RIZAPグループは11月14日、2025年3月期第2四半期連結決算(IFRS)を発表した。chocoZAP(チョコザップ)事業が継続的に成長した結果、連結営業黒字を達成し、前年同期比・前四半期比ともに+34億円の増益に至った。今後は広告宣伝費を縮小する代わりに、顧客満足度の向上に注力するなどの方針も示された他、新たにNTTドコモとの業務提携も決まり、新しい取り組みも始めるという。

  • RIZAPグループ 代表取締役社長の瀬戸健氏

急成長の速度と矢継ぎ早な仕掛けで注目を集めるchocoZAP、その背景と今後の展望について、RIZAPグループ 代表取締役社長の瀬戸健氏に話をうかがった。

chocoZAPが迎えた「実りと収穫の時期」

――好調なchocoZAP事業がけん引し、前年同期比でプラス34億円の改善と発表されましたが、ここまでchocoZAPが好調を継続できた理由をお聞かせください。

実りの時期と収穫の時期がきた、というところが一番大きいですね。チョコザップ事業を始めたのが2022年7月ですが、この2年ちょっとの間に直営店を1700店舗以上展開するなどリスクを負った投資を続けてきました。そして今、ようやく投資した分のリターンを確保できるタイミングに差し掛かっているということです。

――事業開始から2年ちょっとでここまでの規模に達するというのは、予想どおりだったのでしょうか?

大体、想像どおりの結果だと思います。まだ10店舗程度しか展開していなかった時期から、ほぼほぼこういう計画を描いていましたし、特に予定がずれたりもしていません。

ただ、chocoZAPを運用する中で、想定できていなかったトラブルなどが起こったりすることは多々ありましたし、それをまさに今ひとつずつ改善している最中です。例えば今は広告宣伝費を従来の半分程度に抑え、浮いた分を顧客満足度向上のための施策に振り分けています。ただ収穫するだけでなく、お客さまの満足のために投資を行っていくステージに入ったということですね。

このタイミングで顧客満足度の向上に注力するワケ

――なぜこのタイミングで"顧客満足度の向上"に一層注力し始めたんですか?

収益としてキャッシュフローがプラスになり、営業利益も四半期で黒字になるなど、基盤が整ってきました。このタイミングで我々が一番すべきことは何か。それはただ単に成長を求めるのではなく、お客さまに満足していただいた状態で成長することが次のステージに上がるうえで不可欠だろうと確信しています。逆に言うと、そうしない限り次の成長もありません。

1坪あたりの会員数を見てみると、chocoZAPはとある大手フィットネスジムの約4倍。これはchocoZAPの魅力が伝わった結果とも言えますが、そもそも我々以外のフィットネスジムがあまり広告を打っていないからでもあるんですよ。

我々も広告を減らすことで、新規顧客獲得のペースは一時的に落ちるかもしれません。でも、それは甘んじて受け入れようと思っています。それよりも今は品質向上に力を入れ、顧客満足度を上げていきたいと考えています。

――退会率や休会率を改善するための対策も兼ねているのでしょうか?

実は、満足度と退会率・休会率の関係について、明確なデータは出ていないんですよ。例えばGoogleマップの評価が高い店舗と低い店舗で比較したりもしましたが、相関関係は見られませんでした。

「chocoZAPのマシンって、結構壊れているらしいよ」という噂(うわさ)が一人歩きした結果かもしれませんし、そうでないかもしれない。なかなか言語化は難しいところがあるんです。なので、因果関係の明確化にこだわりすぎるのではなく、自分たちで直接現場を見て、そこで感じたことに向き合いながら改善し続けていくことが重要だと思っています。

――今後、どのように顧客満足度を高めていこうとお考えですか?

普通のジムであればスタッフが常駐しているので、何かマシントラブルなどが起きてもリアルタイムですぐに対応できますが、chocoZAPはスタッフが常駐しておらず、まずは遠隔での確認になります。でも、それだと抽象的でなかなか現状を正しく判断できないんですね。

これまでいろんな対策を講じてきましたが、コールセンターだとすべての問い合わせに対応しきれなかったり、チェックシートだと対応までにタイムラグが生まれてしまったりといった課題がありました。

でも、今はマシンの二次元コードを読み込んでもらい、直接状況を入力してもらうことでリアルタイムに把握できるようになりました。2年間かけて、ようやく効果的な施策が見つかり始めているんです。これからはオンラインで、店舗ごとにマシンの故障状況や清掃スコアなどが一目でわかるナビ機能なども公開していく予定です。

――先日の決算説明会では「取り組むべき課題がさまざまある」とお話されていましたが、顧客満足度の向上以外にも課題はあるのでしょうか?

個別の課題は山ほどあります。やはりchocoZAPはライトユーザーが多いので、まだまだ運動について誤解している方も少なくありません。

例えば「運動は20〜30分継続してやらないと効果がない」とまことしやかに信じられていますが、実はそんなことはないんです。日本はまだ運動黎明期で、運動習慣がある人は日本人全体のわずか30%程度(※)。20〜30代の若年層に至っては15〜20%程度(※)にとどまっていますが、我々は健康的な毎日を過ごす上で、運動はもっとも効果的でコスパのいい投資だと確信しています。

これからは積極的に無料の健康セミナーなどを開いていくことで、無関心層の運動への参加意欲を高めていきたいですし、やはり我々が伝道師となって、運動のメリットを伝えていくことが社会的な使命だと受け止めています。

※ 厚生労働省「国民健康・栄養調査」(2022)より

NTTドコモと業務提携するに至った背景

――NTTドコモとの業務提携の発表も大きなトピックスだったかと思います。提携するに至った背景について教えてください。

ドコモさんも多様なサービスを持っていて、その中のひとつに、スマートフォン向け健康管理・増進アプリ「dヘルスケア」(330円)というサービスがあるんです(※)。ドコモさんは約9,000万回線をお持ちなので、その巨大な通信インフラとヘルスケアサービスを上手く繋げていきたいということを両社で話しておりました。

そこで今回、chocoZAPの月額料金3,278円で、ドコモの「dヘルスケア」も利用でき、さらにchocoZAPの月額料金の5%分となる最大149ポイントのdポイント(期間・用途限定)を進呈する「chocoZAP×ドコモパッケージ」を11月27日から提供することで話がまとまりました。まだ公表できないことも多いのですが、ドコモさんとは他にもさまざまな面で協業していく予定です。

※2024年12月1日から、「dヘルスケア」は月額330円から月額440円に改定する

――来月には熊本空港にもchocoZAPをオープンするなど、他企業との取り組みも加速されていますね。

空港では時間を持て余すことも多いと思いますが、さすがに何時間も余裕があるわけではありません。だからこそ、スポーツウエアに着替えずサクッと10分程度の運動ができるchocoZAPはすごく相性がいい。「移動のスキマ時間」の活用は非常に効率的ですから、これからも空港やサービスエリアへの展開などをさらに広げたいですね。

また、chocoZAPやRIZAPを活用した健康ソリューションの提供は、企業の健康経営や福利厚生とも相性が良く、まだまだ発展する可能性が大いにありますので、企業との提携はこれからも拡充していきたいと思います。

写真 : 曳野 若菜