だが札幌へ行って他県でもジンギスカンが一般化していると伝えると「いやいやいや」と全否定された。
「あれがジンギスカンと思ってるのは可哀想。」と馬鹿にしたように笑う。なんで?
「それはよそゆきのジンギスカン」「焼肉寄りのジンギスカン、本物じゃない。」
なんですと?本物のジンギスカンが別に存在するの?
「ジンギスカンに行く時はどのジンギスカンに行くか議論になる。」
「道民同士で行く時と他県の人と行くときでは選ぶジンギスカン屋が違う。」
ということは、我々の知るもの以外にもジンギスカンがある?
まず道民が言うのは「味付きのジンギスカン、袋に入ってる。」「生ラムを食べるのは最近ですよ。」「家では味付きのジンギスカン。」その味付きって何?
「豚肉にもロースとかバラとかあるように、羊もロースとかモモとかに分かれる。」
羊は生後1年未満をラム、生後2年以上をマトンと呼ぶ。それぞれのロースやモモを好みで食べるようだ。
そこで道内で売っている味付きジンギスカン肉を集めてみたら、なんと67種類もあるじゃないか!
あるご家庭のジンギスカンナイトにお邪魔すると、まず新聞紙をテーブルに敷いている。味付き肉はタレが散るからということだ。
続いて登場したのは、ホットプレート!あれ?ジンギスカン鍋じゃない?
「お店だと煙がモクモクでしょう?これなら煙も出ないしこもらない。」
そしていよいよ味付きジンギスカン肉が登場。まず野菜をホットプレートで熱し、中央にスペースを作って肉を投入。焼くのかと思うと、野菜も一緒にグツグツ料理している。
ジンギスカンっぽくないぞ。肉と野菜を一緒に食べて、うまそうだ!
次に、札幌から200kmの十勝エリアへジンギスカン探索に。この地でジンギスカンについて聞くと「ホルジンじゃない?」と言う。なにそれ?「ホルモンとジンギスカン、合わせてホルジン!」あー、そういうこと。ただしホルモンは豚なんだって。
人気店「有楽町」に行ってみると、出てきたのは平たい銀色の鍋に野菜と一緒にラム肉と豚ホルモン、そして味噌ダレが盛られたもの。
しかし味噌ダレが染みたホルモンとラム肉、おいしそうだ。
たしかにみなさん、肉をごはんにのせてほおばり幸せそう!
今度は道北の名寄市へ。ここにもまた独特のジンギスカンが愛されていると聞いた。
ママさんたちに聞くと「煮込みジンギスカン。」と言うのだが、味付きジンギスカンもホル人も、煮込みといえば煮込みだったが。
「さらに煮込まさってる。」はい?煮込まれてるという意味か。「だから、食べらさるんだ」って、食べてしまうってことかな。
そこで名寄のお宅のジンギスカンを観察。お父さんが張り切ってテーブルに持ってきたのは、鍋じゃん!ラム肉にもやし、キャベツはいいとしてにんじん、しめじ、油揚げまで入って鍋でグツグツ煮込まさってる。しかもうどんまで入ってるぞ。これ、鍋でしょ!
翌日、2日目は味が染みてうまいとごはんにかけて味わうお父さんに、ジンギスカンの奥の深さを聞くと「ぼくらの知らないジンギスカンもある。」と断言する。
北海道にジンギスカンがある限り、我々は未知の食べ方を探し続けるのかもしれない。