シャープのミッドレンジスマートフォン最新モデル「AQUOS sense9」が登場しました。コンパクトボディに必要十分なスペックを備えたこの機種を、さっそくチェックしてみました。

  • AQUOS sense9

    AQUOS sense9

独自のキュートなデザインがうれしい

「AQUOS sense9」は、シャープのスマートフォンとしてはハイエンドの「AQUOS R」シリーズとエントリー端末の「AQUOS wish」シリーズの中間に位置します。スペックとコストのバランスが良く、コストパフォーマンスに優れたスマートフォンとして人気のシリーズでもあります。

  • 本体正面

    6.1型のディスプレイは大きすぎず、扱いやすいサイズ感

現ラインナップからmiyake designによる独特のデザインとなって、見た目も楽しいスマートフォンになりました。カメラ周りの独特のスタイルはオリジナリティがあり、背面を見ると一目で分かって、なおかつiPhoneとも異なる姿は好感が持てます。

  • 本体背面

    カメラ周りだけとはいえ、独特のデザインはよいと思います

  • カメラ部

    いびつな円が特徴的。FeliCaマークはなくてもいいのではと感じます

上位モデルの「AQUOS R9」、下位モデルの「AQOS wish4」も同系統のデザインで統一感があります。カラーが6種類というのも楽しいところ。BlueとGreigeは本体カラーとカメラ周囲のカラーが異なるバイカラーになっているのも面白いところです。

本体サイズは約H149×W73×D8.9mm、約166g。SoCはSnapdragon 7s Gen2、メモリとストレージの構成は、ストレージ128GB+メモリ6GBまたはストレージ256GB+メモリ8GB。microSDXCカード(最大1TB)にも対応します。

  • 右側面

    本体右側面。指紋センサー一体型の電源ボタンと音量ボタン

  • 左側面

    左側面にmicroSDカード一体型のSIMカードスロットを配置。SIMピン不要で取り出せるのは便利です

バッテリー容量は5,000mAh。そして、前モデルにはあったイヤホン端子が省かれてしまいました。

  • 天面

    本体天面

  • 底面

    底面にはUSB端子。上下ともにイヤホン端子はありません

ディスプレイは6.1型フルHD+(1,080×2,340)のPro IGZO OLEDで、このディスプレイは「AQUOS sense」シリーズでは初の採用です。1~240Hzのリフレッシュレートに対応。防水防塵、MIL規格にも対応、アルコール除菌シートやハンドソープ、耐薬品というすべてをカバーするタフネス性能を備えます。もちろんおサイフケータイも利用できます。

スマートフォンとしてはフルスペックで、基本性能は問題ありません。OSはAndroid 14で、発売日から最大3回のOSバージョンアップ、5年セキュリティアップデートが保証されているのもうれしいところです。

ミッドレンジとして不満のないパフォーマンス

SoCのSnapdragon 7s Gen2。このあたりのQualcommの型番はいよいよ分かりづらくなっていますが、いずれにしてもミッドレンジのSoCであることは確かです。

ベンチマークテストもしてみました。処理の重い3DmarkのSolar BayやSteel Nomad Lightテストは動作せず、Wild Life Extremeが803となりました。同じくグラフィック性能を測定するGFXBenchはマンハッタン3.1が3,119、CPU性能を測定するGeekBenchはSingle-Coreが1,012、Multi-Coreが2,756。アプリ性能などを測定するPCMarkは12,793、総合ベンチのAntutuはトータルが612,863でした。

  • 3DmarkのWild Life Extremeテスト結果

    3DmarkのWild Life Extremeテスト結果

  • GeekBenchのテスト結果

    GeekBenchのテスト結果

比較として上位モデルでSnapdragon 7+ Gen3を搭載した「AQUOS R9」、さらにDimensity 7300Xを搭載した「razr 50s」と並べてみました。いくつか気になるところはありますが、基本的にポジション通り「AQUOS R9」がトップ、「razr 50s」とは同等というところでしょうか。

AQUOS sense9 razr 50s AQUOS R9
Snapdragon 7s Gen2 Dimensity 7300X Snapdragon 7+ Gen3
3Dmark Wild Life Extreme 803 854 2757
Wild Life 3402 3116 Maxed Out
Solar Bay N/A N/A N/A
Steel Nomad Light N/A 348 947
SlingShot 6,470 6,036 Maxed Out
SlingShot Extreme 4,899 5,060 Maxed Out
PCMark Work 3.0 12,793 15,153 15,552
GeekBench Single-Core 1,012 1,040 1,812
Multi-Core 2,756 3,003 4,851
GPU(OpenCL) 1,785 2,601 7,894
GPU(Vulkan) 2,298 2,521 8,972
GFXBench マンハッタン3.1 3,119 2,952 6,495
マンハッタン3.1オフスクリーン 3,417 3,482 6,963
Aztec Ruins OpenGL High Tier 1,232 1,277 2,970
Aztec Ruins Vulkan High Tier 1,302 1,336 3,063

実際、「AQUOS sense9」を使っていて不満は感じません。カメラのオートHDRをオンにしているとレリーズタイムラグが長くなるという問題は、ずっとシャープのカメラにつきまとっていますが、オートHDRをオフにすれば比較的テンポ良く撮影できます。

重量級ゲームを除けば、普段のアプリの利用で困ることはないでしょう。加えて、前モデルではモノラルスピーカーだったところ、ステレオスピーカーを搭載して音楽や動画の音が良くなり、ディスプレイ性能も向上したので、コンテンツの視聴マシンとして優秀になりました。

音圧や特に低音の再現はそれなりという感じですが、それでも横持ちにして左右のスピーカーから再生されるので、バランスもよく、イヤホンなしでも映像を楽しめるようになりました。

バランスの取れたカメラ

カメラは、標準と超広角のデュアルカメラ。メインは有効画素数5,030万画素の1/1.55型センサーを搭載。レンズは焦点距離23mm(35mm判換算時)、F1.9のレンズを採用。光学式手ブレ補正も備えます。

超広角カメラは同5,030万画素1/2.5型センサーを搭載。レンズは焦点距離13mm(同)のF2.2のレンズを採用しています。インカメラは3,200万画素で25mm相当のF2.2レンズです。

  • デュアルカメラ

    デュアルカメラ

前モデルとの比較でいうと、メインカメラのスペックは同等ですが、超広角カメラが800万画素から大幅にジャンプアップ。前モデルではインカメラも800万画素だったので、一気に高画素化しました。

このあたりはスペック重視という感じで、個人的には好感が持てます。スマートフォンのカメラだと、やはりピクセルビニングがないと画質面では厳しい場面が多くあります。その点、メイン/超広角とピクセルビニングに対応した「AQUOS sense9」は十分なスペックを備えています。

カメラ機能としてはシンプル。写真/ビデオ/ポートレート/ナイト/マニュアル写真とモードが選択でき、タイムラプス/スロービデオ/vHDRビデオというモードも用意されています。基本的には写真とビデオを使い、人を撮る場合にポートレートを選ぶといいでしょう。ナイトモードは、オートナイト機能を使えば写真モードでそのまま撮影できます。

  • カメラのUI

    カメラのUIは従来通り

描写性能は自然で、十分な画質。ホワイトバランスは自然な色味を残す記憶色寄りで、屋内や夜景の撮影でも、ノイズが少なく安定した描写になります。このあたりは5,030万画素のピクセルビニングの威力が発揮されています。

  • 撮影サンプル1

    明暗のバランスもよく、空の色もきちんと残っています

  • 撮影サンプル2

    曇天のせいで色味は地味ですが、自然な色で誇張はありません。シャドーを持ち上げたためややノイジーになっています

ただ、超広角カメラも5,030万画素のピクセルビニングによる約1,258万画素で記録されるのですが、シーンによっていまいちしゃっきりしません。全体的にメインカメラと超広角カメラで、センサーとレンズの性能差が大きいように感じます。スマートフォン画面ではそれほど気になりませんが、拡大すると画質差がはっきりしてしまいます。

  • メインカメラの撮影例

    メインカメラで撮影。強い日差しのあたる石像も白トビせずにバランスよく描写

  • 超広角カメラの撮影例

    強く白トビをしている点が残念なところ。メインカメラに比べて描写の甘いところが気になります

面白いところとしては、ポートレートモードにペットモードが用意されている点があります。動物を検出すると自動で表示されるようで、毛並みの調整ができます。毛並みを「ふんわり」させるか「くっきり」させるか、5段階で選べるようになっています。あまり明確な差は感じなかったのですが、ペットを撮るときは積極的に設定してもいいかもしれません。

  • ペットモードへの切り替えの案内

    ペットを検出するとペットモードに切り替えるよう案内が表示されます

  • ペットモードの設定

    背景ぼかしと毛並みの設定ができるようになります

  • くっきり5の撮影サンプル

    くっきりを5に設定した写真

  • ふんわり5の撮影サンプル

    こちらはふんわりを5に設定

  • 超広角の撮影サンプル

    超広角で撮影

  • メインカメラの撮影サンプル

    メインカメラの描写

  • 2倍ズームの撮影サンプル

    カメラのUI上は2倍ズームもタッチで選べるようになっています

  • メインカメラの撮影サンプル

    メインカメラの描写は優秀

  • 夜景の撮影サンプル1

    夜景も十分な画質です

  • 夜景の撮影サンプル2

    細部の描写はハイエンドスマートフォンには及びませんが、スマートフォン画面で見たりSNSに投稿したりする分には問題ないでしょう

  • 建物内部の撮影サンプル

    メインカメラの描写

  • 動物のデジタル2倍ズームの撮影サンプル

    デジタル2倍ズームでの撮影

  • ツリーの撮影サンプル

    クリスマスツリーを撮影

  • ケーキの撮影サンプル

    ケーキを撮影

使い勝手のいい良コスパモデル

「AQUOS」シリーズおなじみの機能として「AQUOSトリック」をいつも通り搭載。画面の表示を最適化する「リッチカラーテクノロジーモバイル」、画面表示をより滑らかにする「なめらかハイスピード表示」、指紋センサーでロック解除してそのまま指定のアプリを起動する「Payトリガー」など、様々な独自機能を搭載します。

  • AQUOSトリック
  • 指紋センサー/Payトリガー
  • 迷惑電話対策
  • 使い勝手を向上させるオリジナルのAQUOSトリックを搭載(写真左)。指紋センサーとPayトリガーはなかなか便利(写真中)。自動音声で応対して名前を尋ねたり注意を表示したりする迷惑電話対策も搭載(写真右)

コンパクトで扱いやすいサイズ、バランスの良い価格で、初心者から中級者までお勧めしたいのが「AQUOS sense9」です。ストレージ128GBで60,940円と、現状のスマートフォンの価格帯としてはコストパフォーマンスの良い製品といってもいいでしょう。

スピーカーやカメラなど、完成度が高められており、より多くの人のニーズに応えられる製品に仕上がっていると感じました。