2024年11月13日、デルは都内でデルアンバサダーまもなく4万人突破大感謝祭を実施しました。2016年に開始したデルアンバサダープログラム)も8年経過し、登録者数は3万人台に突入。じつは2020年に行われた際には「もうすぐ2万人」で企画されたそうですが、開催日にギリギリ2万人を突破したそうです。

  • デルのコンシューマー向け施策「デルアンバサダー」はもうすぐ4万人ということでイベントが開催されました

2023年9月には3万6千人を突破していたデルアンバサダーですが、今年はまもなく4万人……に到達せずとなりました。とはいえ、熱心な人にとってはDELLのコンシューマー製品ほぼすべてを見て触れることができる貴重な機会です。

今回は約200名が参加されていますが、アンバサダーイベントということもあり、基本的には真剣に製品を見たり、写真を撮ったり担当者に質問したり機会を最大限に生かしている方が結構見受けられるというのが特徴的。秋葉原の自作パソコンイベントでもここまで熱心に見ている人はあまりいないというのが実感です。

最近は周辺機器、特にバッグ類のアピールがイベントで行われています。今回もバッグがテーブル2つほどを占有して展示されていました。最近のSDG'sの盛り上がりもあり、デルのバッグ類はサステナビリティに注力していて、リサイクル素材が豊富に活用されている点がポイントです。

今回は開場の2カ所にAI PCの体験コーナーが用意されているほか、ゲストとして日本マイクロソフトの方も出席されており、来年にかけてパソコン業界が力を入れていくのはココだというポイントが垣間見えていました。

  • 単なるイベントではなく、コンシューマー向け製品+担当社員がずらりと勢ぞろい。出る製品の魅力を伝えるアンバサダー向けでこれだけの規模で展示されることはあまりありません

  • Alienwareはノートパソコン、デスクトップ、モニターだけでなく、周辺機器もセット

  • 担当者に対して、熱心に質問をしている様子も見られます

  • 小型カメラで製品を撮影されています。後日ブログか何かに載せるのでしょうか

  • 最近の推しとして、バッグ類も大量に展示。最近の施策として環境にやさしいリサイクル素材や水資源を節約した染色技術などが入っているというのもポイント

イベントはマーケティング統括本部 E-ビジネス&リテール事業本部 本部長の横塚知子氏のスピーチと乾杯でスタート。横塚氏の肩書が微妙に変化し、eコマースも担当するためか「今月末頃に大きなセールがある」とこっそり言及される場面も。後日正式発表があり、「ブラックフライデー2024」として、11月26日~12月9日まで行われることが明らかにされています。

  • マーケティング統括本部 E-ビジネス&リテール事業本部 本部長の横塚知子氏。最近肩書が変わりました

具体的な製品に関しては松原大氏が説明していました。

AI PCとは端的に言うと、AIの推論をパソコン内だけで行えるパソコンのこと。具体的には従来パソコンに入っていたCPU、GPUのほかにAI推論に必要な「単純だけど超高速」な演算プロセッサ(NPU:Neural network Processing Unit)が入っています。

以前はGPUで肩代わりさせていることも多かったのですが、学習ではなく推論の場合はGPUよりも単純なプロセッサの方が効率的ですし、AI機能を強化したゲームでGPUの処理性能がかかると表示に影響を及ぼします。

NPUの処理能力の単位はTOPS(Tera Operations per Second)を使い、1秒間に何億回の演算ができるかを示しています。通常のCPUの場合はFLOPSと言って、浮動小数点演算の処理回数を使いますが、NPUは整数演算を大量に行うためのプロセッサと思えばよいでしょう。

  • デル・テクノロジーズ コンシューマー&リテール ジャパンノートブック アソートメントプランナー兼コンサルタントの松原大氏

  • 今回の推しはAI PC、今までのパソコンに加えてAIを活用した様々なことがクラウドを使わなくてもできるようになります

NPUを駆使することで、生成AIのような高度な機能をパソコン本体で処理できるようになります。従来AI機能を使うためにはクラウド側のGPU等を使って処理していましたが、この場合インターネット接続が必要となるほか、企業での利用の場合機密情報が洩れるという懸念があります。パソコン本体でAIが動くようになるとこのような懸念もなくなります。

松原氏はデルが現在販売しているAI PCにはランクに応じて“松竹梅”と3カテゴリの製品に分類していることを紹介。“松”は昨年から登場しているNPU内蔵PC。“竹”はQualcommプロセッサを使ったCopilot+PC対応製品で“梅”がCopilot+PCに対応したx86製品。現時点ではCore Ultra Series2を使ったXPS 13のみですが、今後ラインナップが増えそうです。

  • 現在のAI PCのラインナップ。多くはNPU入りましたの梅レベルですが、今年6月からqualcommのsnapdragonを使用した竹レベルの製品が登場。そして9月からIntelがCore Ultraプロセッサのシリーズ2製品を発売、今後はAMDも含めて松レベルの製品が登場します

松原氏は画像生成AIでよく使われるStable Diffusionで画像を生成していましたが、これはGPUとNPUで役割分担をして動かしており、パソコン内部でもそこそこの速度で画像を生成してくれますし、テキストの生成AIもネットワーク接続なしで動作します。

また、CyberLink社のPowerDirector 365を使った動画編集のデモも行いました。本製品にはNPUを使用したAIボディエフェクトの機能があり、人物の動きをAIが認識し、ミュージックビデオのようなエフェクトをリアルタイムで追加するデモが行われました。

複数のリサーチ会社が「2027年には全世界のパソコン出荷台数のAI PCの出荷比率が60%になる」という予測値を出しており、パソコンメーカーも半導体メーカーも次のメインストリームの機能になると大きな期待を寄せています。

  • その松レベルのXPS13を使って、ローカルで画像生成を行うデモを行いました

  • 右上に見えるのがタスクマネージャー。インテルはOpenVINOを使ってプロセスをCPU/GPU/NPUと割り当てて使えるので、それぞれに処理が割り当てられている様子がわかります

  • CyberLinkのPowerDirectorにもAIを活用したエフェクトが追加。ミュージックビデオのような効果が簡単に追加できるようになりました

  • LLMとしてはLlaMa 3.2の3Bパラメーターを使ってチャットボットもデモ。展示会では70Bのデモも行っており、ローカル生成AIもかなり広がってきた印象です

マイクロソフトのAI PCへの対応に関してはゲストの小澤拓史氏が紹介しました。マイクロソフトはCopilot+PCを現在推進しており、その要件の一つがNPUが40TOPS以上あるということ。先のAI PCではNPUがあることを要件としていたのでCopilot+PCの方が厳しい指標となっています。

Copilot+PCの特徴としては5年前のPCと比較して5倍の処理速度、最大22時間のローカルビデオ再生、法人モデルで採用されているSecured Core PC準拠で高いセキュリティ、もちろんAIによる新しいPC体験も得られます。

  • 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 コンシューマー事業本部 モダンライフ戦略本部 本部長の小澤拓史氏

  • 2024年5月にマイクロソフトから発表されたCopilot+PC。従来からのパソコンに加えて大幅な性能向上とバッテリーの持ちに加えて、40TOPS以上のNPUを条件としているため、AI性能も高いというのが特徴です

マイクロソフトが提供するAI機能は現時点ではテキストでイメージを入力することで画像を生成する「イメージクリエイター」、手書きのスケッチとテキストで画像を生成する「コクリエイター」、オンライン会議等で顔を明るくしたり、背景をボカす、カメラ目線にする「スタジオエフェクト」と音声をリアルタイムで字幕表示する「ライブ キャプション」が利用できます。

今月末から予定されている機能拡張として、操作履歴を記録して自然言語で検索できるリコールやペイントでの塗りつぶしや消去機能等が紹介されました。もう1つOffice 365 Copilot機能を紹介。これはOfficeアプリケーションにCopilot機能を追加したもので、例えばPowerPoint上で旅行計画のプレゼンテーション作成をAIがサクッと作ってくれます。必要に応じて追加や補足編集する必要があると思いますが、たたき台があるのは便利です。

  • 現在提供中の機能がこちら。これらは(松原氏が梅として紹介した)NPUを搭載しているAI PCでも利用可能です

  • ペイントのコクリエイター機能。左側の「こんな感じ」と書くとAIが画像を生成してくれます

  • Teams等で活躍するWindows Studio Effect。背景のボカしや、自動フレーミングや常にカメラ視点にしてくれます

  • Copilotは現在マイクロソフトが力を入れている部分。Microsoft 365にもCopilot機能が付き、ドキュメント作成を手伝ってくれます

  • PowerPointで「家族旅行。初めての京都」で旅程と観光名所のたたき台を作ってくれます

  • 画像も入れるとかんたんに京都旅行のしおりが出来上がります

デルアンバサダーになると、デルのALIENWARE / XPS / モニターの貸し出し(過去の案内を見ると1カ月程度と結構長めです)を受けられたり、このようなイベントでデルのコンシューマー製品の新製品を見て触って、担当者に質問することもできます。

他にも製品の意見交換会もありましたし、結構いい会場(今年は東京アメリカンクラブ、去年はアンダーズ東京 Tokyoスタジオでした)で食事もある……というチャンスがあります。私はアンバサダーではないので、今回のような感謝祭の取材でしか行ってませんが、新製品の記者発表会の後にアンバサダー向けの説明会があったこともあり、いち早く新情報を得るチャンスもあります。

デルアンバサダーはデル製品の魅力を発信できる貴重な機会でもあるので、ちょっと気になったら登録されてみてはいかがでしょうか?

  • 横塚氏の乾杯に伴って食事も提供開始

  • アンバサダーと意見交換を行う横塚氏。昨年も同様の光景を拝見しています