サントリーがこのほど発表した適正飲酒啓発活動「ドリンク スマイル」。サントリーが40年にわたって推進してきた「適正飲酒」への啓発活動をさらに進化させたもので、飲む人も飲まない人も心地よく楽しめるお酒の場を創出することを目的としている。サントリー代表取締役社長の鳥井信宏氏、サントリーホールディングス執行役員 グローバルARS部長の宮森洋氏に、「ドリンク スマイル」の具体的な内容や酒類メーカーとしての在り方などを発表会で聞いた。
変わりゆく飲酒文化
鳥井氏は「高度経済成長期とともにウイスキーを中心としたボトルキープというスタイルが始まり、バブル景気の崩壊、リーマンショックと目まぐるしく世の中が変化する中、焼酎ブームあるいはハイボール文化が生まれました」と飲酒文化の変遷について振り返る。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って家飲みが定着。アフターコロナの現在は、コロナ禍や酒税法改正の影響によって消費者の価値観の多様化が進み、最近の調査によれば「2人に1人の消費者が4種類以上のお酒を楽しんでいる」ということが明らかになったという。こうしたニーズの変化に対して、ビールをはじめ、ウイスキーやジン、ワインなどの豊富なラインナップを生かして、消費者に寄り添っていきたいと語った。
これまでの適正飲酒啓発活動
同社では、1986年から業界に先駆けて「お酒は、何よりも適量です。」というメッセージを盛り込んだ「モデレーション広告」を全国紙に展開。1991年にはアルコール関連問題の専門部署を設置して社内のガバナンス体制を整備する。2011年からは社外への適正飲酒啓発セミナーを開始して、消費者に直接お酒に関する正しい知識と適正飲酒の大切さを伝えている。さらには、「責任ある飲酒国際連盟(IARD)」に設立当初から参画して、国内外問わずに適性飲酒に関する啓蒙活動を行ってきた。
こうした適性飲酒啓発の取り組みに加え、消費者にお酒の魅力をより知ってもらうため、このほど「ドリンク スマイル」を2025年から実施することを発表。鳥井氏は「お酒のある席でお酒を飲む人、飲まない人が分け隔てなく、お酒やノンアルコール、ソフトドリンクなど、それぞれのドリンクを持って幸せな時間を過ごせるように、 また笑顔のある場を共有できる"お酒ならではの価値"を大切にしていきたい」と語った。
「ドリンク スマイル」の象徴的な取り組みと位置づけている「ドリンクスマイルセミナー」では、俳優の吉高由里子さんが出演する動画で適正飲酒を楽しく学ぶコンテンツや、VR技術を使用したウイスキー蒸溜所のバーチャル見学などを企画しているという。企業、自治体、大学を対象に年間3万人の受講を目指していると目標を掲げ、「『ドリンク スマイル』の言葉の通り、お酒との共生社会とお酒をたしなむ文化の創造を通じて、新しい出会いや発見が生まれ、そこに命の輝きが生まれる社会を目指し取り組んでまいります」と鳥井氏。
酒類メーカーとしての責任あるマーケティング
宮森氏は、「お酒は人と人とのコミュニケーションを円滑にし、生活に彩り、潤いを与えます。 一方で、心身の健康にダメージを与え、ひいては周囲の人や社会に迷惑をかけてしまう。いわゆるアルコール関連問題を引き起こすこともあります」と飲酒におけるデメリットを指摘。
こうした問題に対して「モデレーション広告やセミナーを通した適性飲酒の啓蒙活動」「eラーニングや勉強会を通したサントリーグループ従業員に対する適正飲酒教育の強化」「不適切な飲酒につながる表現を未然防止したりなど、酒類メーカーとしての責任あるマーケティングの実践」「未成年飲酒や飲酒運転などの不適切な飲酒を防止するため、酒類業界と連携した取り組み」といった対応策を掲げた。
さらには、アメリカに構えるグループ会社のサントリーグローバルスピリッツ社がSNSやホームページを通じて適正飲酒に関するメッセージを発信し、全世界で10億人以上にメッセージを届ける計画も立てていると話した。
「ドリンクスマイルバー」とは?
「ドリンク スマイル」を体験できる場として、11月6日から10日までの期間限定で「ドリンクスマイルバー」が東京ミッドタウン日比谷で開催された。来場者は簡易パッチテストを通じて自身のアルコール耐性を確認、それに合わせたドリンクを楽しんだ。サントリーの過去のモデレーション広告も展示されており、お酒の魅力だけではなく適正飲酒の大切さに触れる機会を得られるものとなった。