日本歯科医師会は11月22日、「歯科医療に関する一般生活者意識調査」の結果を発表した。調査は2024年9月11日~9月13日、全国の15歳~79歳の男女10,000人を対象にインターネットで行われた。

「プレゼンティーズム」とは

今回の調査において、歯の健康とプレゼンティーズムに関する質問も行われた。プレゼンティーズムはWHO世界保健機関によって提唱された健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標で、「欠勤にはいたっておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態」を意味する。本調査では調査対象者に合わせ、「仕事」を家事や学業を含む形で広義に捉え、日常的にする仕事や家事、学校での勉強や他者とのコミュニケーションなど、自分が普段当たり前にできていること全般をパフォーマンスと総称。歯や口の中の問題が原因でそれらパフォーマンスが低下する状態を「プレゼンティーズム」と定義し、調査・分析を行った。

歯や口の中のトラブルが影響するのは日常生活全般に

歯や口の中のトラブルは、日常生活の中でどんなことに影響を及ぼすと思うかと聞くと、「集中力」(48.4%)、「生活全般の質」(37.3%)、「コミュニケーション・会話」(36.9%)、「人付き合い」(30.5%)が上位に挙げられた。歯や口の中のトラブルは、日常生活全般のパフォーマンスを低下させるプレゼンティーズムの要因になっているようだ。

  • 歯や口の中のトラブルが影響すること(全体)

これを年代別に見ると、10代・20代は「コミュニケーション・会話」「人付き合い」、30代・40代は「集中力」「コミュニケーション・会話」、50代以降は「集中力」「生活全般の質」が影響を受けやすい分野のTOP2となっている。日常生活全般のパフォーマンスを低下させ、プレゼンティーズムの要因となる歯や口の中のトラブルだが、年代により影響する分野が変化している。

  • 歯や口の中のトラブルが影響すること(年代別TOP5)

歯や口の中のトラブルで4割がパフォーマンス低下を痛感

プレゼンティーズムの要因となる歯や口の中のトラブルだが、どれぐらいの人が影響を受けているのか聞いた。歯が痛くなる、歯ぐきが腫れる、歯の詰めものがとれる、歯にものが挟まる、口の中が渇く、口臭が気になるなどの「歯や口の中のトラブル」で、この1年の間に日常生活のパフォーマンスが落ちたと感じたことがあるかと聞くと、全体の41.6%(よくある5.6%+たまにある20.3%+1回でもある15.7%)が、歯や口の中のトラブルが原因となりパフォーマンスの低下を感じている。その要因となった症状を聞くと、「歯の痛み」(38.0%)、「歯に違和感を感じる」(36.2%)、「口臭」(28.4%)が上位に挙げられた。

  • 歯や口の中のトラブルでパフォーマンスが低下した経験(全体)

  • パフォーマンス低下の要因となる歯や口の中のトラブル(全体)

上記の結果を年代別に見ると、歯や口の中のトラブルが原因となりパフォーマンスの低下を感じるのは、10代46.6%、20代45.9%、30代47.0%と若い世代の方が多くなっている。その要因となった症状は、10代は「口臭」「歯並びや歯の色」、20代・30代は「歯の痛み」「口臭」、40代・50代は「歯の痛み」「歯に違和感を感じる」、60代・70代は「歯に違和感を感じる」「歯の痛み」がそれぞれ上位となっている。

  • 歯や口の中のトラブルでパフォーマンスが低下した経験(年代別)

  • パフォーマンス低下の要因となる歯や口の中のトラブルTOP5(年代別)

痛みや違和感は2~3日だが、口臭は……

パフォーマンス低下の要因となる「歯の痛み」「歯の違和感」「口臭」について、パフォーマンスが低下した期間を聞いた。歯の痛みは「2~3日程度」(26.2%)、歯の違和感は「2~3日程度」(23.1%)が多く、比較的短い結果だった。一方、口臭は「1年以上」と答えた人が(25.5%)と多く、パフォーマンスが低下したまま長期化している人も少なくないようだ。

  • 歯や口の中のトラブル別、パフォーマンスが低下する期間(全体)

「口臭」で歯科医療機関を受診する人は12.4%

パフォーマンス低下の要因となる症状に対しどのような対処方法を行ったかと聞くと、「歯の痛み」や「歯の違和感」は「歯科医療機関を受診した」が最も多いのに対し、「口臭」は「対策グッズを購入」が多く、歯科医療機関を受診した人は12.4%だった。また、「口の中の渇き・ドライマウス」については、「やりすごした」と答えた人が58.4%と多くなっている。

  • 歯や口の中のトラブル別、対処方法

前述で、この1年の間に日常生活のパフォーマンスが落ちたと感じたことがあると答えた4,146人に、その際に感じたことを聞いた。すると、実際に周囲から指摘を受けた人は、「口腔トラブルによるパフォーマンスの低下を自覚したとき、周りからもパフォーマンスが低下しているのでは…と指摘を受けたことがある」27.1%(よくある7.2%+1回以上ある19.9%)、「口腔トラブルによるパフォーマンスの低下であるが、周りから怠惰や無関心だと誤解されたこと」24.2%(よくある6.1%+1回以上ある18.0%)だった。

一方、自らが周囲を気にしている人は、「パフォーマンスの低下の原因が、口腔トラブルによるものだと周りに言いにくかった」39.7%(よくある11.4%+1回以上ある28.3%)、「口腔トラブルによるパフォーマンスの低下であるが、周りから怠惰や無関心と誤解されているのではないかと心配になった」が30.5%(よくある7.9%+1回以上ある22.6%)と、多くなっている。

男女別で見ると、周りからの指摘や誤解、自身での心配も総じて男性の方が、年代別では若い世代の方が高くなっている。歯や口の中のトラブルでパフォーマンス低下を感じる人は、他人からの指摘より自身で不安に感じる傾向があり、男性や若年層に多い傾向が見られた。

  • パフォーマンス低下で感じたこと