ALSOK杯第74期王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグでは決着がつかず、11月25日(月)には永瀬拓矢九段と西田拓也五段によるプレーオフが東京・将棋会館で行われました。対局の結果、西田五段用意の作戦を堅実な指し回しで攻略した永瀬九段が118手で勝利。藤井聡太王将への挑戦権を獲得しています。

戦型は「永瀬対永瀬」!?

本局は挑戦者決定リーグで5勝1敗の成績を残した両者が挑戦権を懸けて戦うもの。リーグの直接対決では西田五段が勝利していました。振り駒が行われた本局は、先手となった西田五段が意表の作戦を披露。三間飛車から左桂を端に跳ねるのは永瀬九段の奨励会時代からデビュー当初に多用していた積極策で、ファンも「対永瀬戦に永瀬流」と盛り上がりを見せます。

左桂を跳ね出し首尾よく一歩得に成功した西田五段ですが、ここからの指し回しに苦労することに。居飛車側にじっと穴熊に囲われてみると攻め手の作り方が難しいのがこの作戦の泣き所で、実戦も戦いが一段落した局面は飛車のさばきの目途が立たずやや居飛車ペース。このあたり、西田五段は感想戦で「後手の馬が手厚く自信がない」と振り返りました。

4年ぶりの王将挑戦

駒の損得は互角ながら、玉の堅さと駒の働きで差がつき始め盤上は徐々に居飛車ペースに。優位に立った永瀬九段はここから丁寧な指し回しでリードを拡大しました。1筋に香を重ねてロケットの攻めを実現したのが大局を制する構想。端から美濃囲いを崩せば攻め手に困らない形で、最後に8筋で眠っていた飛車をさばいたのが挟撃の決め手となりました。

終局時刻は18時40分、最後は自玉の寄りを認めた西田五段が投了。永瀬九段が4年ぶり2度目となる王将挑戦を決めた瞬間でした。永瀬九段は局後「(藤井王将との2日制での対局に向け)結果を出すことができてよかった」と安堵の表情をのぞかせました。七番勝負は2025年1月12日(日)・13日(月)に静岡県掛川市の「掛川城 二の丸茶室」で開幕します。

水留啓(将棋情報局)

  • 永瀬九段は「藤井王将とは2日制を戦ったことがなく新鮮なタイトル戦(になる)」との感想(撮影・編集部)

    永瀬九段は「藤井王将とは2日制を戦ったことがなく新鮮なタイトル戦(になる)」との感想(撮影・編集部)