ASUSのゲーミングブランド「ROG」から、初のラピッドトリガー対応キーボード「ROG Falchion Ace HFX」が登場しました。コンパクトな65%レイアウトでありながらフルサイズキーボード並みの機能性を持っています。価格は31,800円。はたしてその価値があるのか、詳しくレビューしていきます。
コンパクトながら機能性を兼ね備えたデザイン
ROG Falchion Ace HFXは、スペースを節約しながら機能性も確保した65%レイアウトを採用。サイズ(幅×奥行×高さ)は315×115×35mmで、デスク環境をすっきりさせたいゲーマーにも最適です。なお、英語配列のみのラインナップとなっており、日本語配列は選択できません。
重量は634gと特別に重いわけではありませんが、滑り止めゴムのおかげでゲームプレイ中にズレてしまうことはありませんでした。また、チルトスタンドによって3段階の傾き調整ができるので、自分にあった傾斜で快適にゲームプレイができます。
ポリカーボネート製のキーボードカバーが付属していて、ホコリを防いだり裏返して底面に装着することもできます。今までのROG Falchionシリーズに付属していたカバーよりもサイドを覆う部分の面積が減っていて着脱しやすくなっていました。
キーキャップはダブルショットPBTキーキャップを採用。ABS素材に比べ耐久性が高く、構造上印字が擦れて消えることもありません。さらに、「W」キーには突起があり、ゲーマーのホームポジションを直感的に把握できる設計も嬉しいです。
接続は有線のみ、2台のPCと接続可能
ROG Falchion Ace HFXは有線接続キーボードですが、本体背面にUSB Type-Cポートを2基備えていて、最大2台のPCと同時に接続できます。背面中央にあるスイッチで接続先を切り替えます。
作業用とゲーム用などで2台以上のPCがあるという環境の方にとっては、デスク上にキーボードを何個も置かずに済むので嬉しい仕様です。PCが1台だとしても、背面の左右にポートがあるため設置場所に応じた使い分けることができます。
背面にはインタラクティブな操作を可能にするタッチバーも
本体の背面にはタッチバーが搭載されています。スワイプとタッチ操作に対応していて、PC本体の操作やキー操作などができます。これによってキーの少ない65%レイアウトのキーボードでの機能性を補完しているというわけ。
同じく背面にある多機能ボタンを押すことで、タッチバーの操作をシステム音量・メディアトラック・キーボド輝度調整・アクチュエーションポイント・カスタマイズと切り替え可能。キーボード上部のLEDライトバーには、設定をリアルタイムで反映するライティングエフェクトが表示され、タッチバー操作時の挙動を確認することができます。
これまでのROG Falchionシリーズでは左側面にあったタッチバーが背面に移動したことで、キーボードを持ち上げた際の誤操作がなくなりました。地味な変更ではありますが、この新しい仕様によってストレスがかなり軽減しています。
スイッチは「ROG HFX Magnetic Switches」。ルブ済みで気持ちの良い打鍵感
キースイッチには独自の磁気式スイッチ「ROG HFX Magnetic Switches」を採用。主なスペックは以下のようになっています。
- 初期押下圧:40 gf
- 総合押下圧:55 gf
- キーストローク:4.0 mm
- アクチュエーションポイント:0.1mm~4.0mm
- ストローク耐久性:1億回
磁気によって接点処理が行われるため部品の摩耗がなく、1億回の打鍵に耐えるキー寿命を備えています。押下圧はスタートが40gf、エンドが55gfと一般的なリニアスイッチに比べるとやや重め。ルブ済みなのでキー押下時の感触も心地良いです。
アクチュエーションポイントは、ASUSの総合ソフトウェア「Armoury Crate」から0.1~4.0mmの範囲で0.1mm間隔で調整できます。独自にチューニングされたルブ済みスタビライザーは、摩擦が少なく、スペースキー、Shift、Enterなどの長いキーでもスイッチ本来の打鍵感を実現しています。
高速USBマイクロコントローラーを搭載し、最大8,000Hzのポーリングレートを実現しています。ほとんどのゲーミングキーボードに比べ最大8倍の高速応答が可能で、1ミリ秒の遅延を0.125ミリ秒まで短縮しています。
また、ROG Falchion Ace HFXは打鍵時の静音性にも優れています。通常、キー入力を行うときには、打鍵音だけでなくキーが底まで打ち込まれた際に筐体から発生する振動音や反響音も聞こえます。しかし、ROG Falchion Ace HFXは2層のPORONフォームと3層のシリコンからなる5層の耐振動・消音レイヤーを採用しキーストローク時の振動や操作音を吸収、非常に高レベルな静音性を実現しています。
待望のラピッドトリガー機能に対応!!
このキーボードの最大の特徴はラピッドトリガー機能です。
ラピッドトリガーは、キーがオンになる「アクチュエーションポイント」とオフになる「リセットポイント」を柔軟に制御することで、従来のキーボードでは不可能だった高速かつ連続的な入力を可能にする機能です。
通常のキースイッチでは、アクチュエーションポイントとリセットポイントが固定されています。例えばアクチュエーションポイント2.0mm、リセットポイント1.8mmのキースイッチだと、入力をオンにするためには2.0mm以上キーを押し込み、オフにするためには1.8mmの深さに戻るまでキーを離す必要があります。
ラピッドトリガー機能でアクチュエーションポイントとラピッドトリガーの設定値を0.1mmにした場合、キーがどの深さにあっても0.1mm押し込めば入力がオンになり、キーがどの深さにあっても0.1mm戻すと入力がオフになります。
キーを離した瞬間に入力がオフになるので、VALORANTのようにストッピングが重要なタイトルにおいて、キーを離してのストッピングが高速になります。もちろん逆キー(「A」キーで左移動している場合は「D」キー)でのストッピングも通常のキースイッチよりも速いです。
この差は一般的なメカニカルキースイッチと比べて数ミリ秒とごくわずかですが、実際にラピッドトリガーオン・オフを切り替えてゲームをプレイすればはっきり分かるレベルの差があります。一度ラピッドトリガー対応キーボードを使うと通常のキーボードには戻れなくなってしまうでしょう。
また、ラピッドトリガーのオンオフを瞬時に切り替えられるスイッチを背面に搭載しているため、ゲームタイトルによって使い分けたり、ゲーム以外の作業時には誤操作を防いでくれる工夫が嬉しいポイントです。
高速な方向転換を可能にするスピードタップモード
ROG Falchion Ace HFXにはスピードタップモードという機能も搭載されています。この機能はキーボードで反対方向に移動するキー入力が同時に検出(SOCD:Simultaneous Opposing Cardinal Directions)された場合に素早い操作を可能にするものです。
タイトルにもよりますが、一般的なFPSゲームではSODC時に互いの入力がキャンセルされて、どちらかのキーを離すまで硬直が起こる場合が多いです。しかしスピードタップモードを有効にすると、最後に押したキー入力を優先するため、左から右へ移動する際、「A」キーを押したままでも「D」キーの入力が可能になるため、高速な方向転換が可能になります。
VALORANTではカウンターストレイフ(進行方向とは逆方向に入力することで射撃精度を高めるテクニック)にかかる時間差を解消し、射撃のタイミングを極めると非常に強い切り返し撃ちが可能になります。しかし、逆キー入力でストッピングを行っている場合は、スピードタップモードがオンだと逆キーを入力してもストッピングせずに移動してしまうため相性が悪いです。
Apex Legendsでは「レレレ撃ち」と呼ばれる弾除けのために左右に小刻みに動きながら銃撃する動きが素早く行えるようになります。これらはスピードタップモードがオフでも同様の動きは可能ですが、オンの状態と比べてシビアなキー入力が必要になります。
スピードタップモードはデフォルトではオフになっていて、Fnキー+Tabキーの簡単な操作でオンにすることができるので、ゲームタイトルや自身のプレースタイルに合わせて柔軟に切り替えられます。なお、この機能はゲームタイトルによっては違反行為であると明言されている場合もあります。使えるかどうかをよく確認してから有効化しましょう。
Armoury Crateで様々なカスタマイズが可能
ROG Falchion Ace HFXは、ASUSの統合ソフトウェア「Armoury Crate」を導入することで様々なカスタマイズが可能です。
キーボードの割当を変更する「キー」、アクチュエーションポイントやラピッドトリガー、スピードタップモードの設定を行う「アナログトリガー」、タッチバー操作時の挙動を設定する「タッチバー」、LEDイルミネーションを設定する「LEDライト」、ファームウェアのアップデートを行う「ファームウェアの更新」の5つのメニューが用意されています。
ラピトリ対応で完成度が上がったハイクオリティなゲーミングキーボード
ROG Falchion Ace HFXは、打鍵感、機能性、カスタマイズ性、応答速度の全てにおいて妥協のないゲーミングキーボードです。特にラピッドトリガーやスピードタップモードといったゲーム向けの機能が光り、シビアな入力精度が要求されるFPSやMOBAタイトルを主にプレイするゲーマーにとっては間違いなく魅力的な選択肢でしょう。
価格が31,800円とやや高めではありますが、最先端の入力性能とカスタマイズ性を求める方にはその価値を十分に感じられるはずです。