今年(2024年)の「Ignite 2024」も驚かされた。クラウドソリューション「Windows 365」の専用ハードウェア「Windows 365 Link」の存在である。

シンクライアントデバイスと表現した方がわかりやすいだろうが、製品名から察するとおり、クラウド上でWindowsを実行するサービス専用のデバイスだ。

Microsoftの説明によれば、数秒でWindows 365に接続してOSが起動する。また、スリープモードで終了した場合は中断状況から復帰するため、ローカルPCと同等、もしくはそれ以上の使い勝手を得られそうだ。

  • Ignite 2024で発表されたWindows 365 Link

ポート類が充実しているのもWindows 365 Linkが備える特徴の一つ。デュアル4Kディスプレイに対応するHDMIポート、USB-A 3.2ポート×3、USB-C 3.2ポート×1、USBポート×2、イーサネットポートを本体背面に備えて、業務内容や利用状況に応じて選択する。

また、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3にも対応しているため、ネットワーク接続は有線・無線の両方が使用可能。自宅で無線LAN環境を構築しているケースや、スイッチングハブ経由でLAN接続するケースにも追従する。

利用環境によっては3.5mmヘッドホンジャックも有益な接続先となるはずだ。ただし、Surface Dock 2やSurface Thunderbolt 4 Dockといったドックはサポートしていない。

  • Windows 365 Linkの背面

ハードウェア構成は未発表ながらも、提供開始時期は2025年4月と決まっている。日本を含んだ7カ国は349ドルで購入可能だ。現在の為替レートだと5万円を超える程度で安価に感じるものの、ここにWindows 365の使用料が発生する。

Windows 365は業務用の同Business、大企業向けの同Enterprise、現場向けの同Frontlineと三つのエディションを用意しており、仮想CPU×2、メモリー4GB、ストレージ128GBのWindows 365 Businessは5,809円/月。仮想マシンの構成を仮想CPU×4、メモリー16GBに拡大すると1万2,368円/月(いずれも税別)に拡大するので、コンピューターの利用形態に応じて選択すればよい。

  • Windows 365 Linkの設置例

ただ、Windows 365を使用するにはいくつかの要件が控えている。組織で運用するMicrosoft Entra IDとMicrosoft Intuneによる管理環境が必須となり、個人ユーザーが導入するにはハードルが高い。要件条項ではないが、安定かつ高速なネットワーク接続環境も必要になるはずだ。Windows 365 Linkは魅力的ながらも、個人ユーザーが気軽に購入するデバイスではない。

しかし、本体は120×120×30ミリと実にコンパクト。Surfaceブランドを付与していないのは気になるものの、MicrosoftはOEMエコシステムパートナーと連携して、Windows 365 Linkに代表されるクラウドPCデバイスの拡張を目指すという。

筆者は以前からWindowsの完全クラウド化を愚見してきたが、その取り組みを一歩進めた形となる。大半のアプリ・サービスがSaaS化し、DaaSが普及する昨今の状況を踏まえると、個人ユーザー向けのWindows 365およびWindows 365 Linkの登場にも期待したい。