心の奥にしまって大人になっていく。そんな「タイムカプセル」のような気持ちを呼び覚まし、心をあたたかく包み込んでくれるのが、『Recolit』という作品なのだ。
ちなみに、『Recolit』は、「再び」を意味する「Re」、「Collect」の「Co」、lightの過去系である「lit」を組み合わせた造語なのだそう。センチメンタルになりがちな季節、このゲームを心の「明かり」に灯し、“何者にだってなれる気がしたあの日”の思い出を振り返ってみてはいかがだろうか。
プレゼントにおすすめ! 製品情報&期間限定リリース記念キャンペーンも
『Recolit』は、Steam、itch.io、BOOTHにて販売されているほか、2024年10月17日にはNintendo Switch向けのパッケージ版とダウンロード版が発売された。Nintendo Switch向けのパッケージ版には、三方背ケースと特製サウンドトラックCDが付属する初回生産分の豪華特典版もあるので、気になった方はぜひチェックしてみてほしい。
自身で楽しむのはもちろんのこと、ちょっとした贈り物として誰かにプレゼントするのも素敵だ。
また、Nintendo Switch版のリリースを記念した『Recolit』のオリジナルブロマイド&シールを、ローソンプリント&ミニストッププリントにて販売している。こちらは2024年10月17日から12月16日までの期間限定キャンペーンなので、この機会を逃さずゲットしよう!
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