「松石とかは結構試合に出ていたので、シーズン後半にかけて対応もできるようになってきたのかなと思いますね」。
今季までロッテの二軍打撃コーチを務め、来季から一軍の打撃コーチを担当する栗原健太コーチは、育成・松石信八をこのように評価した。
育成2位のルーキー・松石は3月16日のDeNAとの二軍開幕戦に『9番・ショート』でスタメン出場すると、開幕からショートのポジションで出場。4月終了時点で打率.132と打撃面に課題を残すも、「小技を使える選手にならないと生きていけないと思っています。バント、エンドラン、チームプレー、サインプレーはきっちりやっていけるような選手になりたいと思っているので、そこは大事にやっていっています」と、4月終了時点で9犠打はイースタンリーグトップを記録し、打ち取られても打席内で粘ったり、右方向に進塁打を打ったりしていた。
打率は1割台ではあったが、4月13日の楽天二軍戦、4月17日のオイシックス戦で2安打し、3日の巨人二軍戦でも適時打を放つなど、徐々にプロの球に対応してきているように見えた。
4月30日の取材で、「タイミングの取り方、トップの作り方、打撃フォームを打撃コーチに教えていただいて、少しずつなんですけど、打球が前に飛ぶようになった。そこはいいことかなと思います」と話し、具体的には「(プロの)球は速いので、タイミングが今まで遅れていていた。タイミングを早く取る方法だったり、ボールが来るまでの待ち方を教えてもらいました」と、プロの球に対応するための打撃技術を学んだ。
フレッシュオールスター前の打率は.178だったが、フレッシュオールスター明けの打率は.276と1割近く打率を上げ、シーズン最終盤の9月13日のヤクルト二軍戦から5試合連続安打、そのうち9月17日の楽天二軍戦から19日の楽天二軍戦にかけて3試合連続でマルチ安打を達成するなど、打撃力が向上。
打球方向を見ても、シーズン序盤はセンターから反対方向の打球が多かったが、9月18日の楽天二軍戦では1-0の4回無死走者なしの第2打席、古賀が1ボール1ストライクから投じた3球目の129キロスライダーをレフトフェンス直撃に放てば、9月19日の楽天二軍戦でも1-0の4回無死二、三塁の第2打席、辛島が投じた初球の135キロのインコースストレートを左中間に適時二塁打を放つなどレフト方向に引っ張った当たりが増えた。
「春先、最初の頃は詰まったり、スピードが(高校と)全然違うので、慣れていなくてライト側のヒットが多かったです。センター返しを意識することをはじめて、ちょっと早ければレフト、遅ければライト、ヒットゾーンが広がるので、そういうところからヒットが増えていったというのはありますね」。
4月30日に取材した時には“タイミングの取り方”、“トップの作り方”を打撃コーチから指導を受けたと話していたが、「継続していますね。いろんなタイミングの取り方、試行錯誤してやって、今たどり着いたもので伸ばしていけるようにやっているところです。タイミングがバッティングで一番大事だと思っているので、そういうところをしっかり意識しながらやっていますね」と教えてくれた。
栗原コーチも松石のタイミングについても「タイミングと割れのタイミングを春先から意識してやっていたんですけど、それが少しずつ形になってきたのが後半かなという感じですかね」と分析した。
◆ 守備面でも大きく成長
打撃面もそうだが、守備面でも大きな成長を見せた。フレッシュオールスター前までで21失策も、フレッシュオールスター明けは6失策に減少。ポジショニングもシーズン序盤に比べて良くなり、センターへ抜けそうな打球もアウトを取れるようになった。
松石は「それは自分だけの力だけでなくて、アナリスト、小坂さんとかもアドバイスをくれたり、このバッターはこうだとか教えてくれるので、守備をやっているにつれて少しずつ守備範囲が広くなっていったんじゃないかなと思います。毎日小坂さんと練習をやっているので、その成果が出てきたんじゃないかなと思いますね」と小坂誠さん、アナリストに感謝した。
故障で離脱することなく1年間ファームで戦いぬき、106試合に出場して、打率.207、18打点、18犠打、4盗塁。18犠打はイースタン・リーグトップの数字だった。フレッシュオールスター明けの成績は、35試合に出場して、打率.276、7打点、5犠打、6失策と数字だけを見ても、徐々にプロに慣れていったことがわかる。
11月7日からは「来シーズンに向けてしっかり実戦経験を積んで、いい状態で春季キャンプを迎えられるように頑張ります」と、大谷輝龍、吉川悠斗、寺地隆成、山本大斗とともにオーストラリアのウインターリーグに参戦中。松石はここまで、6試合に出場して、打率.250、1打点の成績を残している。
来季は攻守に8月以降の活躍を見せれば、支配下選手登録も見えてくる。さらに成長姿を見せてほしい。
取材・文=岩下雄太