1980年代にライトウェイトスポーツモデルとしてその地位を確立したトヨタ「AE86」(スプリンタートレノ)。漫画・アニメ『頭文字D』の影響もあり、今でも人気の高い1台です。そんな「ハチロク」のエンジンを最新のものに載せ替える取り組みをトヨタが進めていると聞いたので、実車を見てエンジニアに話を聞いてきました。

  • トヨタ「AE86 G16E Concept」

    今回取材した「AE86」

ハチロクに乗れなくなる未来を回避する?

多くのファンがいる「AE86」ですが、搭載している「4AGエンジン」は状態のいいものが年々減ってきています。このままでは、AE86に乗れなくなる日が来てしまいます。

そこでトヨタは、「クルマ好きを誰ひとり置いていかない」ための取り組みとして、「GRヤリス」が搭載する「G16E」エンジンを載せた「AE86 G16E Concept」を制作しました。

なぜ「G16Eエンジン」を選択? エンジンを載せ替える際の苦労は? 同プロジェクトを担当するトヨタのエンジニアの方に話を聞きました。

  • トヨタ「AE86 G16E Concept」

    車体横には「G16エンジン車」の文字が!

トヨタのエンジニアに聞く!

――トヨタには「G16E」以外にも様々なエンジンの選択肢があったと思いますが、なぜこのエンジンを選んだのでしょうか? 元々ついているターボチャージャーを外してまで採用した理由を教えてください。

エンジニア:モータースポーツのフィールドで使われてきた「G16E」の信頼性の高さが理由のひとつです。元々はターボエンジンであるため、自然吸気方式に変更した際には自然と強度に余裕が出ます。将来的に、アルコールを含むバイオ燃料などの代替燃料を使用することを想定した場合も、強度に余裕を持たせておくことで、アルコールの高い燃焼圧力にも耐えられるんです。

――AE86に新エンジンを積むにあたって、何か苦労した点はありますか?

エンジニア:G16Eは4AGと比べて背が高いエンジンです。昨今のエンジンは燃費向上に有利なロングストロークとなっており、さらに昔と比べて複雑なカムシャフト機構を採用しているため、AE86のエンジンルームに収めるのが大変でした。

エンジン載せ替えにあたってはオイルパンを新たに設計し、バランスシャフトを廃止しました。トランスミッションはAE86のクラッチ、ミッションを使用していますが、新たにクラッチハウジングとフライホイールを作っています。また、エンジンマウントもG16E用に変更しました。

  • トヨタ「AE86 G16E Concept」

    「AE86 G16E Concept」のエンジンルーム内

  • トヨタ「AE86 G16E Concept」

    上部にはみ出してきているエンジンを何とかエンジンルームに収めるため、ボンネットフードの裏側をえぐっていることが確認できます

――「AE86」は「軽さ」が大きな武器ですが、エンジンスワップによって重量はどう変わったのでしょうか?

エンジニア:新エンジンの重量は4AGと同等以下とし、運動性能を犠牲にすることなくエンジンスワップを実現しています。

新しいエンジンになったことにより低速トルクが増大し、より扱いやすいクルマに進化しました。また、排気ガスもよりクリーンになりました。

  • トヨタ「AE86 G16E Concept」

    新エンジン搭載でより扱いやすいクルマに進化したそうです

エンジニアの方は、私のどの質問にも丁寧に答えてくださいました。「クルマ好きを誰一人としておいていかない」という情熱クルマに対するこだわりを感じることができました。

取材のあと、エンジンをかけてサウンドを聞かせいただいたのですが、3気筒でありながらエンジンの鼓動を感じる頼もしい音でした!

トヨタはトヨタ車などのサブスク事業を手掛けるKINTOを通じてこの新「AE86」のレンタカーを実施し、多くのユーザーに試乗してもらうことで、エンジン載せ替えの事業化の将来性を探っているそうです。

この事業が展開されるようになれば、「AE86」以外にも様々な旧車を末永く乗ることができる未来が来るかもしれません。今後のプロジェクトの進捗に期待しましょう!

  • トヨタ「AE86 G16E Concept」
  • トヨタ「AE86 G16E Concept」
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  • トヨタ「AE86 G16E Concept」
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